新型コロナウイルス感染拡大の影響で世界販売が減少し、2020年3月期の決算を減収・大幅減益で終えたマツダ。海外販売比率の高い同社にとってコロナの影響は大きいが、これまでにいくつもの経営危機を乗り越えてきた自動車メーカーとして、今回はどう切り抜けるのか。

  • マツダの「CX-30」

    マツダはコロナ危機をどう乗り切るのか

創立100周年で危機に直面

前期第3四半期(2020年1~3月)の最終損益が赤字となったマツダは、今期(2020年4月~2021年3月)の業績見通しについて、先行きが不透明であるため未定とし、公表を見送った。

決算発表の電話会見に臨んだ古賀亮取締役専務執行役員は、コロナ危機にマツダがやるべきこととして「第一に従業員および取引先や販社の雇用と生活を守ること、次に高まった在庫調整を進め、需要の回復の兆しを逃さず先取りし、変化に対応していくこと、さらに、営業キャッシュフローを取り返すこと」を挙げた。

広島に本社を置くマツダは、広島と山口県の防府に生産工場を構えており、中国地方の取引先が多い。マツダの業績動向は、広島を中心とする中国地方の経済に大きな影響を与える。

2020年1月に創立100周年を迎えたマツダだが、1979年に米フォードと資本提携してからは長らく同社の傘下にあった。提携解消はリーマンショック後で、2017年にはトヨタ自動車と資本提携してトヨタグループに入った。

過去に何度もの経営危機に直面してきたマツダだが、リーマンショック直後の2009年3月期には連結決算で赤字に転落した。それでも、独自のスカイアクティブ技術(SKYACTIV TECHNOLOGY)開発を続けたことで、ここへきて「MAZDA3」などの新世代商品群投入につながっている。

  • マツダの「MAZDA3」

    「MAZDA3」など独自性の高い商品展開でブランド価値を向上させてきたマツダだが、コロナ危機で経営方針に影響は

マツダは2019年5月に「中期経営方針」を発表し、2024年度に世界販売180万台、売上高4兆5,000億円、営業利益率5%以上とする数値目標を掲げた。会社の在り方としては、独自のブランドが光るスモールメーカーを目指していく方針だ。そんな中でのコロナ危機は、創立100周年を迎えたばかりのマツダにとって大打撃となりそうだ。

固定費抑制と在庫管理強化が急務

マツダの2019年度連結世界販売は141万9,000台(前期比9%減)。コロナの影響で減少幅は大きくなった。特に2020年1~3月は欧州、北米、中国で販売が減少。これにより、2019年度第4四半期の最終損益は202億円の赤字となった。

2019年度通期の営業利益は前期比47%減の436億円。コロナの影響による販売減や工場の操業停止などが100億円程度の減益要因となった。

今期に入りコロナの影響は広がっている。4月の世界販売は前期比半減以上の5万台にとどまり、欧州は80%減の4,000台、北米は54%減の1万4,000台だった。海外比率の高いマツダは4月以降の販売減を踏まえ、在庫水準を適正化するため約13万台の生産調整を実施することにしている。

古賀専務も「やるべきことは多いが、中期経営計画の戦略は変更せず調整をかける。また、コロナ後の世界を見据えて、変化を先取りしていく必要がある」と述べた。トヨタとの提携の目玉である米国・アラバマの合弁工場は2021年に稼働開始の予定となっているが、「コロナの影響で建設工期も延びているが、現時点で計画を変えることはない」とした。

ともあれ、フォード提携時代における再三にわたる経営危機や、リーマンショック後の4年連続の赤字などから復活してきたマツダにとって、コロナ危機を脱することが、次の100年を生き抜くための試練となる。