メールは、情報共有に優れたツールです。CCの機能を活用すれば、社内に限らず、社外のメールであっても簡単に関係者と共有することができます。円滑な業務の進行や対応力強化のために、取引先とのやりとりを部署やチーム内で共有する。あるいは、上司をCCに入れることで、社内的な報告を兼ねているといったこともあるかもしれません。

ところが、せっかくCCに関係者を入れてメールを送っているのに、その返信を自分にしか送ってくれない人がいる。こうした悩みを耳にすることがあります。情報共有のためには、返信されたメールを、その都度、関係者に転送しなければならず手間がかかる。どうして全員に返信してくれないのだろう。メールの本文に「全員に返信してください」と書くべきだろうか。こうした思いがふと頭をよぎるかもしれませんね。確かにそれも一つの方法ではあります。しかし、その前に考えるべきこと、やるべきことがあります。

個人情報への配慮

CCに関係者を入れてメールを送る場合は、基本的にその関係者と受信者が知り合いであることが前提です。単に面識があるかどうかではなく、互いにメールアドレスを知っているか否かが重要なポイント。

メールを送る際、TOやCCに入れたメールアドレスは、受信者全員が見ることができます。メールアドレスは個人情報。その取り扱いには注意が必要です。確かに、ドメインを見れば、同じ会社の人だということは分かります。しかし、社内の人だからといって自身のメールアドレスが共有されてしまうことを、相手が受け入れてくれるとは限りません。

一度会った人と名刺交換をしただけなのに、まったく別の担当者からいきなり連絡がきたり、何の同意もないままメルマガが送られてきたり。こうした経験から、たとえ同じ会社の人であっても、メールアドレスが共有されることを快く思わない人はいます。まったく面識のない人がCCに入っていることに、相手が不快感や不信感をおぼえ、意図的に全員に返信しなかった可能性も考えられるのです。

知り合いだけにはとどめられない現実も

CCで情報共有する際には、受信者全員が互いのメールアドレスを知っていることが前提です。とはいえ、現実問題としてそれが難しいことは十分に理解できます。属人化の回避や働き方改革の一環として、組織の中で分業が進み、一つのプロジェクトや案件にも複数のスタッフが携わることは珍しくありません。テレワークの推進など働く環境にも変化が生じていることから、関係者同士が面識を持つ機会も減っていると思われます。そもそも、取引先とは直接の接点を持つことがない社内スタッフと共有したい情報もあるでしょう。

「CCの共有」=「商談への同席」

相手とは面識がないスタッフをCCに含めたい場合には、それを事前に相手に伝えるのがマナーです。対面でのアポイントを想像してみましょう。商談の席に担当者以外の人も同席するのであれば、「当日は、上司の〇〇と2名で伺います」「技術スタッフの〇〇も同席いたします」のように、事前に相手の了承を得ているはずです。

もし、商談の席にまったく知らない人が同席していたとしたら、相手も驚きや戸惑いをおぼえますよね。対面もメールも一つのコミュニケーション手段であることに変わりありません。つまり、関係者が商談に同席することと、メールをCCで関係者に共有することは一緒。メールを共有したい相手が誰なのか、そして共有する目的は何なのか、この2点を事前に相手に伝えるべきなのです。

重要なプロジェクトであり、スムーズな決裁のためにも上司と共有したい。外出の多い営業であれば、依頼や問い合わせに迅速に対応するためにアシスタントと共有したいなど。共有の目的が見えなければ、相手が「送信者だけに返信すればいいだろう」と考えても不思議ではありません。誰に何の目的で共有されるのか。これが分かれば、相手も快く全員に返信してくれるのではないでしょうか。

取引先とのメールをCCで共有するのは、たいてい社内の都合によるもの。その事情を伝えることもなく「全員に返信してください」と書けば、自社の都合を一方的に押し付けているのも同然です。共有する相手や目的について、受信者と送信者の双方が共通認識を持つこと。これこそが、互いに気持ちよく円滑なコミュニケーションをとることにつながるのです。