乳がんの症状としてよく知られている乳房の「しこり」。しかし、乳がんによる変化はそれだけではありません。乳房の皮膚のくぼみやひきつれ、乳頭・乳輪のただれ、乳頭からの分泌物などが現れることもあります。

「しこりがないから大丈夫」と自己判断せず、普段とは違う変化に気づくことが大切です。乳がんで見られることがある「しこり以外のサイン」を紹介します。

乳がんは「しこり」だけで見つかるわけではない

  • ※画像はイメージです

    ※画像はイメージです

乳がんの主な症状としてよく知られているのが、乳房のしこりです。

しかし、乳がんによって起こる変化はしこりだけではありません。国立がん研究センターでは、乳房のくぼみ、乳頭や乳輪のただれ、左右の乳房の形の非対称、乳頭からの分泌物なども乳がんで見られる症状として挙げています。

こうした変化は乳がん以外の原因でも起こりますが、普段と違う状態に気づいたら自己判断せず、乳腺科や乳腺外科などの医療機関へ相談することが大切です。

乳房のくぼみ・ひきつれ

乳がんでは、乳房の皮膚がくぼんだり、不自然に引っ張られたように見えたりすることがあります。

乳房の内部にできたがんが周囲の組織を引き込むことなどによって、皮膚がえくぼのようにへこんで見えることもあります。

また、乳房の形や皮膚の状態が左右で違って見えることもあります。

入浴や着替えなどの際に、「以前はなかったくぼみがある」「片側だけ皮膚が引きつれている」など普段とは違う変化に気づいた場合は、医療機関へ相談しましょう。

乳頭・乳輪のただれ

乳頭や乳輪に、ただれや湿疹のような変化が現れることもあります。

もちろん、こうした症状は皮膚炎など乳がん以外の原因でも起こります。一方で、乳がんの一種である「乳房Paget病」などでも、乳頭や乳輪に赤み、ただれ、かさぶたなどの皮膚症状が現れることがあります。

乳頭や乳輪のただれが続く、繰り返す、片側だけに見られるなど、気になる変化がある場合は、「単なる皮膚トラブル」と自己判断せず、乳腺科や乳腺外科などで相談しましょう。

乳頭からの分泌物

授乳中ではないのに、乳頭から分泌物が出ることがあります。

乳頭分泌は乳がん以外の良性疾患などでも起こるため、分泌物があるからといって乳がんとは限りません。

一方で、血液が混じったような分泌物が出る場合や、片側の乳頭から自然に分泌物が出る場合などには、乳房の病気が隠れていることがあります。

分泌物が続く場合や、血液が混じっている場合など、気になる変化があれば乳腺科や乳腺外科などへ相談しましょう。

乳房の痛み

乳房の痛みは、月経周期に伴うホルモンの変化をはじめ、さまざまな原因で起こる比較的よくある症状です。乳房の痛みだけで乳がんを強く疑うわけではありません。

ただし、乳がんでも痛みを伴うことはあります。

痛みが続く場合や、しこり、皮膚のくぼみ・ひきつれ、乳頭の変化、分泌物などほかの変化も伴っている場合は、医療機関へ相談してください。

「痛みがない」場合でも乳がんは否定できない

「痛くないから大丈夫」と考えるのも注意が必要です。

乳がんのしこりは、痛みを伴わないことも少なくありません。そのため、痛みの有無だけで乳がんかどうかを判断することはできません。

しこりや皮膚のくぼみ・ひきつれ、乳頭・乳輪のただれ、乳頭からの分泌物など、普段とは違う変化があれば、痛みがなくても医療機関へ相談しましょう。

一方で、こうした症状があるからといって必ず乳がんというわけでもありません。大切なのは、自分で良性・悪性を判断するのではなく、気になる変化があれば医師に相談することです。

普段から「自分の乳房」を知っておく

乳房の変化に気づくために知っておきたいのが、「ブレスト・アウェアネス」という考え方です。

「ブレスト・アウェアネス」とは?

ブレスト・アウェアネスとは、「乳房を意識する生活習慣」のことです。

厚生労働省などは、次の4つをポイントとして挙げています。

(1)自分の乳房の状態を知る
(2)乳房の変化に気をつける
(3)変化に気づいたらすぐ医師へ相談する
(4)40歳になったら2年に1回乳がん検診を受ける

ここで大切なのは、「定期的にしこりを探さなければならない」と考えることではありません。

入浴やシャワー、着替えなど日常生活の中で、自分の乳房を見たり触れたりして普段の状態を知っておくことで、「いつもと違う変化」に気づきやすくすることが目的です。

乳房のしこりだけでなく、皮膚のくぼみやひきつれ、乳頭からの分泌物、乳頭・乳輪のただれなどにも気を配りましょう。

変化に気づいたら「検診」を待たず受診

乳房に気になる変化があった場合は、次の乳がん検診まで待つ必要はありません。

そもそも「がん検診」は、症状がない人を対象に、がんを早期に発見するために行われるものです。しこりや乳房・乳頭の変化などの症状がある場合は、「検診」ではなく、乳腺科や乳腺外科などの医療機関を受診しましょう。

乳房に変化があっても、必ずしも乳がんとは限りません。しかし、「しこりがないから」「痛くないから」と自己判断せず、普段とは違う変化に気づいたら医師に相談することが大切です。

また、症状がない場合でも、40歳以上の女性は2年に1回、乳がん検診を受けることが推奨されています。

日頃から自分の乳房の状態を知る「ブレスト・アウェアネス」と、適切な乳がん検診の両方を意識しておきましょう。

乳がんの自覚症状について、乳腺専門医に聞いてみました。

乳がんというと「しこり」をイメージする方が多いですが、しこりだけではなく、普段と違う変化にも目を向けてみてください。皮膚のくぼみやひきつれ、乳頭・乳輪のただれ、血液が混じるような乳頭分泌なども、乳がんでみられることがあります。

もちろん、こうした症状の多くは乳がん以外の原因でも起こります。ただ、症状だけからご自身で原因を判断することは難しいため、「しこりがないから大丈夫」と考えず、気になる変化があれば乳腺外科を受診してください。

ブレスト・アウェアネスで大切なのは、怖いものを探すためではなく、普段の自分の乳房を知っておくことです。日常生活の中で無理なく乳房を意識し、「いつもと違う」に気づいたときには、ためらわず相談していただければと思います。

鈴木 瞳(すずき ひとみ)先生

一宮西病院 乳腺外科/部長
資格:本外科学会 外科専門医 日本乳癌学会 乳腺専門医