世の中は黄金週間を控えてウキウキそわそわ。航空各社は国内便・国外便どちらも昨年に比べて予約数増、だそうである。でも会社員の中には、いろーんな事情で「遠出なんかできないよう」という方も多いのではないか。そんな方は手軽に家飲みやりましょう。それもスペインのバル気分を味わいながらの妄想家飲み、やりましょう。

  • ミニ居酒屋「バル」の様子(バルセロナにて、2015年筆者撮影)

    ミニ居酒屋「バル」の様子(バルセロナにて、2015年筆者撮影)

バルの定番おつまみはピンチョス

ピンチョスは串とか楊枝の意。だから楊枝の刺さったおつまみが本来のピンチョスなのだけど、現地のバルでは楊枝のあるなしに関係なく、フィンガーフード全般をピンチョスと呼んでいる。 その食材に缶詰が多用されるのが、スペインの偉大なところであります。ツナとか、ホワイトアスパラとか、イカのスミ煮みたいな缶詰をバゲットにちょいと乗せて提供する。中には缶詰専門のバルもあったりして、彼の地の缶詰文化はとても成熟しているのだ。

  • スペイン産の良質なアンチョビが日本にも輸入されている

    スペイン産の良質なアンチョビが日本にも輸入されている

知ってるようで知らないアンチョビ事情

で、そのピンチョスにはアンチョビもよく使われる。それも、生の切り身をそのままぱくりと食べるのだ。これが日本人には馴染みのない食文化である。「えっ、生で食べていいの?!」なんて思う方もおいでだろう。大丈夫です、生で食べられます。 しかし、いつもパスタソースに使っているような普及価格帯のものを生で食べると、塩味が強くてけっこうきつい。中には生臭みを感じるものがあるかもしれない。それに対してピンチョスに使われるものは、原料にも製造法にもこだわった高級品だ。

  • 開けた様子もビューリホー。身が引き締まっているのが見て分かる

    開けた様子もビューリホー。身が引き締まっているのが見て分かる

フタを開ければ別世界

例えばこのアンチョビ。「アンコマール」というスペインのブランドで、カンタブリア海のカタクチイワシが使われている。色が美しく、まるで新鮮ないわしをさばいたばかりのように見える。オイルだって透明だ。箸でつまみあげると、身にハリがあって、簡単には千切れないほど引き締まっている。ざっくり申せば、全域がとにかくフレッシュな感じであります。

  • 「し、白ワインをください!」なピンチョスの缶成

    「し、白ワインをください!」なピンチョスの缶成

かくのごとし。スライスしたバゲットにスライスしたトマトとスライスしたチーズを乗せ、アンチョビを1尾そのまま乗せる。あとは黒コショウとEVオリーブ油をかければOKということで、基本的にスライス作業だけで作れる。 このアンチョビは塩気がほどよく、こんな風に出されても1尾ぺろりと食べられる。塩漬けされたことによって熟成したイワシには甘みすらあって、逆に生臭みはまったくない。例えて申せば「海の生ハム」のような、美味至極のアンチョビであります。

こんな缶たんピンチョスとワインがあれば、いつもの見慣れた部屋も「ここはバルセロナかサン・セバスチャンか...」と妄想できる。忙し仲間の友人を呼んで、1日くらいぱーっとやりましょう。

缶詰情報 アンコマール アンチョビ(49g)/ ATS-FOOD
価格1,620円(税込)
ATS_FOOD麻布十番のショップか直販サイトで購入可

黒川勇人/缶詰博士

昭和41年福島県生まれ。公益社団法人・日本缶詰協会認定の「缶詰博士」。世界50カ国以上・数千缶を食している世界一の缶詰通。ひとりでも多くの人に缶詰の魅力を伝えたいと精力的に取材・執筆を行っている。テレビやラジオなどメディア出演多数。著書に「旬缶クッキング」(ビーナイス/春風亭昇太氏共著)、「缶詰博士が選ぶ!『レジェンド缶詰』究極の逸品36」(講談社+α新書)、「安い!早い!だけどとてつもなく旨い!缶たん料理100」(講談社)など多数。
公式ブログ「缶詰blog」Facebookファンページも公開中。