幼少期から熱血ドラマオタクというライターの小林久乃が、テレビドラマでキラッと光る"脇役=バイプレイヤー"にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。

第34回は女優の清原果耶さんについて。現在『俺の話は長い』(日本テレビ系)に出演する清原さん。数年前に朝ドラで見かけたときから"スター誕生!"の6文字が脳内を駆け巡っていましたけど、そろそろご本人や事務所も本気を出してきた頃でしょうか。最近の活躍ぶりにあやかって、清原さんから放出される存在感について綴ることにしました。

たったの17歳にしてあの落ち着き方は、罪

清原果耶

コーヒー屋の経営に失敗して、ニートを続ける岸辺満(生田斗真)、31歳。母親に寄生して、やたら屁理屈だけは饒舌なめんどくさい男なのだ。そんな満の住む家に、姉家族が自宅改築中の3カ月間だけ同居をすることになった。もちろん、満と姉の秋葉綾子(小池栄子)とはうまくいくはずもなく……。

というのが『俺の話は長い』のあらすじ。続々と秋ドラマがスタートしているけれど、個人的に好きな作品だ。放送前から話題にしていたのは、1時間のドラマが2話に分かれた構成。これは幼少期にアニメ『ハウス食品世界名作劇場』『ちびまる子ちゃん』(ともにフジテレビ系列)の熱血ファンだった世代としては、非常に見やすい。間延びをする感じが全くしない。

それから、内容がリアル現代のファミリードラマであることがいい。その主役を担うのが生田さんになるのだけど、昨今、社会問題化されている"ニート"の表現が絶妙。ついでに無職orヒモ男の制服、パーカの着こなしが完璧。中身のない男らしい、屁理屈の発し方も納得の一言で、ひょっとしたらかつてはダメ男だったのかと勘違いをさせるほど。そのゆるんだ充の存在に、一滴の毒を垂らす、小池栄子さんの気持ちの良い演技がある。

この作品で清原さんは、綾子(小池)の中学生の娘・春海を演じている。不登校生で、義理の父親である光司(安田顕)とうまくいかない。でも祖母・房枝(原田美枝子)の家に住み、満たちと生活することで少しずつ閉ざされていた心が開かれていく……というのが、一部、私の予想も踏まえた役柄。

今回、この原稿を書くために調べたら彼女の年齢が17歳だと知って驚いた。『俺の話は長い』では、中学3年生で実年齢に近い役だけど、清原さんは各所でもっとかけ離れた年齢を演じている。それが最初に彼女を見かけた朝ドラ『あさが来た』(NHK総合・2015年)である。

朝ドラヒロインに輝く日が待ち遠しい

演技の世界に身を置くのなら誰もが焦がれる、朝ドラをまさかのデビュー作にして清原さんは女優としての一歩を踏み出した。それもヒロインに仕える女中役、そしてその娘の二役だ。明治時代が舞台だったので、清原さんは日本髪を結って登場した。この時に、彼女のつるん、とした額を記憶している。

「うわ……すごくいいおでこ……」

実は仕事で聞いた『成功者は皆一様に額がテッカテカと輝いている』という、一説を信じている。自分でも会う人に統計も取っているし、日本の長者番付に掲載される人物の額をチェックしたところ、ことごとく輝いていた。単にハゲというだけはない、水分をたっぷりと含んだみずみずしさがあるのだ。それらと同じ額の雰囲気を、清原さんから感じ取った。

そのデコ予測が当たったのかは知らないが、17歳にして印象に残る作品に出演を重ねて、今年の朝ドラ『なつぞら』(NHK総合・2019年)では、ついにヒロインの妹役へとジャンプアップ。10代から、アラサーまでの年代を演じていた。

作品の展開、チャンスがあれば多くの年代を一人で演じることはある。でも、ご愛嬌と言えるほどの違和感はある。ただ清原さんにはその気配もなく、いい感じの中年感を醸し出していた。特に母親となった時、大人っぽさを演出するために前髪をアップにして、神々しい額を見せてくれた。

彼女を囲む大人たちが動き、出演作以外にCM契約も着々と増えている。そして私たちをドキドキさせてくれる。今はまだ17歳だけど、いつか清原さんが自分の立ち位置や、才能に気づいた時。そこでまた新しい清原果耶の物語が始まる気がする。その時はぜひ朝ドラのヒロインで彼女の姿、そしてできることなら個人的ポイントのデコを拝みたい。

小林久乃

ライター、編集者、クリエイティブディレクター、撮影コーディネーターなど。地元タウン誌から始まり、女性誌、情報誌の編集部員を経てフリーランスへ。エンタメやカルチャー分野に強く、ウエブや雑誌媒体にて連載記事も持つ。企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊を超え、中には10万部を超えるベストセラーも。著書『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が2019年11月27日(水)発売。静岡県浜松市出身。正々堂々の独身。