こんにちは。上杉さくらです。ラジオ聴いていますか? まずは、読者のお便りから紹介しましょう。東京都の今ちゃんさんからです。

私とBCLとの関わりは中学1年生からです。当時、友人に「BCLって知ってるか?」と聞かれて私は「ビ、ビ……何それ???」。その日に友人宅に遊びに行って海外短波放送を聞きました。当時社会科が好きだったので、直接海外の各国の情報が入る海外短波放送が好きでしたね。その後、親にねだってクリスマスにソニーのスカイセンサー5900を買ってもらって色々な海外の放送局を聞き、ベリカードを集めていました。懐かしい思い出です。

中学2年生の時、社会科の時間に色々な国のことを調べて発表するというのがありました。私たちの班はアジア各国担当だったんですけど、当時『バチカン放送』の日本語放送が好きで良く聞いていたので、先生にわがままを言って『バチカン市国』の発表をしましたよ。バチカン市国ってご存知の通り世界一小さい国です。その発表をする時に、『バチカンにはバチカン放送って言う放送局があって、ローマ郊外にある局は自国のバチカン市国より面積的に大きいんです』なんて発表した記憶があります。

今はインターネット等情報源が多く、海外の情報が簡単に入手できる時代になりました。そういう時代でありながら、ラジオという道具を使って外国の情報を仕入れようとすると大変ですよね。【中略】これが時代と逆らったBCLの楽しみなんでしょう。ラジオのダイヤルを回し、弱い電波を拾って海外の放送を聴く。ジャミング・ノイズの中から希望の放送局が聞こえてきた時の楽しさ、うれしさは、なにものにも代えがたいものだと思います。

押入れを探したら、中学時代クリスマスにねだって父に買ってもらったり、高校時代バイトしてやっと買ったリグ(受信機)達が出て来ました。そういう昔の相棒と海外情報探しの旅に出かけてみようと思います。またBCLの再開ですね。またアンテナを立てないと……。嫁になんて言われるかな~~、きっと「パパなにやってるの???」って言われちゃうでしょうね。でも再開します。

お便りありがとうございます。私も中1の時に、同級生の影響で始めたんですよ。とっても親しみを感じます。スカイセンサー5900は真四角の筐体に大きいダイヤルが印象のラジオでしたよね。TV番組『コンバット』の中に出てきても違和感のないミリタリー感もありました。

ジャミングとノイズの波をかきわけて放送を聴く、まるで、「はるばる地球から小惑星群を縫うように進んで火星に到着した」ような楽しみが、BCLの醍醐味なのでしょう。そして、ダイヤルをくるくると回すことで、思いもかけないラジオ局に遭遇する。こんなシンクロニシティも捨てがたいですね。また、季節ごとにあるいは時間帯ごとに、よく聴ける周波数帯や地域のラジオ局が変わってくる。地球や太陽のしくみを科学的に考えて、ラジオを聴くのも楽しみの1つなんですよね。

たとえば、現在2008年は、太陽の活動がゆるやかで、黒点も少なかったのです。ということは、ハイバンド(17メーターバンドや21メーターバンドなど)の放送が伝わりにくい。

今ちゃんお父さん。ラジオを聴く時に、お子さんに科学のしくみと一緒にラジオのことをぜひ話してください。ぜったい尊敬されると思いますよ。ニッポンのお父さん! がんばって!!

ところで、バチカン放送についてです。日本語放送はなくなってしまいましたが、中国語放送はよく聞こえます。

バチカン放送

  • 07:00-07:45 7300、9600、12035kHz
  • 09:00-09:45 13785kHz
  • 21:30-22:15 6020、9900、17765kHz
※梵蒂岡廣播電臺/中国語/公表されている周波数のため、必ずしも聞こえるとは限りません

バチカン放送のQSL。これはアフリカ向けの放送を聴いたもの

そのほか、朝5時半から6時にかけてアフリカ向けのフランス語放送が11625KHzで聴こえます。また、秋~冬にかけて、日本時間夕方、16時台のアフリカ向けフランス語放送・英語放送が25MBの常連局として有名です(通常、11625KHzが使われる)。サイトからでは、オンデマンド放送もストリーミング放送も聴けますので、ぜひアクセスしてみてください。私は、今、日曜日のミサのストリーミング放送を聴きながら、Macで原稿を書いています。

サイト情報

バチカン放送
http://www.radiovaticana.org/
バチカン放送(日本語サイト)
http://www.radiovaticana.org/gia/index.asp
バチカン放送の各地域別スケジュール
http://www.oecumene.radiovaticana.org/en1/palin_ing.asp

インターバルシグナルってまだあるの?

この連載は、担当編集者20代女子ゆうこらんと一緒に、テーマを考えています。その、ゆうこらんが今はまっているのが「インターバルシグナル」です。

というのは、ラジオNIKKEIで放送された山田先生の追悼番組に出演したゆうこらん、番組にテーマ音楽があって、それを古くからのユーザが楽しみにしていることを知り、また、放送が始まる前に、インターバルシグナル(以下、IS)という、その放送局を識別するために放送開始前に流される音楽やチャイムがあることに興味を持ったからです。

ISというと、ラジオ・オーストラリアのワルチング・マチルダと笑いカワセミの鳴き声、VOAのヤンキー・ドゥードゥル(アルプス一万尺のテーマ)、北京放送の東方紅など、懐かしく思う方も多いのではないでしょうか。

ところで、ISって今もあるのでしょうか。たしかに、デジタル表示の短波ラジオが主流になって、ISの必要性は少なくなったといえましょう。しかし、今でもISを流している放送局はあります。また、インターネットのストリーミング放送でも聴ける放送局もありますので、簡単にISを聞ける放送局を紹介してみましょう。

■All India Radio(AIR/インド)

インド音楽で始まるISは物悲しさにあふれています。日本で聴きやすい放送は、19:00から放送される英語放送(17800KHz)。インド音楽もふんだんに流れるので、ぜひチェックしてみてください。

■Radio Romania(ルーマニア) 

ルーマニアといえば、「コマネチ」という人はそうとう古いと思います。けれどもわれらが70年代のアイドル、いや妖精といえるでしょう。そのルーマニアの放送もISが聞こえます。

  • 02:00~ 11735KHz(英語)
  • 06:00~ 9755KHz(スペイン語)

私は、朝のスペイン語放送が好きです。ルーマニアも同じラテン民族のせいか、とっても楽しい番組です。「アキ、ラジオ ルーマニア」(こちらはラジオ・ルーマニアです)というIDも、Rの舌を振るわせる発音はさすがラテンです。

Radio RomaniaのQSL。中国語放送もあります

■Radio Austria(オーストリア) 

ウィーンの香りただよう、「美しき青きドナウ」が流れます。以前の電子オルガンのISではなく、各国のID(局名告知)をふくめた開始音楽的なものになりましたが、広い意味でのISということで紹介します。受信報告書を送ると、コンピュータで作成されたQSLレター(ベリレター)が送られてきます。

  • 21:00~ 17715KHz(ドイツ語)

Radio AustriaのQSLレター。裏(写真右)を見ると切り取ってQSLカードにできるようになっているのがわかる

■Trans World Radio(TWR)

30年前はなかなか聞くことができなかったTWRもいまでは出力の高い中継所が増えていろいろ楽しめるようになりました。夏までは23時前の15360KHzのスワジランド局がよく聞こえましたが、今はお空次第のようです。澄んだISが聞こえます。また、同じTWRでもISは違うようですので、チェックしてみてください。中波では1377KHzでTWR-EuropaのCentral Asia中継、1548KHzでモルドバ中継が聞こえますが、このときISが確認の手段となります。中波はループアンテナが必須です。

■Radio Japan(日本)

実は、いちばん好きなのが、Radio JapanのIS「さくらさくら」。ロサンゼルスのリトルトウキョウで、このISを聞いたときには涙が出てきました。その時は仏領ギアナ中継のスペイン語。まったくわからなかったんですけど。

現在だと、たとえば16:00~の6145KHZの日本語放送で「さくらさくら」を聞けます。 (参考:http://www.nhk.or.jp/nhkworld/english/radio/shortwave/all.pdf)

あれ、今は仏領ギアナやアフリカのガボン中継はなくなってしまったのですね。ちなみに、ISについては放送開始前の数分前からチェックしてください。

Radio JapanのQSL。今はなき仏領ギアナ中継 (写真右)

そのほかにもCRI(中国)やRAE(アルゼンチン)などのオンデマンド放送、ストリーミング放送でもISは聞こえます。

サイト情報

CRI(中国)
http://www.chinabroadcast.cn/
RAE(アルゼンチン)
http://www.radionacional.com.ar/

RAEについては、3月もしくは9月頃の早朝、短波の15345KHzがよく聞こえます。

中部アフリカ、マリ中継の中国国際放送に注目!

さて、中継所の話が出ましたが、CRI(中国国際放送)のアフリカ向けフランス語放送が、早朝聞こえています。マリ中継です。同局のフランス語放送は2時間が基本ですが、6時半からの放送はPart 2の部分。中国のアイドルやタレントの歌が目白押しで、これなら中国ファンが増えてしまうかも。9月23日の放送を聞いてみると、中国のタレントファンであるケニヤの少年少女たちの声がラジオで放送されるなど、ファンを押し出す放送がうまいです。ニッポンの国際放送も手本にしたいほどです。

スーダンをはじめ、アフリカに対する中国の影響力は高まっています。ラジオの世界でもそれはいえるかもしれません。中国のアフリカ諸国に対する影響力は『アフリカ・レポート』(松本仁一 岩波新書)が参考になります。

  • CRI Via Mali (中国/アフリカ・マリ中継)6:30~ 11975kHz

そのほか早朝のアフリカのラジオ放送としては、ニジェール、チャドがよく聞こえますので、チェックしてみてはいかがでしょうか。フランス語放送もあります。

  • ORTN <La Voix du Sahel>(ニジェール/フランス語放送他)
    9705kHz 6時台が中心
  • Radiodiffusion Nationale Tchadienne (チャド/フランス語放送他)
    4905kHz 4~5時台が中心

おわりに

本コラムでは、読者のお便りを募集しています。好きな曲、番組、なつかしのBCLラジオ、語学のはなし……、BCLに関する話ならば大歓迎です。お便りは、このコラムでご紹介することもありますので、都道府県、年齢などを記入していただけると幸いです。担当編集者、ゆうこらんへのお便り(※担当編集「コラムで上杉さんに取り上げてほしい! というネタも募集中ですよ」)も、宜しくお願いいたします。宛先はこちらです。それでは、また再来週~!