
オーストラリア・シドニー出身の4人組ロックバンド、スタンド・アトランティック(Stand Atlantic)。2012年の結成以来、ポップパンクを軸にロック、エレクトロニック、オルタナティヴなど多彩なサウンドを取り入れながら進化を続け、2024年の前作『WAS HERE』はオーストラリアのARIAアルバムチャートで3位を記録。着実にキャリアを積み重ねてきた彼らが、通算5作目となるニューアルバム『GODBREATH』をリリースした。
Rolling Stone Japanでは先日、ギタリストのミキ・リッチと、かねてから親交の深いONE OK ROCKのRyotaとの対談を実施。その際にも話題に上ったメンバー同士の強い絆や、長年の活動を通じて培われたバンドとしての成長について、今回はボーカルのボニー・フレイザーとミキに話を聞いた。最新作では原点回帰ともいえるサウンドを追求する一方、ソングライティングや歌詞にも新たな変化が生まれている。ニューアルバムの制作秘話から音楽哲学、日本への特別な思いまで、二人が率直に語った。
メンバーの絆とバンドの成長
―前回のミキさんとRyotaさんの対談の時に、Ryotaさんがスタンド・アトランティックのことを、メンバー同士がスゴい仲良いのが素晴らしくて、全員でよくご飯を食べに行ったという話をしていました。仲の良い二人はお互いのことを、人として、そしてミュージシャンとして、どのように見ていますか?
ミキ:さっきもちょうどその話をしてたところだよ。Ryotaが話してたのは、バンドにとって一番大事なのは、結局、メンバー同士が友達でいることで、それこそが長く続けるための秘訣だってことだ。メンバーがお互い一緒に過ごしたいと思えなかったら、そもそも何のためにやってるんだよって話だよね。僕たちのいいところは、いつでも一緒に遊ぶ気になれるというか、普通に「じゃあ行こうよ」ってなる感じなんだよね。中でも、ボニーとジョノ(ドラマーのジョノ・パニッチ)はスゴく共依存的だと思っていて。朝起きるとすぐに、「何する? コーヒーでも飲みに行く? 何か食べに行く?」ってなるんだよ。
ボニー:私はみんなと一緒に過ごすのが好きだから。
ミキ:誰かと遊びたいと思ったら、いつでも一緒に過ごしてくれる人がいる。逆に一人の時間が欲しい時は、他のメンバー同士が一緒に過ごしてるというのもわかってる。だから、誰かが一人ぼっちになるようなことはないんだ。それっていいことだし、スゴく大事なことだと思う。特に僕とボニーは、とにかく楽しんだり、バカやったりするのが好きで。何事もあまり真剣に受け止めてないようなところがある。それに、一人がふざけ始めると、もう一人はさらにふざけてしまうんだ。時には、それがライブにとって、マイナスになることもあるかもしれないけど(笑)。でも同時に、そういうのがあるから、僕たち独特のバイブスがステージにも出てるんじゃないかな。
ボニー:私たち自身がショーなんだよね。実はこの前、ミキと私は友達になってからの13周年を祝ったばかりで。スゴく可愛くない?(笑) 他のメンバーもそうだけど、こうして長い間一緒にいられる仲間がいるのって、本当に素敵なことだと思うんだ。私たちは単なるビジネスパートナーだったことなんて一度もなくて、ずっと友達だから。その中でも、ミキと私は一番共通の趣味が多いと思っていて。だから、オフの日になると、一緒に買い物に行ったり、美味しいものを探しに行ったり、ただ散歩したり、観光したりしてしまう。ツアー中に、自分と同じようなことを楽しめて、同じようにのんびりしたいと思ってくれる人がいるのって、本当に素晴らしい。それに、ミキも言ってたように、私たちはいつも冗談を言い合ってる。何ひとつ真面目に受け止めてない(笑)。でも、それがスゴく楽しいんだよね。
―いいですね。どんな冗談を言うんですか?
ボニー:くだらないジョークばっかり。何だってネタになるから(笑)。
ミキ:特に決まったジョークがあるわけじゃないんだ。人生自体がジョークだから(笑)。最近も、新しいお気に入りのコーヒーショップを見つけたから、もうめちゃくちゃ通ってるよ。
ボニー:ミキとジョノと私は、みんな美味しいコーヒーが好きだから。新しい街に行く時は、朝起きたらまずGoogleマップを開いて、近くにあるトレンディなコーヒーショップを探すくらい(笑)。
ミキ:Ryotaも大好きだから、「もうコーヒー飲んだ?」っていつも聞いてくるんだ(笑)。
―お互いをミュージシャンとしては、どう見ていますか?
ミキ:まず、僕からボニーのことを褒めるよ。ボニーの一番スゴいところは、まず、歌詞の書き方がユニークなところだ。本当に独特でクールだし、スゴく際立ってる。正直、君みたいな書き方で歌詞を書く人って、あまり知らないんだよね。もちろん、もっとストーリー性のある歌詞を求める人もいるだろうし、比喩的な表現を好む人もいる。でも、君はそういうものを自分なりに混ぜ合わせてて、そのやり方がスゴくいいんだ。それに、君が声にハスキーな質感を加えるところもスゴくいい。
ボニー:ミキのいいところは、常に学ぶことや上達することを恐れないところだと思う。多くの人は、私自身もたまにそうなるけど、「もうこれ以上学ばなくてもいいや。今の自分で充分だし」ってなりがちだから。でもミキは、常にもっといいトーンを出そうとか、もっと演奏力を高めようとか、いろんな人から学ぼうとしてる。そういう姿勢を持ってるのは、本当にいいことだと思う。特に私たちみたいに、2秒ごとにジャンルが変わるようなバンドにとってはね。
―二人はいいコンビなんですね。
ボニー:それに、私たちがメンバーの中で一番センスがいいし。冗談、冗談(笑)。みんな最高だよ。
―前回の話にも出ましたが、スタンド・アトランティックはライブの本数も多い、本当に精力的に活動してきたバンドで、1年に250本、ハイエースで移動したこともあるんですよね。しかも、Ryotaさんは、ライブのクオリティがどんどん高くなってきて、バンドの成長に驚かされたと話していました。そして、これだけ長い間活動を続けてきた結果、今のあなたたちは大きな成功を手にしつつあります。そこで聞きたいのですが、この数年間のバンドとしての成長について、自分たちではどう感じていますか?
ボニー:私たちは昔から、「急激に大きくなるバンドにはなりたくない」という考え方を持ってきた。昔から、「早く上がれば上がるほど、落ちる時も早い」みたいな言葉があるじゃない? だから私たちはずっと、長く続けることを大切にしてきた。ゆっくりだけど、確実に強くなっていく道を選んできたから、今まさにそれが形になってきたと思う。だから、その流れを止めるつもりは、全くなくて。できるだけ長くこの活動を続けていきたいし、バンド活動だけで生活を支えられるようになりたい。だから、長く続くものをちゃんと作り上げたいと思ってる。Ryotaは、また違う意味でユニークな視点を持ってるんじゃないかな。彼は私たちがまだ本当に駆け出しの、最初の頃のツアーから見てきてくれたから。当時は赤ちゃんみたいなバンドだったし、めちゃくちゃ下手だったと思う。でも今では、私たちがもっと大きなバンドになって、大きな会場で演奏したり、ヘッドライナーとしてステージに立つところまで見てるわけだから。そういう成長をずっと見てきたRyotaが、そんな風に私たちを褒めてくれるのはスゴくうれしい。
ミキ:Ryotaが僕たちと一緒にツアーをしたのは、ちょうど1stアルバムをリリースしたばかりの頃なんだ。その僕たちが、今ではもう5枚目のアルバムまで来てる。「うわ、この人は本当に僕たちの歩みを、最初から全部見てきたんだ」って思ったよ。
ボニー:スゴいことだよね。
ミキ:バンドとしての成長について言うと……「嫉妬」って言葉はちょっと違うんだけどさ。僕たちは少しずつ階段を上ってきたわけだけど、突然ものスゴくビッグになるアーティストを目にすることが何度もあって。そうなると、いろいろ思うところがあるんだよね。「え、何これ? 何で急にこんなに売れたの?」って思うくらい、一気にビッグになるから。でもその後、あっという間に勢いがなくなってしまったりもする。その一方で、僕たちは「まだやってるぞ。まだ進んでるぞ」って感じで続いてるわけで。長く続ければ続けるほど、それが少しずつ報われてきてるような気がするんだ。だから、自分たちのやり方を貫いてきたのは本当に良かったと思ってる。例外はあるだろうけど、少なくとも僕たちにとっては、少しずつ上に進み続ける方が、自然で気持ちのいいやり方だったから。
ボニー:ミキが言う通りだと思う。着実に少しずつ上がっていく道を進む中で、突然ビッグになり、その後落ちていくようなバンドを見てると、自分たちと比べずにいるのは本当に難しい。だから正直に言えば、ここまでやってきたこと自体が、私たちの強さを証明してると思ってる。私たちは一度も目標から目をそらしてこなかった。ずっと前だけを見て進んできたし、周りのことは気にしないようにしてきた。ただ自分たちのやりたいことをやって、それに忠実であり続けてきただけで。だから、今になってそれが報われてきてるんじゃないかな。
ミキ:僕たちは怠け者だからね。走るタイプじゃない。歩くタイプなんだ。
ボニー:そうそう、私たちは歩いてる。走らない。長距離タイプだから。

Photo by Nikki Haney
生身の人間の演奏、昔の音楽へのノスタルジー
―今はスタンド・アトランティックのキャリアにとって、非常に重要なタイミングだと思うし、その中で、『GODBREATH』は大きな意味を持つアルバムになると思うんです。今回のアルバムではライブ・レコーディングというアプローチを取っていますよね。それも大きなチャレンジの一つだったと思いますが、元々、このアルバムを作ろうと思った時のアイデアやアプローチは、どのようなものでしたか?
ボニー:ライブ・レコーディングについて言うと、今って本当にたくさんのテクノロジーがあるからね。ものスゴく進んでるし、AIとかそういうものがたくさんある。ロックやオルタナティヴ・ミュージックというのは、本来は怒りだとか、「ふざけるな」みたいな反骨精神があるはずなのに、それがすべてコンピューターで作られてたりもする。だから、私たちはあえてその真逆のことをやりたかった。ある意味、コンピューターの力を取り除いて、ライブ演奏を録音する。そして基本に立ち返って、もう一度みんなに音楽というものを感じてもらう。それが私たちが本当に実現したかったことなんだと思う。結局のところ、私たちはどんなジャンルの要素を取り入れても、いろんなことに挑戦したとしても、根っこにあるのはロック・バンドだから。そこに敬意を表す一番いい方法は、実際にライブで演奏して、それを録音することじゃないかなと思って。
今のこのシーンで、同じようなことをやってるバンドは、他にはあまり知らないんだよね。だから、ちょっと野心的な挑戦だったと思うけど、実際にやり遂げられた時は、本当に気持ちが良かった。今、曲を聴いても、それはちゃんと感じ取ることができる。「ここを聴けばライブ録音だってわかる」って、具体的に指摘できるものではないけど、何となく内側で感じることはできるはず。それが今回のアルバムでは重要なことだった。というのも、今の私たちはちょうど少し原点回帰というか、昔のものをもう一度見直すようなことをやるタイミングだったから。
ミキ:ボニーと僕たちのプロデューサーであるスティーヴィ(・ナイト)が最初にそのアイデアを出した時は、正直ちょっと怖かったんだよね。でも、僕たちは運が良かったと思う。まず、実際に試してみる機会があったからね。レコーディングは完全に二つに分けたわけじゃないけど、まずLAで「Velcro」「NEXT2U」「EDGE OF VEGAS」の3曲を先に録って。その後、残りのアルバムをオーストラリアで制作した。今振り返ってスゴく良かったと思うのは、その3曲を録ってみたことで、一つは、「自分たちにもできるし、ちゃんとクールなものになる」ということがわかったこと。そしてもう一つは、その3曲を聴いた時に、実際にその感覚を味わえたこと。そこには何か違う、小さな輝きみたいなものがあったんだ。それが何なのか、はっきりと指摘することはできないけど、ライブ感はちゃんとあった。小さなミスがあったり、完璧でなかったりもするんだけど、その不完全さが逆にカッコ良く聴こえる。
僕にとっては、特に「Velcro」でそれがスゴく際立ってると思う。それが自信にもつながったし、「よし、このアルバムはいけるぞ」って思えた。そのままオーストラリアで残りの制作を一気に進めることができたし、それまで抱いてた不安も吹き飛んだ。だから、ちゃんと最後までやり切って良かったと思ってる。僕たちは何か新しいことをやると最初は怖がるんだけど、その後「とにかく、やってしまおう」ってなるんだ(笑)。そして実際にやってみると、何とかなってる。それに、今までとは違うことだったから、楽しかったんだよね。
―実際に曲を聴くと、バンドの生々しいエネルギーやバイブス、感情がしっかり捉えられていますよね。特にドラムとベースは、生身の人間が演奏しているからこそのグルーヴがあって、同じように聴こえてしまう、コンピューターで作られたビートとは明らかに違うものを感じられました。
ミキ:まあ、それが今回の出発点でもあったから。前作『WAS HERE』に「LOVE U ANYWAY」という曲があるんだけど、曲全体を一発録りしたわけではないけど、ドラムとベースだけはライブ・レコーディングしたんだ。というのも、その曲では、今言ってくれたようなドラムとベースのグルーヴや感覚を出したかったから。だからある意味、そこからすでに始まってたんだよね。スティーヴィがずっと僕たちに叩き込んでたコアな部分は、「とにかくドラムとベースをタイトにしろ」ってことだった。あとはまあ、何とかなるからって。だから、そこに気づいてくれたのはうれしいよ。僕もジョノも、そこはかなり意識してたからね。
―ライブ・レコーディングをするに当たって、何か参考にしたものや、インスピレーションになったものはありますか? 「LUCID」のMVでボニーがスリップノットのTシャツを着ていたので、そういう自分たちが聴いて育った音楽を思い出した部分もあったのかなと思って。
ボニー:あれはミキのTシャツなんだよ(笑)。
ミキ:僕はすぐになくしちゃうから(笑)。実はあれ、日本で買ったんだよ。
ボニー:確かライブ・レコーディングをやろうって決めたのは、全曲を書き終える前だったよね。だから、その時点ですでにそういう方向に意識が向いてた。それと同じ時期に、私はとにかく昔の音源を聴きたくて仕方がなかった。新しく出てきたバンドの新しいレコーディングを聴きたいとは思わなくて、その時の私が無性に求めていたのは、昔のライブ音源とか、昔のデモみたいなものだった。リンプ・ビズキットの初期のEPまで遡って聴いたくらいで。音がめちゃくちゃ悪くても、スゴくリアルで、生々しくて、「これ最高じゃん!」って思えたから。YouTubeでも、昔のフェスのBig Day Outの映像をもう一度観たり、シドニーでのブリンク182のライブ映像を観たり、KORNを観たり、システム・オブ・ア・ダウンを観たり。スリップノットもエミネムもそうだけど、若い頃にスゴくハマってたバンドの映像をいろいろ観ながら、昔のノスタルジーをもう一度味わってた。だから、今その話を出してくれたのは面白いなと思って。私自身は特に意識してたわけじゃないけど、昔ながらの音や雰囲気を無性に求めて、昔のライブ映像を観まくってたから。
ミキ:最近、わかったことが二つあって。一つは、アメリカでインタビューを受けた時にわかったことだけど、ボニーと僕は、2008年に同じスリップノットのライブを観てるんだよね。
ボニー:ヤバいね(笑)。
ミキ:それともう一つ。最近気づいたんだけど、自分たちの映像を観てると、ボニーってかなり僕の服を着てるんだよね。
ボニー:だって、ポッター(バンドのギタリスト、デイヴィッド・ポッター)がいつも私の服を着るから(笑)。
ミキ:「Hate Me (Sometimes)」の時のグリーンのジャケットとか。
ボニー:え、あれもミキの服だったの?
ミキ:そうそう。たぶんボニーはMVの撮影に行く時、いつも自分の中で「今回はこういう服を着よう」っていうイメージを持ってるんだと思う。でも、僕のスーツケースの中に何かを見つけると、「え、それ着たい!」ってなるんだ。それが結局、MVの重要な衣装になってしまう。スリップノットのTシャツは、「これ、ボニーが着たら絶対カッコいいだろうな」って思って持ってきたものだ。そこでさりげなく、「で、何着るつもりなの?」って聞くんだよね。「じゃあ、これは?」とか言って(笑)。最近は、ボニーのために必ずプラスで何か持っていくようにしてるね。それで、持っていくものが多すぎてしまうんだけど。
ボニー:まさにそれ。MVの撮影にはものスゴくたくさんの服を持っていくんだけど、結局自分では着なかったりするんだよね。いつもポッターかジョノが私の服を着るから、私は「みんな私の服を着てるのに、私は裸じゃん!」みたいになる(笑)。それで「ミキ、何か私が着られるものない? もう何も残ってないんだけど」って言うの(笑)。
―もう一つサウンドについて言うと、メンバー4人だけの演奏なのに、いろいろな表情や感情が込められていて、カラフルに聴こえたんですよね。前回ミキさんが話していた、「一番古いスタンド・アトランティックの音が入ってるけど、新しいスタンド・アトランティックの音も入っている」というのもあるし、このアルバムは全曲がバンガーになっている。ソングライティングにおいても、何か新しいアプローチはあったのですか?
ボニー:「違っていた」と言いたいところだけど、実際そんなことはなくて。これまでずっとやってきたプロセスと、基本的には同じなんだ。ただ、前作『WAS HERE』を書いた時、私は最初のソングライティングの段階で、自分から出せるものがほとんどなかった気がする。普段の曲作りでは、アコースティック・ギターで作ったアイデアとか、ボイスメモとか、そういうものをまず私が持ってきて、それをスティーヴィと一緒に発展させていく。普段の私は、すぐ作業できるアイデアのストックがたくさんあるんだけど、『WAS HERE』の時は、精神的にあまりいい状態じゃなくて、いいアイデアがほとんどなかったし、自分自身じゃないような感覚もあった。それがソングライティングにも影響して、結果的にアルバムの方向性も変わったんだと思う。
一方、『GODBREATH』での私は、「よし、完全復活! 行こう!」って感じ(笑)。アイデアが何百万個もあったし、それを持って制作に入ることができた。だからある意味、1stアルバムの『Skinny Dipping』をもう一度作ったような感覚がある。しかも、今の自分たちが持ってるすべての知識や経験があるわけだし、私自身もソングライターとしてものスゴく成長してきた。もし、1stアルバムを今の自分たちの状態で作り直せたら、どんな作品になるだろう? 私の感覚では、『GODBREATH』はちょっとそういう作品になってる。例えば、もし今の頭のまま、もう一度高校生活をやり直せるとしたら、「誰にもいじめられないわ。今なら何が起きてるのか全部わかってるし。あんたたち全員より賢いんだから」ってなるわけでしょ。
―これも前回ミキさんが話していたことですが、グッドミュージックはグッドミュージックであり、ジャンルは関係ない、というのを、このアルバムには強く感じましたね。
ボニー:ありがとう。それは私たちがずっと言ってきたことでもあるし、いつもアルバムを書く時に持ってる、私たちの基本的な考え方だから。『WAS HERE』だってそうで。曲そのものはアコースティック・ギターと歌だけでも成立するものにしたいと思ってたし、それだけでちゃんといい曲であることを目指してた。そこにどんなジャンルのアレンジを加えようが、どんなエレクトロニックな音を重ねようが、全く関係ないっていうか。メロディが良くて、そこに込められた意味が良ければ、ちゃんといい曲になると思ってるから。私たちはずっと、そういう風に曲作りに向き合ってきたわけで、新しいことを試すのも怖くないんだよね。だから、ここから先は曲をどう料理しようとも、あまり関係ないんだ。
歌詞の変化、アルバムの意味、日本への思い
―歌詞についても聞きたいのですが、「Velcro」はボニーが書いた初めてのラブソングになりますよね。でも、それだけではないような気がしていて。これまでは、自分自身の経験や感情などを元に曲を書いてきましたが、今回は、いろんなことが起きようとも、それをリアルに見つめながら、受け入れた上で書いているように思えるんです。
ボニー:ありがとう。間違いなくそうだね。今の私は、「人生って、別に悪くないんだな」っていうのを受け入れられるようになったんだと思う。だから、わざわざネガティブなことを探して、それを歌詞にしようとするんじゃなくて、「じゃあ、今、自分は実際にどう感じてるんだろう」っていうのを考えるようになった。そしたら、「けっこういい感じじゃん。じゃあ、今はそれについて書こう」と思って。私はずっと、自分がその瞬間に感じてることについて書きたいと思っていた。結局、自分自身がその曲に共感できてなかったら、他の誰がその曲に共感できるんだろうって思うから。自分のリアルなところから出てきたものでなければ、他の人に伝わるはずがないんだよね。だから『GODBREATH』は、一曲一曲のすべてと自分がものスゴく深くつながってるという感覚がある。それは、どの曲も実際に自分が経験したことを元に書いてるから。
―アルバム・タイトルの『GODBREATH』も気になりますね。最初にそのタイトルを聞いた時、何か神聖なものというか、神から与えられた力みたいなものかなと思ったんです。でも、今話してくれたことを聞くと、むしろリアルな自分自身を生きるということなのかもしれませんね。その点については、どう考えていますか?
ボニー:この言葉はいろんな捉え方ができると思うし、それが面白いところだと思ってる。そもそも、「GODBREATH」は、「これ、何かカッコいいな」と思って、私が勝手に作った言葉なんだよね。例えば、自分が今いる場所に自信を持ち、世界の頂点にいるような気分で、「自分には何だってできる」って感じていれば、「GODBREATH」っていう状態になれると思うんだ。それはポジティブで、ちゃんと地に足のついた精神状態だよね。でも、その反対側もあると思っていて。世の中には、まるですべてを知ってるかのように振る舞って、「自分は神だ」みたいに思って、何でも自分の好きなようにやってしまう人もいる。それが良いことなのか悪いことなのかはわからないけど、そういう人の場合は、ベースになってるのはエゴだよね。だから私は、「GODBREATH」には大きく二つの捉え方があると思う。エゴによって「自分は神だ」と感じてるのか。それとも、自分自身にしっかりと確信があるから、ポジティブな意味で「自分には何でもできる」と感じてるのか。そこから何をどう受け取るのかは、聴く人に委ねたいと思ってる。
―アルバムの中で個人的に好きな曲を教えてください。
ミキ:うわあ、選ぶの難しいな。コロコロ変わるんだけど、結局好きな曲と言えるのは、「Velcro」と「EDGE OF VEGAS」になるね。たぶんこの2曲が、「うん、これだ。僕たちは正しい方向に進んでる」って思えた最初の瞬間だったから。でも、「SO COOL」にもスゴく惹かれるものがあるんだ。「SO COOL」は本当にSO COOLで、あの曲の弾むような感じと楽しさが、スゴく好きなんだ。まだMVは作っていないけど(※インタビュー収録時点、現在は公開済み)、みんなで飛び跳ねたりして、めちゃくちゃふざけてるような映像が目に浮かぶんだよね。ライブでもそんな感じになりそうだし。だって、あの曲って本当に何も深刻じゃないんだよ。ただひたすら弾むようなリフがあって、どの角度から見ても、とにかく楽しい曲で。だから、今のところは「SO COOL」かな。まあ、次のインタビューではまた変わるとは思うけど(笑)。
ボニー:選ぶのは本当に難しいけど、「NEXT2U」はずっと私の心の中で特別な場所を占めてる。最初にこの曲を書いた時は、全然今とは違うスタイルで。音も全然違ってたし、聴いてみて、「うーん、これどうなんだろう」って感じだった。それで次の日、スタジオに戻ってきたら、スティーヴィが曲のインストゥルメンタルを変えてて。ボーカルは全部そのままだったけど、もっとロックっぽい曲にしてくれたんだよね。それを私たち二人で聴いたら、鳥肌が立ってしまって。「こんな感覚、久しぶりだ」ってなって。だから、「NEXT2U」は私にとっては、ちょっと特別な、自分の子供みたいな曲かな。でも、「EDGE OF VEGAS」もかなり上位に入ってる。それから、「finger」にも少しスポットライトを当てたいかな。
―「EDGE OF VEGAS」は、MVを観た時は素敵なラブソングなのかと思ったのですが、改めて歌詞を聴いてみると、そうじゃないんですよね。バンドとして長い間、一生懸命やってきたこと。苦労しながら、ずっと続けてきたこと。そこで、恐れを抱いたり、成功について考えたり。そういうことを歌っているように感じました。
ボニー:うん、今の話でほとんど正解を言ってる。実際、「EDGE OF VEGAS」は全然ラブソングじゃないんだ。今言ってくれた通り、いくつかのことが組み合わさっている感じがあって。もし、ずっとカオスな生活や人間関係に慣れてたり、何かにずっと悩んでたりして、これまで本当に安定したものを経験したことがなかったら、いざ安定したものを見つけた時に、逆にそれがスゴく怖く感じることがあるんだ。そして、実際にそれを手に入れると、今度はほとんど「要らない」って思ってしまう。それは、そういう状態に慣れてないからで。心理学の言葉で、「人間の脳は、未知の天国よりも、慣れ親しんだ地獄を選んでしまう」というのがあるんだけど、「EDGE OF VEGAS」は、まさにそれについての曲なんだと思う。せっかく何か良いものが目の前にあるのに、それを怖く感じてしまって、それを自分から遠ざけようとしてしまうんだよね。安定したものの中へ一歩踏み出すことが怖いんだ。でもそれって結局、自分の脳がネガティブなものに慣れきっていて、良いものや安定したものには慣れていないからで。
―アルバムをリリースした後の近い将来について、今はどう考えていますか?
ミキ:未来のことを考えるのって、難しい気がする。ただ、その時、その時に起こることを受け止めていく感じになるんじゃないかな。
ボニー:私たちはこれまで何度も、アルバムをリリースするたびに、「きっとこういう方向に進むだろう」とか、「この後は自分たちの生活もこうなるだろう」って考えてきたんだけど、結局、いつも予想してたのとは違うことが起きるんだよね。だから今はもう、「そんな先のことを考えるのはやめよう」ってなってる。とにかく今を生きて、そこで何が起こるのかを見てみようっていう感じ。でも、確実に言えるのは、これからたくさんツアーしていくっていうこと。それはもう間違いない。もっともっと日本にも行きたいから。
―では、日本にまた来ることについてはどう考えていますか?
ミキ:僕の場合は、子供の頃、少し日本で暮らしてたし、学校にも通ってたし、家族も日本に住んでる。僕たちは2017年からずっとフルタイムでツアーをしてるんだけど、例えば、母が僕たちのライブを初めて観たのって、2022年に最初の日本ツアーをやった時なんだよね。だから僕にとっては、日本に戻ってライブをやって、家族が観に来てくれるっていうのは、スゴくうれしいことなんだ。そういう意味でも、また日本に戻りたい。もっともっと大きな会場で、もっともっと大きなライブをやれたらいいなと思ってる。
そう言えば、前に僕たちがRyotaと一緒にRolling Stone Japanに出た時、母がスゴく喜んでくれたんだよ。でも、僕が載ったことよりも、Ryotaが載ったことの方がうれしかったみたいで(笑)。そういう意味でも、日本に行くのは特別なことなんだ。それと、海外のバンドが日本で成功してる例って、ほんのひと握りだよね。日本の音楽市場のほとんどは、国内アーティストが占めてるっていう印象だし、チャートを見てもそうだよね。だからある意味、日本は「自分たちにできるかどうか、やってみよう」っていう、面白いチャレンジにもなるんだ。
ボニー:まだ誰も踏み込んだことのない場所に挑戦する感じだよね。それに、日本は本当に楽しいし、スゴくいい場所だから。世界で一番好きな場所の一つだよ。
ミキ:じゃあ、日本の好きな曲を教えてあげてよ。
ボニー:「ビーック ビックビック ビックカメラ♪」。これが私から日本へのメッセージです(笑)。
ミキ:もっとこういうクオリティの高いものが欲しかったら、是非僕たちをチェックしてみて(笑)。

スタンド・アトランティック
5thアルバム『GODBREATH』
発売中