新社会人となり、定期的に健康診断を受けるようになったという人も多いはずです。

若い皆さんのほとんどは「異常なし」という診断結果を手にしているかもしれませんが、30代、40代と年齢を重ねていくと、「要経過観察」や「要再検査」という文字が刻まれる人が増えていき、健康について考えるようになります。

できれば大きな病気はしたくありませんが、もし、重大な疾病が見つかり、手術が必要という状況になったとします。以下の状況で、あなたはどのような判断を下しますか?

  • 重大な決断を迫られる時

2割の失敗と8割の成功

主治医から以下の説明がありました。

今回見つかったあなたの病気は極めて珍しく、手術をしても2割の人が失敗します。しばらく様子見をしますか?

いかがでしょう。「2割の人が失敗!」という表現にインパクトがあり、腰が引けてしまいます。失敗から「死亡」を連想してしまいます場合も。私なら、新薬の開発や新たな治療手段が見つかることに期待し、様子見でお願いするかもしれません。

一方、以下の質問だとどうでしょうか?

今回見つかったあなたの病気は極めて珍しく難しい手術になりますが、8割の確率で成功します。手術を受けますか?

いかがでしょうか。私は即答で「手術してください」と答えそうです。

フレーミング効果とは

両者は同じ内容を違う切り口で話をしています。このように、1つの選択問題に対して異なった表現をすると、人々の意思決定に影響を与えてしまうことを「フレーミング効果」と呼んでいる。フレームというのは枠組みのことです。

どういう枠にはめた方が良いのか? ということです。ネガティブではなくポジティブな枠組みに入れた方が良いのです。

  • フレーミング効果

例えば、「100万円分の商品に対して5万円の手数料をご負担いただきます」という表現と「購入額に対して5%の手数料をご負担いただきます」という方が負担が軽く感じるかもしれません。こういったケースも「フレーミング効果」が働いています。違うフレームを使うことで消費者の負担を軽減する効果も期待できそうです。

選択肢が3つあると、つい真ん中を選んでしまう

このフレーミング効果では「極端の回避性」ということも指摘されています。3つ選択肢があるとつい真ん中を選んでしまったという経験がありませんか? もし、鰻屋さんに入り、以下のメニューがあるとどうでしょうか?

2,100円
1,300円

「高くておいしい」
「質はやや落ちるが安い」

それぞれ比較しやすく、顧客の気分、経済力、鰻へのこだわりなど様々な理由が働き、おおよそ半分半分に注文が分かれると考えられます。一方、以下のようになると真ん中に注文が集中するというのが「極端の回避性」です。

松コース 5,000円
竹コース 3,500円
梅コース 2,000円

これから分かるように、先の鰻屋さんの売り上げをアップさせる方法として期待できるのは「上」と「並」に加え、「特上」を用意することです。すると、「特上」を頼む人はそれほど期待できなくても、3つの選択肢になったことで「上」を注文する人が増えることが見込まれるためです。

消費者は「デフォルト」好きでもある

また、行動経済学において人は「デフォルト」を好みやすいということもいわれています。デフォルトとは「初期設定」という意味です。

要するに幾つかプランがある中で初期設定がされていると、「わざわざそれを変更する」ということに抵抗を感じるのです。よってスマートフォンの料金プランなど初期設定時に様々なオプションが付与されていて、「今月は無料なので、外したい場合は来月までに外してください」といった案内があるのは、そのためです。

「契約後にオプションを付ける」という人はあまり期待できないため、先に付けておけば、「契約後にオプションを外す」という人も同様に少ないため、携帯会社にとっては売り上げアップに寄与します。

「松竹梅」の3つの中から真ん中を選ぶというのは有名な話でもあり、「消費者に見抜かれたくない」ということであれば、あえてさらにパターンを増やし、やや複雑にしておいて、「おすすめプラン」を用意することで、一番売りたいプランをアピールするのも1つですね。

人生の選択肢が3つあった場合は

ネガティブな表現をポジティブにする、2つの選択肢を3つに変えることで、人の意思決定が変わる可能性があることを今回は紹介しました。営業や販売職などに従事している人はぜひ意識してみてください。

では、社会人として歩み始めた皆さん自身に分岐点が到来し、大きく3つの選択肢があった場合はどうでしょうか?

できれば、ちょうどよい「真ん中」ではなく、「一番厳しい道」を選択することが、皆さんの成長や夢の実現につながりそうです。

誰かが用意してくれたデフォルトの道を歩くばかりが人生ではありません。やりたいことがある時は勇気を持って!

著者プロフィール: 内山 貴博(うちやま・たかひろ)

内山FP総合事務所
代表取締役
ファイナンシャルプランナー(CFP)FP上級資格・国際資格。
一級ファイナンシャル・プランニング技能士 FP国家資格。九州大学大学院経済学府産業マネジメント専攻 経営修士課程(MBA)修了。