エンタメライターのスナイパー小林が、テレビドラマでキラッと光る"脇役=バイプレイヤー"にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。第13回は友近さんのことを書いていきます。現在ドラマ『中学聖日記』(TBS系)に丹羽千鶴役で出演中の友近さん。この女性、一体何者なのでしょうか……何をやらせても面白くして私たちの前に差し出してくれる。テレビに登場するとどうしても目が離せなくなってしまう友近さんの魅力について回想していこうと思います。宣言しておきますが、今回は彼女のことを褒めちぎります。

登場1分で醸し出される安堵感ある演技力

友近

現在、友近さんが出演している『中学聖日記』の丹羽千鶴役はヒロインの末永聖(有村架純)の先輩。教師という立場にありながら、生徒の黒岩晶(岡田健史)を好きになってしまう聖。全方位から非難を受ける聖をプライベートで支えて、再就職を応援するという良き理解者。

「いい? これだけは言っておく。誰かを好きだって気持ちは消せない、絶対に。本当は好きじゃないって気持ちもバレる。絶対に。どんなに隠しても、気持ちに嘘はつけない」

「生徒だよ。終わるよ、聖」

千鶴から聖に向けた、愛あるセリフが毎回話題だ。

友近さんの女優としての顔が周知されることになったのは朝ドラ『朝が来た』(NHK総合・2015年)のうめ役だろう。ヒロインのあさ(波瑠)の実家となる今井家の女中であり、あさの付き人だ。仕事や結婚生活に戸惑うあさを精神的に支えていた。途中、自身も恋に落ちるものの付き人としての立場を全うする姿は切なかったことを覚えている。

2作ともにヒロインを"支える"演技が際立っている。女性版・名バイプレーヤーだ。これも自身のことをよく理解した上での演出だと思う。女芸人の中では画面映えする際立った美人であることや、ふっくら体型、そしてお笑いの舞台で培った演技力と度胸。この条件をクリアしている現役の女優はどれ程いるだろうか。少し前までなら佐藤仁美さんがスタンバイしていたけれど、ダイエット効果で普通のきれいな女優になってしまったのが残念。

それらを踏まえた上で若手女優の側にいても邪魔にはならない、画面4分の1サイズで自らをアピールできる度量を持っている友近さん。その演技はとても安堵感がある印象だ。ドラマに登場するやいなや、ヒロインと同じ気持ちでホッとさせてくれる。それが友近さん唯一無二の色だと思う。

モノマネ、コント、女優そして歌手。爪痕の残し方がお見事

友近さんは元々、お笑い芸人としてデビュー。ローカルタレント時代以外は全てピンでコントを披露、そしてモノマネ芸人でもある。元彼と繰り広げた『ビバリーヒルズ白書』のキャラクター・モノマネで実力を世間に知らしめた。

何を言ってるんだか聞こえない低音の中森明菜、やたら似ている藤原紀香のモノマネは私の中で大ツボにハマった。特に紀香マネは離婚やらで低迷していたご本人の人気を底上げしたと言ってもいい。大好きだ。

実は女優業で主演経験もある。『トラベルライター青木亜木子』(テレビ東京系)というミステリードラマなのだが、視聴しながら「いつ中森明菜が飛び出してくるのだろうか」とおかしな緊張感があったような……。

そして歌手としての顔。ここで混同するのははばかれるけれど、水谷八重子はめちゃくちゃ歌がうまい。歌素人の私でも聞き惚れてしまう。そして水谷として登場するときのぶれない大物ぶりが大好きだ。

「ずーっと演歌を歌ってきて、この5、6年はポップスを歌い始めたんですよ。自分としてはかなりのチャレンジだった。千重子がポップスを歌ったら今までのファンがいなくなっちゃうんじゃないかとか」

「(紅白辞退について)なぜ? ってよく聞かれるんですけど……まっ、時が来たらお話ししますけど!」

毎回ライブに行ってみようと試みるも、チケットは即完。そろそろ本腰を入れて探してみようか。

彼女の功績を調べていくと大量すぎてこちらが消化しきれなくなってくる。タレントという言葉は才能という意味があるけれど、まさにその言葉にふさわしく友近さんは、次から次へと才能をこの世に落としていく。芸能界ではやり尽くしたと思うので、そろそろこのブランディング力について自己啓発本を出版するのはどうだろうか。ベストセラー間違いなしだと思うのだけど。

きっとこれからも彼女の人生は何色にも輝いていくことを思わせる、水谷さんの名言にこんなものがあった。

「(キーポンシャイニングは)千重子も友近ちゃんもそうなんだけど、ずっと昔から好きでよく使っている言葉なの。(中略)常に千重子は輝いていたいし、それを見てみんなに『私たちも頑張ろう』と思ってもらいたいなって」

スナイパー小林

ライター。取材モノから脚本まで書くことなら何でも好きで、ついでに編集者。出版社2社(ぶんか社、講談社『TOKYO★1週間』)を経て現在はフリーランス。"ドラマヲタ"が高じてエンタメコラムを各所で更新しながら年間10冊くらい単行本も制作。静岡県浜松市出身。正々堂々の独身。