エンタメライターのスナイパー小林が、テレビドラマでキラッと光る"脇役=バイプレイヤー"にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。

第19回は女優の新木優子さんについて書いていきます。現在ドラマ『トレース~科捜研の男~』(フジテレビ系)に出演中の新木さん。25歳にしてすでに月9出演歴が3作目。もう所属事務所のみならず、芸能界のさまざまな期待を背負っているのがわかりますね。でも普通に可愛いだけではないと、ずっと新木さんの画像を見つめていたら、ひとつの答えが私の中に見えました。それは……それは……この先を読んでください。お願い。

ストーリーからあの美しさが消えている、いや消している?

新木優子

警視庁の管轄、科捜研で働く真野礼二(錦戸亮)。他研究員よりも類まれな技術と知識をフル活用して、鑑定結果をより鮮明な方向へ導き出すそんな彼の元で働くことになった沢口ノンナ(新木)。当初は研究員としての自分の立場に疑問を抱いていたが、真野の事件との向き合い方を傍らで見ているうちに仕事への姿勢が変わって行く。ただ真野にはむごたらしい事件に関わった過去があり……

というのが、ドラマ『トレース~科捜研の男~』(以下、トレース)のあらすじ。このストーリーの中で、新木さんはチーム内で浮きまくっている真野の下につき、予想外に働く羽目になった沢口を演じている。そもそも大学で研究院をしていた彼女は、友人の紹介で科捜研に。研究に関する職務につけると思っていたのが予想外の展開になってしまったわけだ。

それでも次第に事件、遺体、かすかに残された証拠を追いかけて事件の真相を突き詰めていくことが沢口のやりがいへと変換。ドラマは最終章を迎えて、真野をサポートできるまでに成長している。

この当初、やる気のない感じを出す新木さんの演技が好きだなあと思う。さらに彼女の好き度が増すのは、美人であることを完全にストーリーから払拭していること。女優である以上、一般人以上の造形美を求められて当然。でも演じるうえで、セリフに

「美人だからねえ」

などと、あからさまに美しさを突っ込んでくることが多々。個人的にはあまり好きではない。作品では見た目ではなく、いかに役に対して浸透しているか? がポイントだからだ。でも新木さんはその美しさをこのドラマできれいに消している。京大出身でプライドはある、やりたいことだってある。でも目の前に出された仕事がちょっと面白くなってきてしまった女性の機微。美しさをどこかに放置してきたことで、真実味を増量させているのだ。

新人女優が登る王道をただの通過点にしてしまった、スター性

新木さんは原宿の竹下通りでスカウトされて、映画出演ののちに雑誌『non-no』の専属モデルに。ゼクシィのCMにも出演して話題を呼んだ。そして女優として着実に出演作を重ねて現在の位置に就いている。『ラブラブエイリアン』(フジテレビ系・2016年)の石橋園美役や『いつかティファニーで朝食を』(日本テレビ系・2015年)新井里沙役のような"普通なのにどこかしっかりしている女性"の役が印象的だった。

話だけを聞けば、王道のスター街道を走っているようだ。でも誰もが月9ドラマや、映画出演が巡ってくるわけではない。そこには何か理由がある。え、それはなんだろ……?? と無い知恵を振り絞ってみた。

そして何度も新木さんの画像を見ているうちにピンときたことがある。

それは美しさの向こうにほんのりと悲哀感が見えたことだ。

前出で、新木さんが演技をするときは美しさが消えていると書いた。彼女は前クールも月9『SUITS』(フジテレビ系・2018年)に出演、パラリーガルとしては優秀なのに弁護士になることができない聖澤真琴を演じている。弁護士に対してどこか屈折した思い。そういう気持ちを表現する悲哀感、薄幸さを持ち合わせた女優なのだ。薄幸女優の代表格といえば木村多江さんだけど、あの独特の雰囲気は持ちたいと願っても簡単に手に入るものではない。

とは言っても、薄幸アピールだけではない。『100万円の女たち』(テレビ東京系・2017年)の大女優・開菜々果役ではいやらしいほどいい女を演じていた。ああ、きっと新木さんは自分の華やかさをコントロールできる人なのだとこの作品で改めて。

演じる人としては当たり前ように持っているものとして聞こえるかもしれないが、実は難儀な技だ。そんなお宝を手中にしてしまった新木さんが今後演じる役、うん、まあ、もう全力で拝みますよね。

スナイパー小林

ライター。取材モノから脚本まで書くことなら何でも好きで、ついでに編集者。出版社2社(ぶんか社、講談社『TOKYO★1週間』)を経て現在はフリーランス。"ドラマヲタ"が高じてエンタメコラムを各所で更新しながら年間10冊くらい単行本も制作。静岡県浜松市出身。正々堂々の独身。