
今回の放送は「ボイトレディオ的 KING OF POP マイケル・ジャクソン特集」をオンエア。マイケルの楽曲「Billie Jean」「Wanna Be Startin’ Somethin’」「Man in the Mirror」の歌唱の特徴を分析しました。
(左から)YOSUKE 、しらスタ
◆ボイストレーナー視点で解き明かす「KING OF POP」の歌唱力
しらスタ:この番組「ボイトレディオ」は、ボイストレーナーの私、しらスタが、プロのボーカルテクニックの解説から、明日から試すことのできる歌い方のアドバイスまで、さまざまなボーカルにまつわるお話をお送りしていく、「聴くだけで歌が上手くなる」ボイトレのようなラジオ番組です。
YOSUKE:おしらさん、今週もよろしくお願いいたします! 今回は、なんと! ボイトレディオ的「KING OF POP」マイケル・ジャクソン特集!!
しらスタ:イエーイ! 来ました、この日が!
YOSUKE:6月25日はマイケル・ジャクソンの命日、そして、マイケルの半生を描いた伝記映画『Michael/マイケル』が日本でも公開されました。おしらさんが大のマイケル好きで、影響を受けたアーティストのひとりということで特集をやっちゃいます!
しらスタ:私ね、なぜか分からないですけれど、このマイケルの映画のジャパンプレミアのレッドカーペットを歩かせていただいて。私、自分でマイケルのことをすごく好きだと思っていたの。でも、ジャパンプレミアを歩いているメンバーやお客さんがガチすぎて。みんなマイケルの帽子、手袋とか(着用して)もうすごすぎて……ちょっと「大のマイケル好き」と言えない気持ちになっちゃっているんですけれど(笑)、頑張りたいと思います!
YOSUKE:はい、というわけで今日はそんなマイケルの話を思いっきりやっていただきたいなと思います。
しらスタ:ボイストレーナー的マイケル・ジャクソンの歌唱力の分析をちょっとできたらなと思っていて。なかなかこの角度はないと思うので、お楽しみください!
◆“ちょっと変わった人”から“神”への認識の変遷
YOSUKE:あらためてマイケル・ジャクソンというのはどんなアーティストなのか、簡単に経歴をご紹介いたします。マイケルは1958年生まれ。1966年、兄弟グループ・ジャクソン5を結成。すぐに評判が広まりレコードデビューを果たすと、その圧倒的な歌声で一気にスターダムへと駆け上がっていきます。その後、ソロアーティストの道を歩み始め、『Off The Wall』『Thriller』といったメガヒットアルバムを次々とリリース。音楽と映像表現の歴史を変えたエンターテイナーとして、2009年に亡くなった後も世界中の人に愛され、BTS、ブルーノ・マーズなど、今も多くのアーティストに影響を与えている、まさにKING OF POPでございます!
しらスタ:マイケルの偉業を列挙するだけでものすごいんですよ。私は1990年生まれなので、マイケルのキャリアの大半を知らないですよ。
YOSUKE:僕もそうです。
しらスタ:聴いているリスナーの方々は、マイケルって歌がうまいと思って(映像などを)観ていましたか?
YOSUKE:俺は思っていなかった!
しらスタ:そうだと思うんですよね。なぜならば、私が思っていなかったの。私が生まれた90年代って、マイケルはスキャンダルなどが多くて。小学生のときのおしらのマイケルの印象は変な人。お騒がせセレブの人で、ちょっと甲高い声で、変な歌い方をしている人で、「アオー!」と言っている人。まず、「アオー!」の意味が分からないじゃない。
YOSUKE:分からないね。よく考えたらね。
しらスタ:というスタートで、でも崇められているなって。すごく売れたんだろうなとは思っていたのだけれど。私が中・高でダンスをするようになって、そのときにマイケル・ジャクソンの曲を踊っていて、「これ誰の曲なんだろう?」「歌が上手すぎ」「やばい!」と思ったのがマイケル・ジャクソンだったのね。
YOSUKE:なるほどね!
しらスタ:5〜6年触れずにきて、もう1回触れたらやばすぎて。「これは神だ!」「神が音を鳴らしている」と思って。何が神かというのをちょっとずつ紐解いていきたいんですけれど。まず、「Billie Jean」という曲がございますので、聴いてみましょう。マイケル・ジャクソンで「Billie Jean」。
――ここで「Billie Jean」をオンエア
◆歌は打楽器!? ヒューマンビートボックスとしてのマイケル歌唱
しらスタ:「Billie Jean」というと、“ムーンウォーク”(※後ろ向きで月面を歩いて浮いているように見えるダンス技法)をイメージする人が多いと思いますが、今日はちょっと歌について。マイケルの歌って打楽器なんですよね。
YOSUKE:めちゃくちゃ分かります!
しらスタ:パーカッションなんです。余計な音がたくさんあるじゃないですか。例えば「♪Billie Jean is not my lover」の「Billie」の前に、「♪トゥピ、トゥビリージンイズ」って「トゥピ」と言っているのが分かりますかね?
YOSUKE:上手(笑)!
しらスタ:ありがとうございます! そう、この「ゴーストノート」とかって言うのだけれど、ベースやドラムなどで1個余計な音を入れて……。「♪ビリージンイズ」だと全然リズムが出ないのだけれど、「♪トゥビ、ビリージンイズ」……あ、で「♪Billie Jean is」の後に「イゼッ! イゼッ!」と言って、ハッと息を吸っているのだけれど、ここも音を足しているわけね。こうやって「ハッ」とか全部打楽器的にリズムを取る箇所を増やしていって……。
YOSUKE:増やしているね。
しらスタ:歌がヒューマンビートボックスなの。
YOSUKE:なるほどね! あ、分かりやすい。
しらスタ:発音とかも、「♪as she caused a scene」という歌詞があるのだけれど、普通の歌だとまずリズムから外れるのね。「♪アチコッザシーッナ!」となるじゃない。
YOSUKE:すごいね! あなたの再現もすごいわね(笑)。
しらスタ:まず「as」。ボイトレで「リズムを立てましょう」と習うときって「子音を立てましょう」と言われるのね。「as」の「ズ」を立てましょうね、と。正しいのだけれど、マイケルはそれプラス、母音を立て始めるんですよ。「as」の「ア」をアタック音として「アッ、アッ」とやって、これもリズムとして使っちゃう。で、「as」の間にちっちゃい「ッ」を入れて「アッ、アッ、アッ」。「アッズ」で3つ音になるわけ。普通の人だったら1個しかアタック音、リズムを作れないところを、3つ使っちゃう。「♪アチコッザシーッナ」で、「scene」の後に「シーッネ」。息を吐く音プラス「ッ」という音の止めるところまで入れて。だからマイケルが歌うフレーズって、人の5倍くらい打楽器音になる感じ。
YOSUKE:すごい! 歌いながらヒューマンビートボックスをしているというのがすごく分かりやすいです。
しらスタ:ありとあらゆる曲でこれがおこなわれていて。大人マイケルになって、ソロになってからずっとこのスタイル。余計な音をめちゃくちゃ入れて、打楽器としてやっているの。
YOSUKE:素人目に「あ、なんか『アッアッ』言っているなー」くらいに思っていたけれど、それが実は聴感上めちゃくちゃ重要だったりするわけだ。
しらスタ:そう! 適当に個性を出しているのではなくて、ただリズムを足して足して、打楽器の一部として一緒に演奏しているの。
YOSUKE:すごーっ!
しらスタ:というのに途中で気づいて。何回英語の発音をちゃんと書かれてもマイケルと歌が合わないのを、「なるほどね!」とめちゃくちゃ繰り返し聴いて。私の歌詞にチェックを入れて解説するやつの原点はここ! というくらい、めっちゃ苦労して、めちゃくちゃ頑張った。ありがとう、マイケル!
私はマイケルのキャリアをリアルタイムで生きていなくて知らなかったから、映画の『Michael/マイケル』は私が知らないマイケルを教えてくれるわけですよ。子ども時代から、大人になってソロとしてやっていって、父親との軋轢(あつれき)があったり。どうやってこのKING OF POPになっていったのかを知られたのはすごく良かったなと。
YOSUKE:映画を観て「あ、こんなことがあったんだ!」と感じる部分も多かったですか?
しらスタ:多かったですね!「こういう苦労をしてきたんだな」とか。時系列でマイケルがしてきたことを知られたのはすごくいいので、ぜひ皆さんにも見てほしいですね。
それでは、続いての曲にいってみましょう。「Wanna Be Startin’ Somethin’」をお聴きください。
――ここで「Wanna Be Startin’ Somethin’」をオンエア
◆超高度テクニックと“マイケル2号”が現れない理由
しらスタ:これもどれほどマイケルがリズムを取っているかに注目しながら聴いてほしいです。「I said you wanna be startin’ somethin’」という歌詞なんですけれど、「♪I said you wanna be startin’ somethin’」じゃないじゃん。「♪アッセッジュワナビ、アッセッジュワナビ」じゃん!って(笑)。
YOSUKE:ホントそうだ(笑)!
しらスタ:「I said you」が全部「アッ、セッ、ジュ」。「wanna」も「W」なのでリズムとしては機能しない音なんですけれど、全部にちっちゃい「ッ」があって、「アッ、セッ、ジュ、ワ、ナ、ビ、ス、タ、ティン、ソ、ム、ティン」と言っているんですよ。で、もう1個めちゃくちゃコアなマイケルの特殊リズム技能があって……“無声音の有声音化”というのがある。
YOSUKE:何を言っているの(笑)? 無声音というのは、まず……。
しらスタ:「T」とかの「タ、タ、タ」。「Stuck in the middle」という歌詞があるのだけれど、子音を立てろというときは、この「タ、タ」という音を立てろということなんですね。このときって声帯が鳴っていないんですよ。口だけなの。有声音というのは「ダ! ダ!」という母音と「ダ」というのが同時に開くと有声音なんですね。「Stuck in the middle」だったら「スタッ、スタッ」とSとTを立てろということなんですけれど、マイケルはTをDにしちゃうの。「スダッインザミロー」と言うの。「スダック」みたいな歌い方。
YOSUKE:すごい!
しらスタ:これは何でこうしているかという分析なんですけれど、S、Tって無声音、無声音と続いちゃうと、「スタッ」とこれしかリズムが作れないよね。でも無声、有声で行くと「スダッ! スダッ! スダッ!」、菅田将暉さんの「スダ」みたいな感じ。
YOSUKE:なるほど(笑)。
しらスタ:そこを有声音にすると、「スタック」のちっちゃい「ッ」が無声音としてまた輝くの。無声、有声、無声音の「スダックインザメロー」とできるから、Tをわざと有声音にして、ボイトレ的な指導とは逆を打ってリズムを取る。
YOSUKE:すごっ! しかも素人聴感上は別に「スタック」に聴こえるしね。
しらスタ:そう! でも「スダックインザメロー」と歌っているのね。あと私なりに分析したのだけれど、「マイケル・ジャクソン2号」が生まれない要因というのがある。誰かがこういう歌い方をしたら、2世、3世が生まれてくるわけじゃないですか。例えば、ディーバにも系列があって、マライア・キャリーがいて、ホイットニーがいて、アリアナ・グランデがいて……みたいな系列があるのだけれど、マイケルの次っていないの。なぜかと言いますと、言葉を打楽器として扱うのを極めると、マイケルと同じところに収束しちゃうのよ!
YOSUKE:そうか! 似すぎちゃうんだ。
しらスタ:極めれば極めるだけマイケルと同じことになっていっちゃうの。で、ちなみに発声もここに寄るのね。深い発声で打楽器的な歌い方って無理で。ブリトニーやジャネット・ジャクソン、ブルーノ・マーズもそうでしょ? 打楽器的に歌うには、発声がこっちになってくるのね。
YOSUKE:うわーっ!
しらスタ:なので、打楽器歌唱を極めようとするとマイケルになっちゃうから、もう次が現れませんという。
YOSUKE:めちゃくちゃ面白いじゃん! だからマイケル・ジャクソンのフォロワーはたくさんいるけれど、その打楽器要素を少し盛り込んで自分のオリジナリティにしているんだね。ちなみに、それで言うとMrs. GREEN APPLEの大森元貴さんも取り入れた瞬間があって。「ダンスホール」という楽曲の「♪いつだって大丈夫 この世界は〜」と歌っている大森さんは、完全にマイケルなんですよね。
YOSUKE:うわ、すごい! 言われてみれば!
しらスタ:「フゥー!」とか言うじゃない? 打楽器的に歌うときの発声はマイケルの発声なの。
YOSUKE:おしらさん、すごいね! 今たぶん聴いている人楽しいよ! 続いてバラードも聴いてみましょうか。1987年の『Bad』に収録されている「Man in the Mirror」をお聴きください。
――ここで「Man in the Mirror」をオンエア
◆「マイケルとシンクロするまで歌い続けた」夏休みの特訓
しらスタ:いいでしょ? この曲、すごく素敵なメッセージソングで、鏡の中の自分から変えていこうぜという社会問題を歌った曲なんですけれど、バラードでさえリズムがすごい(笑)。全歌好きはすごくいい勉強になります。
YOSUKE:なんか歌詞を言わなくても「タカタカ」で練習してもいいかもしれないなーと思うね。
しらスタ:大学時代、夏休み40日間、1日1回『Bad World Tour』のDVDを流して、マイケルと歌って踊るのを毎日やるというのをやったことがあって(笑)。毎朝起きて、寝る前とかに2時間ずっとマイケルと一緒に、全部歌ってマイケルとシンクロするまでやり続けるという過酷なことをしたことがあって。本当にリズム感が良くなった!
YOSUKE:良くなったんだ! これ、今若い子が聴いていたらやったほうがいいね!
今日はおしらさん喋りっぱなしという感じでしたけれど、とっても有益な情報をリスナーさんもいただいたと思います。マイケル・ジャクソン尽くしの放送をお届けしましたけれど、やってみていかがでしたでしょうか?
しらスタ:あと5,000個くらい喋りたいことがあるんですけれど(笑)。本当にこれをきっかけに皆さんマイケルを聴いてくれたら嬉しいなと思います!
<番組概要>
番組名:シアーミュージック presents しらスタのボイトレディオ
パーソナリティ:しらスタ、YOSUKE
放送日時:毎週火曜 21:00~21:30
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/f/voitradio/message
番組公式X:@voitradio_tfm