メール送受信時のさらなる心づかい

1.返信のタイミング

ビジネスメールの返信は、早ければ早いほど良いとされています。私は「おもてなし学」を履修する学生に対して、「すぐに返信することこそ、おもてなし」と伝えています。メールを送ってくる相手は用件があるからこそ連絡してくるわけで、その問い合わせや相談などに対してすぐ返信がくれば、「すぐにリアクションがあって助かった!」と心づかいを感じてもらえるに違いありません。素早いレスポンスは相手の信頼を得ることにつながるのです。

メールは環境が整っていれば、いつでも送受信できるものですから、いつまでも返信が来なければ、メールを送った相手は不安になります。メールの到達率は100%ではありませんし、迷惑メールボックスに入ってしまって気づかないというケースも多々あります。そのような性質を持つ電子メールであることを頭に入れて、相手からのメールを確認したらなるべく早く返信し、メールが届いていることを相手に伝えることを心がけましょう。

それでも他部署や上司への確認が必要な場合など、返信に時間がかかるケースもあります。そのような場合には、メールを受け取った旨の返信は入れておきましょう。内容について現在確認中であり、少し時間を要することを伝えるだけでも、印象はかなり変わります。

2.件名を記す際の配慮

ビジネスメールを相手にちゃんと読んでもらうために非常に大切なのが件名です。件名は、一目で何の用件なのかがわかることが必要です。

「お世話になっております」や「先日はありがとうございました」という件名にしてしまうと、迷惑メールと見なされて削除されたり、重要度が高くないメールだと判断され、開封されないまま後回しにされたりする可能性もあります。メールボックスの受信表示は限られたものですから、件名をつける際には「いつの」「何の」事柄に対するメールなのか、その概要が具体的にわかるような表記にしましょう。

そのようなポイントを踏まえた例としては以下のようなものがあります。

面接日程確認のご報告(●●大学 山田太郎)
面接日程調整のお願い(●●大学 田中花子)
インターンシップ参加の御礼(●●大学 鈴木一郎)
第5回営業ミーティングのお知らせ
■■発売キャンペーン(9/24~9/30)のご案内

なお、㈱や(1)などのカッコ付きの略称や囲み文字は機種依存文字と言い、PC環境によって文字化けする可能性があります。ビジネスメールには環境依存文字を使用しないようにしましょう。

  • 相手への心づかいができているメールの例

    相手への心づかいができているメールの例

3.返信時の件名に対する配慮

ビジネスメールにおいて受信したメールに返信する際は、件名は変えずに送ることが良いとされています。

一見、丁寧さに欠けるようで失礼ではないかと不安になる人もいるかもしれませんが、件名を変えないほうが該当のメールを検索して探しやすくなるので、相手のメール管理・処理の手間を省くことができます。もともとの件名が「面接のご案内」であれば、そのまま「Re:面接のご案内」として返信します。

それでは、件名に自分の名前や相手の名前が入っているメールが届いたときに返信する際は、どのような配慮が必要でしょうか。

例えば

「江上様 9月24日面接の件(〇〇株式会社 人事部 伊藤)」

といったメールが来た際の返信方法です。

これには諸説あります。

1.何の用件に対する返信なのかわかりやすいほうが良いので、そのまま「Re:」で返す
→「Re:江上様 9月24日面接の件(〇〇株式会社 人事部 伊藤)」

2.自分の名前は削除して、相手の名前の箇所を自分の名前に変える
→「Re:9月24日面接の件(◇◇大学 江上いずみ)」

3.自分の名前を削除して、相手の名前に「様」を書き足す
→「Re:9月24日面接の件(〇〇株式会社 人事部 伊藤様)」

いかがでしょうか。皆さんはこのような件名のメールが来たときはどのように返信していますか? ビジネスメールの件名は、「誰と」「用件は何か」がわかることが大切ですので、急ぎの場合などそのまま返信しても良いとされています。

しかし、相手への配慮、心づかい、おもてなしの心を説く私としては、相手を呼び捨てにすることになる「1」は避けたいと思っています。「誰からのメールなのか」を一目瞭然でわかっていただけるよう、「2」が最もふさわしいと考えており、普段はそのように返信しています。

ビジネスメールはとても便利な情報伝達手段ですが、使い方を間違うと相手に不快感を与えることもあれば、迷惑をかけてしまうこともあります。文字の変換ミスや誤字脱字などに気づくために、一度書いたメールを送信する前にもう一度読み直すことも大切です

友達とのやり取りとは異なり、形式や内容、文章表現、送るタイミングなど、気をつけなければならないポイントがいくつもありますので、利便性だけを追求することなく、相手への配慮と心づかいを感じさせるメールマナーを身に付けていただきたいと思います。

著者プロフィール: 江上いずみ(えがみ・いずみ)

筑波大学客員教授・札幌国際大学客員教授・Global Manner Springs代表。東京生まれ。筑波大学附属高等学校から慶應義塾大学法学部法律学科卒業。1984年日本航空入社。客室乗務員として30年間で約19,000時間を乗務。オリンピック・パラリンピック教育担当講師として全国の小中高校で「おもてなしの心」をテーマに講演。国内外での年間講演数は250回に及び、「おもてなし学」の構築に取り組む。主な著書は「幸せマナーとおもてなしの基本」(海竜社)、「"心づかい"の極意」(ディスカバートゥエンティワン)