青魚の缶詰は身体にいいと聞きます。缶詰博士も、前回のいわし味噌煮缶で「健康に必須のDHA・EPAが豊富」と書いてましたが、それなら刺身で食べたほうが、もっとDHA・EPAを摂れるような気もしますが、違うんですか?

ちょっとモヤモヤしてるので、あらためて博士に説明していただきましょう!

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  • 木の屋石巻水産/木の屋さんま水煮 170g 370円(税別)

    木の屋石巻水産/木の屋さんま水煮 170g 370円(税別)

脂は足してません

上の画像をご覧いただきたい。木の屋石巻水産の名品、さんま水煮であります。

塩水で煮るだけの製法なので、脂を加えたりしない。なのに、表面には脂がたっぷり。これ、全部さんまの脂である。DHA・EPAが含まれてるのだ。

まずはデータをお伝えしたい。さんまのデータがないのでさばになるけど、ともかく。100グラムあたりに含まれるDHA・EPAの量は……。

・生さば(スーパー等で売られている切り身)→970mg
・さば缶→2,400mg

さば缶のほうが約2.5倍も多いのであります。何ということか!
DHA・EPAは脂の一種なので、空気に触れると酸化する。酸化すると、本来の働きをしなくなるので、事実上、目減りするわけ。

獲れたての魚はもちろんDHA・EPAがMAXの状態で、そこから切り身にすることで空気に触れ、時間が経つことでDHA・EPAが減っていく。スーパーなどで売っている切り身は、そうして目減りしたものなのだ。

それに対して、缶詰はほぼ目減りしない。その理由を、さんま水煮缶の製造法と一緒に解説しましょう!

  • まず漁獲

    まず漁獲

旬のさんまを使う

さんまの旬は夏から秋。北海道の東沖とか三陸沖で獲れるのだ(ここ数年は不漁)。この時期は脂が乗ってとくにおいしく、それを漁師が獲ってきて、漁港に水揚げする。

  • さばく(実際は機械を使う)

    さばく(実際は機械を使う)

手早く!

早朝、漁港に水揚げされたさんまを、缶詰メーカーの人が買い付ける。そうして工場に運び込んだのが上の画像。いい個体を選んでから、頭と尾、内臓などの食べられない部分を切除して、缶に詰めやすい大きさにカットする。
(包丁を持ってるのはジョークで、実際は機械でカットする)

ていねいに、かつ手早く行うのだ。

  • 切り身と塩水を入れる

    切り身と塩水を入れる

ここが缶所

生の切り身は、そのまま缶に詰めちゃう。煮てから詰めるわけじゃない。ここが、青魚缶の缶所(勘所)であります!

あとは塩水を入れて、中の空気を抜いてから密封する。

さんまをさばいて、缶に入れて、密封するまでの時間は、あるメーカーによるとたったの8分間。つまり、切り身が空気に触れている時間が8分間だ。だからDHA・EPAがほぼ酸化せず、MAXに近い状態で保たれるわけ。

  • 缶ごと加熱

    缶ごと加熱

骨まで柔らか

密封した缶は、数百缶をまとめて、レトルト殺菌釜という装置に入れる。ここで圧力を掛けながら加熱することで、さんまは骨まで柔らかくなり、塩分が中まで染み込んで味が付く。と、同時に高温で殺菌されるから、缶詰は長期保存が可能なのであります。

さばも同じ製法

さばも同じように生の切り身を詰めて造る。いわしも基本的には一緒だ。だから青魚缶はみんな、身体にいいDHAEPAが豊富なのであります。単純で効率のいい製法なんですぞ!

缶詰情報
木の屋石巻水産/木の屋さんま水煮 170g 370円(税別)
同社の直販サイトで購入可