昭和20年(1945)の終戦後、日本の全ての民間航空活動が禁止されたが、昭和25年(1950)6月に連合軍総司令部(GHQ)は日本の国内航空輸送の再開を決定。そして、昭和26年(1951)8月に戦後初の日本人の手による航空会社として、日本航空(以下、JAL)が設立された。
同年10月に、戦後初の国内線民間航空機として東京=大阪=福岡線が就航。昭和29年(1954)2月には、初の国際線となる羽田=ウェーキ=ホノルル=サンフランシスコ線を開設し、日本のフラッグキャリアとして日本と世界を結んできた。そんなJALの航空機の歴史を、ロゴの変遷から見ていきたい。
初代ロゴは「JAL」の形をした飛行機
初代のロゴは、一般公募したデザインに手を加えたもので、昭和26年(1951)9月に制定。飛行機を前から見た形にJALの3文字をあしらい、日の丸を象徴する円と組み合わせたデザインで、このロゴは機首部分に描かれていた。
JALは「日本的なサービス」をセリングポイントとしており、昭和29年(1954)の国際線開設に伴い、国際線宣伝印刷物や客室サービス用品の装飾デザインに、いろいろな日本古来の紋章を市松模様にはめこんで使用。中でも「鶴丸」が多用されていた。
昭和33年(1958)、ジェット機導入を2年後に控えていたJALは、新しいシンボルを検討。そこで、「ジェット時代にふさわしい現代的でスピード感があるデザイン」「日本のイメージを想起する伝統的デザイン」を基本コンセプトにし、それまでにもJALのイメージとして多用されていた「鶴」をデザイン化したマークを作ることを決定した。
そして昭和34年(1959)8月、鶴にJALの文字をあしらったマーク「鶴丸」が、JALの商標として制定されることとなった。これは宮桐四郎氏の原案に、アメリカの広告代理店の見解を入れて修正し、ヒサシ・タニ氏が製図したものである。
黒・赤・グレーに込められた想い
この2代目ロゴ(初代鶴丸)は、昭和35年(1960)に初のジェット機DC-8-32「FUJI」のコクピットのすぐ後に描かれた(尾翼には日の丸をデザイン) 。その後、昭和45年(1970)にボーイング747の就航にあわせ、鶴丸マークは尾翼に大きく描かれるようになる。
昭和62年(1987)の完全民営化に伴い、CIの総仕上げとして、平成元年(1989)5月に3代目ロゴデザインを発表。JALの黒文字は「誠実さ、堅実さ」を、正方形の赤は「燃える情熱」を、グレーのバンドは「跳躍感・スピード感」を表現し、機体前部に描かれた。なお、このタイミングで英文社名表記は「JAPAN AIR LINES」から「Japan Airlines」に変わることになる。
伝統を受け継ぐ「鶴丸」は3代目ロゴの書体にあわせ、鶴丸内のJALの文字の書体を変更。この2代目鶴丸は尾翼に残された。
2001年には、日本エアシステム(JAS)との経営統合を発表。2002年9月に「The Arc of the Sun(太陽のアーク)」と呼ばれる4代目ロゴと機体塗装を発表した。空に向かって上昇していくように描かれたアーク(円弧)のデザインは、輝ける太陽がモチーフになっている。書体は力強いボールドタイプを採用。変革に向けての強い意志が込められていた。基本カラーは赤・シルバー・黒とし、赤は「日本の象徴」「強い情感」、シルバーは「安全性」「革新性」「品質感」、黒は「信頼性」「普遍性」を表している。
機体塗装デザインはオフホワイトをベースとし、機首部分に4代目ロゴを表示。鶴丸が描かれていた垂直尾翼には基本テーマである太陽を大胆に配置して、「日本を代表するエアライン」であることを示すと同時に、赤とシルバーのカラーリングによって「強い情感」と「高い品質感」を表現した。
復活した鶴丸で前進・上昇を表現
JALは2010年1月に経営破たんし、会社更生手続き申し立て、2011年3月に終結した。5代目となる現在の鶴丸ロゴは、新生JALから社会に対しての約束、全社員の決意として2011年4月より採用。「鶴丸」は創業当時の精神に立ち返り、挑戦する精神・決意、すなわちJALの原点・初心を表している。
この5代目ロゴ(3代目鶴丸)のデザインをよく見ると、鶴の頭部は鋭く前向きになっている。これは「前進」をアピールしており、少し上向きになったクチバシとともに、「未来への希望」「変革へ向けての強い意志」を表している。また、羽の切れ込みをシャープに大きくすることで、「力強さ」を表現している。
機体塗装デザインには日本の伝統色の白、赤、黒の3色を使用。これは、モチーフとなっている丹頂鶴に由来している。白は、サービスの原点に立ち返り、高潔な精神性を示し、赤は「猩々緋(しょうじょうひ)」と呼ばれる赤で、日の丸、日の出をイメージ。黒(墨)はメインカラーを補完する。
ターニングポイントとなるタイミングに、新しいロゴと機体デザインを投入していることからも、次のステージへと向かう同社の姿勢を垣間見ることができる。
日本航空(JAPAN AIRLINES)
1951年に戦後初の民間航空会社として設立。1953年に日本航空株式会社法の定めるところにより、政府出資と旧会社の営業価格と合わせた資本金をもって設立。1987年に完全民営化され、2004年には日本3位の航空会社であった日本エアシステム(JAS)と経営統合を完了した。2010年に会社更生法を申請したが、2011年3月に同手続きを終え、“新生JAL” として始動。2007年には3大ワールドアライアンスのひとつである「ワンワールド」に加盟。現在40カ国・地域の229空港(国内55空港、他社機によるコードシェア便を含む)に乗り入れている。
現在、「Welcome ! New Sky」というアクションスローガンのもと、今までにない“新しい空”をつくる「JAL NEW SKY PROJECT」を始動。「1クラス上の最高品質」をテーマに掲げた新シートや、「空の上のレストラン」をテーマにメニューを一新するなどしている。