缶詰博士の黒川氏によると、缶詰は製造ノウハウの塊なんだそうです。容器に使われている缶にも、材質や形状、組み合わせ方など、随所に工夫が凝らされているとか。
今回はそんな"缶"の秘密に迫ります。
難題をクリアするための工夫
缶詰は、知れば知るほど面白い存在であります。あの小さなボディには、各所に「常温で長期保存」という難題をクリアするため、様々な工夫が凝らされているのだ。
フタに刻まれている同心円状の段差もそのひとつ。缶の上下のどちらかに必ず刻まれているはず。
缶が破損しないためのバネ
ずっと見ていると、不思議に思えてきませんか。なぜこんな段差が刻まれているのか?
実はこの段差はバネなのだ。缶詰は製造中に一度、わずかにふくらみ、その後もとに戻る過程がある。その時に缶が破損しないように、このバネで吸収しているわけ。
缶詰の使命は、常温で長期保存ができること。そのために"加熱殺菌"という技術が使われております。
食べものを入れて空気を抜き、フタをかぶせて密封。レトルト殺菌釜という装置に入れて、100度近い温度で数十分間、圧力を掛けながら加熱する。
この時、中の食品や調味液は、熱を加えたせいで膨張する。その力が内側から缶を膨らませるのだ。
また、加熱後には冷却工程もあるので、今度は収縮することになる(元に戻る)。その膨張と収縮のせいでフタがはずれたりすれば、缶の密封性が失われてしまう。だからバネを設けているのであります。