前回までのあらすじ

33歳独身B型男子である僕、山田隆道は現在絶賛婚活中。かねてから狙っていた26歳OLのCと中目黒の居酒屋で初デートが実現。僕はCを口説くために、「デートを四つのクオーターに分けて考える」という作戦を実行するのだが――。

Cとの居酒屋デートは、僕が繰り出した犬猫写真大作戦によって順調な滑り出しとなった。赤ワインをぐいぐい飲みながら、かわいい犬猫写真のスライドショーを満喫する僕とC。もちろん、会話も弾んだ。動物好き同士は話が合うのだ。

そして30分が経過した頃、前回の終盤部分で説明した「デートを四つのクオーターに分けて考える」という作戦を敢行。つまり、第1クオーターの30分を「動物好きで楽しい人」というキャラクターイメージで押し通したら、次の30分(第2クオーター)では大胆なぐらい真逆のキャラに舵を切る。具体的には、突然黙り込んで、控え目な男に変貌するというわけだ。

こうすることによって、Cは間違いなく僕のキャラクターのギャップに戸惑うだろう。「さっきまではあんなに明るくて楽しい人だったのに、急におとなしくなって一体どうしたの?」と疑問を抱いてくれる可能性も高い。もちろん、これも狙いのひとつである。女子に疑問を向けられるということは、それだけ関心を持ってもらっている証拠。すべての恋は、そもそも関心の二文字から始まるのだ。

さらに、僕はその間、ただ黙っているだけではなかった。自分から一生懸命喋らない代わりに、Cへの質問に全神経を集中。すなわち、第2クオーターは僕が聞き役に回って、なるべくCに「自分の話」をさせるということが目的なのだ。

人間とはそもそも、自分の話を興味深そうに聞いてくれる人をありがたく思うものである。だからして、聞き上手な人間はそれだけで好感度が上がったりもする。大切なのは「あなたの話に興味がありますよ」という姿勢を見せることだろう。

かくして、第2クオーターではCの生い立ちから仕事の話、趣味や特技の話などを思うままに質問し、Cにたっぷり喋ってもらった。

僕は彼女の話を興味深そうに聞く一方で、別の意識をCへの気遣いに集中。グラスや皿の空き具合をこまめにチェックしたり、テーブルの汚れを拭いてあげたり、とにかく優しさと気配りをアピールする。こうすることで、Cが僕のことを「動物好きで楽しい人」というだけでなく、「優しくて気配りもできる人」とも認識してくれたら最高だ。女子とはいつの時代も男子の二面性に心をときめかせるものじゃないか。

ちなみに初デートで女子に伝わる男性の優しさとは、"本当の意味での優しさ"といった深い定義のものではなく、馬鹿でも優しいと気づくわかりやすい行為のことを指す。具体的には「料理やドリンクを積極的に注文してあげる」「テーブルを拭いてあげる」以外に、「料理を取り分けてあげる」「ハンカチを貸してあげる」「自分の上着を膝掛けに使わせてあげる」「髪や洋服に付着した埃を取ってあげる(本当に付着してなくても"取るフリ"だけでOK)」「酒を無理して飲んでいそうだったら、ソフトドリンクを注文してあげる」の全部で七種類しかないと、僕は勝手に分析している。つまり、それらの七種類の優しさをこれみよがしに繰り出していけば、誰だって初デートで女子に「優しい」と思ってももらえるのだ。

というわけで、第2クオーターが終了。しかし、ここで油断してはいけない。僕は即座に頭を切り替え、次のキャラチェンジを敢行。「動物好きで楽しい人」⇒「優しくて気配りができる人」ときたら、第3クオーターは「真面目で誠実な人」がいいだろう。題して、キャラクターのギャップ三段活用。二面性どころか多面性をCにアピールし、男としての深みをますます出していこうという作戦である。

正直、ここまでの段になると、僕も少しは酔いが回っていた。だからして、ちょっと恥ずかしくなるぐらいの真面目な話を大胆に語ることができたのだろう。平たく言うと、僕は堂々と夢を語ったわけだ。(キッパリ)

はっきり言って、女子とのデートで勝てる男子とは「シラフじゃ恥ずかしいことをためらわずにやれる男子」のことを指すと思っている。優しさとは表面的なものではないとか、夢なんか人前で易々と語るものではないといった価値観は、まっとうな男子なら至極正論で、僕自身も本音ではそっちのほうが真実だと思っているのだが、それがデートという短時間で女子に伝わるかといったら、悲しいかな現実は違う。デートという特殊な空間では、わかりやすさこそが命であり、もっと言えば優しさも夢もどんどんアピールするべきなのだ。

さあ、続いてはいよいよ大詰めである。ラストの第4クオーターで仕上げに入るわけだが、それはまた次回のお楽しみに!

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