![清水MF嶋本悠大 [写真]=J.LEAGUE](index_images/index.jpg)
大岩剛監督の次期日本代表指揮官就任が決まり、注目度がアップしているのが、U-21日本代表の動向だ。9月16日の初戦ホンコンチャイナ(香港)戦から始まるアジア大会にタイトルを懸けて挑むことになる。
とはいえ、市原吏音、小杉啓太、石渡ネルソン、ンワディケ・ウチェ・ブライアン世雄の欧州組4人は、代表ウィーク突入後の合流となる。Jリーグ組もシーズン序盤でコンディションがまちまち。指揮官にとっては難しいマネジメントを強いられる。2028年のロサンゼルス五輪での金メダルという大目標に向かっていくために、今大会制覇は至上命題。チーム全体が奮起しなければならないだろう。
キーマンの一人になりそうなのが、嶋本悠大ではないか。横山夢樹、梅木怜らとともにJリーグでコンスタントに試合に出ている数少ない存在だからだ。加えて言うと、直近のアビスパ福岡戦で値千金の決勝ゴールをゲット。清水エスパルスのホーム初勝利の立役者になっている。そこも心強い要素と言っていい。
大津高校から2025年に清水入りした嶋本は、ルーキーイヤーの昨季J1で13試合に出場。まずまずのスタートを切ったが、2020年入団の鈴木唯人のように1年目から絶対的レギュラーをつかみ取ることはできなかった。佐藤龍之介や名和田我空のように、いち早く海外へ出ていく同世代がいる中、本人も2年目は絶対にやらなければいけないと奮起していたに違いない。
吉田孝行監督体制に移行した明治安田J1百年構想リーグでは徐々に出番を増やし、後半戦は主力の一人として位置づけられ、その勢いで新シーズンに突入した。当初は右インサイドハーフで出ていたが、福岡戦は左にポジション変更。「ボランチに負傷者が多い中、嶋本をボランチ(的な役割)に回していた。ただ、点を取るという意味では、嶋本はトップ下とかインサイドハーフをやった方がより前へのパワーが出る」と吉田監督がコメントした通り、彼のフィニッシャーとしての能力に大きな期待を寄せて、立ち位置を変えたのだという。
嶋本本人は「自分が右をやっていた時に、左の選手にどこにいてほしいかが分かっていたので、自分が左に移ってそれを出せた」と前向きに言う。確かにこの日は右ウイングに移動したジャーメイン良が縦関係の須貝英大、アンカーの弓場将輝と絡みながらチャンスを作る回数が増加。その崩しから嶋本がゴール前に飛び出す場面も多くなった。
決勝点も右サイドの攻略からだった。ジャーメインがインサイドを突破し、オ・セフンとのワンツーでゴール前へ侵入。中央に飛び出してきた嶋本にラストパスを送り、19歳の若武者は強引に右足を一閃。相手DFに当たって浮き球になったのが幸いし、そのままネットを揺らす形になったのだ。
「セフンの近くにいようというのは常に考えていること。ああやってセフンとジャメくんがコンビネーションで崩してくれて、いいとこ取りじゃないですけど、ジャメくんが自分のところを見てくれて、シュートが入った。ホームで勝ちたいというのは全選手の気持ちだったと思うし、内容が悪くてもとにかく勝利と考えていたので、勝てたのは本当に嬉しいです」と本人も満面の笑み。今季初ゴールが生まれたことをポジティブに捉えている様子だった。
ただ、他にも決められるチャンスがあったのは事実。そこは嶋本自身も反省している様子で「そういうチャンスを枠に飛ばすのもそうだし、決め切れる選手にならないといけない」と悔しさもにじませた。テクニックや戦術眼はあるものの、爆発的なスピードやドリブル突破力といった尖った個性を持たない嶋本が今後突き抜けていこうと思うなら、やはり決定力アップは必須。名古屋グランパス時代の本田圭佑とも少し重なるイメージもあるだけに、彼のようにゴールで自身の存在価値を確立させていくべきだ。
大岩ジャパンにとっても嶋本の得点力は重要な部分。今夏、いわきFCにレンタルで赴いた道脇豊がまだ1点にとどまり、同じタイミングでデンマーク2部に赴いたンワディケもまだ無得点とセンターFW陣の得点力に不安がある分、2列目を主戦場とするアタッカー陣が奮起しなければならない。アジアの対戦相手は格下ということで、徹底的に守備を固めてくることも考えられる。特にグループリーグのホンコンチャイナ、キルギス、タイはそうだろう。そこで嶋本が福岡戦で見せたような泥臭い一撃をお見舞いできれば、チームにも弾みがつくし、彼自身も波に乗れるはず。今後、ロス五輪、2030年のFIFAワールドカップへの道を切り開いていくためにも、このチャンスを逃す手はないのだ。
「アジア大会でも点を取りたいですし、帰ってきた時にはもう一段階レベルアップして、チームの勝利に貢献できるようになりたいです」と意気込んだ嶋本。今大会で自身の存在を日本中に知らしめ、ロス五輪世代のエースへと大化けしてくれれば理想的だ。それだけのポテンシャルは秘めている。
取材・文=元川悦子
【ハイライト動画】嶋本悠大の一撃で清水エスパルスが今季ホーム初勝利!