メールを返信する際、原則、件名を書き換える必要はありません。受信メールは、大きく新規メールか返信メールのいずれかに分類されます。件名に「Re:」と付いていることで、受信者はそれが返信メールだと判断できる。件名が書き換えられてしまえば受信者の目には新規メールのように映り、円滑なコミュニケーションの妨げにもなり得ることを前回取り上げました。

とはいえ、一律の対応が全てとは限りません。コミュニケーションでは、相手や状況に応じて適切な対応が求められます。原則を押さえた上で応用力を身に付けることができれば、対応の幅も広がるというもの。それでは、返信メールだと瞬時には判断できないリスクを冒してでも、件名を書き換えるのはどのようなケースが考えられるでしょうか。

終えたはずのメールに返信が!?

すでにやりとりを終えたはずのメールに返信が来た。開封して本文を読んでみると、まったく別の用件。そんな経験はありませんか。メールを送る際、過去にやりとりのある相手であれば、新規作成ではなく返信という手段を選ぶ人は少なくありません。アドレス帳から目当てのアドレスを探す手間が省けたり、新規作成よりも誤送信のリスクを軽減できたりするからです。この場合、返信ボタンを押したら、過去の本文は全て消し今回の用件を書く。さらに今回の用件に合わせて件名を書き換えなければなりません。ところが、本文だけを今回の用件に書き換え、件名は過去のメールをそのままに送信してくる人も一定数いるものです。

件名の役割は、そのメールに書いてある用件や目的が分かること。本来、件名と本文は一致している必要があります。過去の件名をそのままに本文だけを書き換えてくる人は、用件さえ正しく伝われば十分と考えているのかもしれません。件名に対して無頓着とも言えます。届いたメールの本文と件名が一致していないのであれば、返信のタイミングで件名を書き換えるのも一つの方法です。それによってメールに対する理解がスムーズになったり、後の検索性が高まったりするメリットが得られます。相手が件名に無頓着なのであれば、書き換えることによる影響も少ないはず。なにより自らが件名を書き換えることをしなければ、その相手とは、どれだけ用件が変わっても常に同じ件名でやりとりをする懸念さえ付きまとうのです。

より避けるべきデメリットとは

まれに件名がない状態で送られてくるメールもあります。この場合も、返信する際は適切な件名を追記したほうがベターです。件名がないメールが届くのは、どのような可能性が考えられるでしょうか。相手が、件名を入力する欄があることを知らない。あるいは、慌ててメールを送り、うっかり書き忘れただけかもしれません。件名のないメールにそのまま返信すれば、件名は当然「Re:」のみ。たまたま書き忘れてしまった相手であれば、その返信を迷惑メールだと誤解してしまう可能性もゼロではありません。そもそも件名が「Re:」だけのメールを、ソフト側で迷惑メールと判断し、自動的に迷惑メールフォルダに振り分けてしまうことも考えられます。手間がかかるなど、件名を書き換えることで想定されるデメリットと、メールが読まれなかったり、受信トレイに届かなかったりするデメリット。どちらがより避けるべき事態なのか、答えは明白ですよね。

情緒的な側面が関係することも

件名を書き換えるかどうかについては、時に情緒的な側面が関係することもあります。円滑なコミュニケーションのためには、相手の感情への配慮が必要なことも。代表的な例としては、苦情のメールなどが挙げられます。

苦情のメールを送るということは、相手にとって何らかの不都合が生じているはず。不都合の度合いや頻度によっては、相手が感情的になることもあるでしょう。抑えきれない怒りのあまり「いいかげんにしてください!」のような件名を書いてしまうことも決してないとは言えません。

もし、相手の怒りの原因がこちらにあるのであれば、お詫びをすることになります。その際、原則に従い件名を書き換えることなく返信をしたとしたら……。

「Re: いいかげんにしてください!」

相手は、怒りの感情が引き金となって「いいかげんにしてください!」のような強い言葉を表現するに至っています。今度は、返信メールに記載されたその言葉が引き金とり、さらに怒りの感情が湧き上がることでしょう。本文でどれだけ誠意のある謝罪をしたとしても、平静な気持ちで読むことができなければ、その気持ちは十分に伝わるはずもないのです。こうしたケースであれば、「商品遅延についてのお詫び」のように件名を書き換えたほうが誠意は伝わったのではないでしょうか。

返信の際、件名を書き換える必要はないのが原則ですが、必ずしもそれが正解とは言えません。機能的な問題、自身にとってのメリット、そして相手の感情に配慮すること。さまざまな観点を持つことが大切です。原則だけにとらわれることなく、相手や状況に応じた適切な対応を考えることが、応用力を身に付けることにつながるはずです。