離婚前に別居する夫婦は多くいます。別居には、法的にも重要な意味があります。

本稿では、離婚前の別居が持つ法的な意味と、メリット・デメリットについて弁護士の立場から解説していきます。

別居の持つ法的な意味とは

まずは別居が法的にどのような意味が認められるのか、確認しましょう。

■別居と法律上の離婚原因
別居すると、夫婦の生活環境が同一ではなくなります。居住場所が変わるので家事などを分担することもなくなり、家計も別になることが多いでしょう。

このように、別居して夫婦が相互に扶助する関係性が薄らぐことが多いので、別居状態が長く継続すると、夫婦関係が破綻しているとして離婚が認められる可能性があります。

何年間別居すれば夫婦関係が破綻したとして離婚が認められるか、ということは、その夫婦が同居して生活していた期間が何年か、などという個別事情によりますので一概には言えませんが、別居が離婚に向けた第一歩になることは多くあります。

■別居と財産分与
別居は「財産分与の基準時」にもなります。

財産分与の基準時とは、財産分与の計算の基準とするタイミングのことです。離婚前に別居した場合には、別居時に存在した財産を基準として財産分与を計算します。そこで別居後もしくは離婚前に一方が財産を使い込んだとしても、そのことは考慮されず別居時に存在したものを前提に夫婦が2分の1ずつにします。

もっとも、別居時点がどの時点かということをめぐり争いになることもあります。

■別居と親権
別居するときには、「親権」との関係にも注意が必要です。別居している夫婦が親権について争っているとき、裁判所は、現状どちらが子と同居して面倒をみているか、ということを重視して親権の判断をする傾向があります。ただしこれは、子どもが落ち着いて暮らしている場合に限ります。

したがって、親権を獲得するということを考えると、別居を始める時に「とりあえず子どもは相手に託して自分だけ家を出よう」などという判断は慎重に行う必要があります。

■別居と生活費
別居したら、夫婦の家計は別になります。ただし生活費のやり取りをしなくていいわけではありません。別居しても夫婦には助け合う義務があり、生活費の分担義務が課されるためです。

よって収入の高い側の配偶者は低い側の配偶者へと毎月「婚姻費用(生活費)」の送金をしなければなりません。具体的な金額は家庭裁判所が基準を定めているので、通常はそれに従って決定します。

以上のように、別居は離婚にともない考えなければならない事項に法的な影響を持ってきます。

別居のメリット

離婚前に別居すると、以下のようなメリットがあります。

■精神的に安定する
不仲になった配偶者と一緒に暮らし続けるのは、大変なストレス原因になるものです。別居すれば相手の顔を見ずに済みますし、言い争いなどもなくなるのでストレスが小さくなり、精神的な安定につながることも多いと言えます。

■DVなどの被害から逃れられる
DVやモラハラなどの被害を受けている方は、別居により身を守ることができます。安全に、迅速に危険を排除するために、別居の段取りについて早急に警察や弁護士に相談しましょう。

■相手を離婚する気にさせやすい
自分としては離婚したいけれど、相手が離婚を受け入れないケースがあります。そういった場合、別居すると相手に「こちらが本気で離婚を考えている」という真剣な気持ちが伝わり、離婚に進みやすくなることがあります。

■裁判で離婚が認められるための考慮要素となる
離婚したいと思っても、「性格の不一致」という主張のみでは、なかなか裁判で離婚が認められないことが多いと言えます。この点、別居が長期間に及んでいると、それにより夫婦関係がすでに破綻していると認められ、離婚の判断につながる可能性があります。

別居のデメリット

一方、離婚前の別居には以下のようなデメリットもあります。

■離婚したくない場合、離婚に進んでしまう可能性が高まる
もしあなたが離婚をしたくないのであれば、別居はあまりおすすめできません。それ自体が離婚の原因になる可能性があるからです。

■収入が高いと生活費の送金が必要になる
相手よりも収入が高い方の場合、別居すると相手に毎月送金しなければなりません。もちろん自分自身の生活費も必要なので、二重生活を維持するために多額の費用がかかってしまいます。

■財産分与や慰謝料などに関する証拠を集めにくくなる
同居していたら、相手の行動を把握しやすいですし、財産に関する資料なども集めやすいものです。しかし別居すると相手がどのような生活をしているか分かりにくい上、相手名義の財産資料を集めるのは困難となるでしょう。証拠集めは別居前に行っておく必要があります。

不利にならない別居方法

以下では、不利にならない別居方法を弁護士の視点からご紹介します。

■悪意の遺棄にならないようにする
別居の際「悪意の遺棄」にならないよう注意が必要です。悪意の遺棄とは、「婚姻関係を破綻させても良い」との考えを持って相手を見捨てることです。例えば以下のような場合に悪意の遺棄となる可能性があります。

・別居後に生活費を払わない
・何の理由もなく一方的に家出をした
・浮気相手の家に行って同棲を始めた

■生活費を支払う
自分の方が相手より高い収入を得ているなら、別居中には相手にきちんと生活費を支払いましょう。法律の定める基準に従って毎月支払いを続ける必要があります。婚姻費用の支払い義務は、別居が解消された時(再び同居を始めた時)、または離婚する時のいずれか早い方まで続きます。

まとめ

「別居したいけれど、後々デメリットがないか?」などと悩まれる方は多いようです。別居は、これまで述べてきたとおり、親権、生活費など多くの事項と関連する非常に大事な問題ですし、別居が後々ご自身にとって不利に働かないように注意すべき点をきちんと認識しておく必要があります。

別居したいと思ったら、または配偶者から別居したいと言われたら、まずはお気軽に弁護士にご相談ください。

執筆者プロフィール : 弁護士 高橋 麻理(たかはし まり)

第二東京弁護士会所属。東京・横浜・千葉に拠点を置く弁護士法人『法律事務所オーセンス』にて勤務。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。2002年検察官任官。東京地検、大阪地検などで勤務後、2011年弁護士登録。元検察官の経験を生かして、刑事分野の事件を指導、監督。犯罪被害者支援離婚問題に真摯に取り組んでいる。