
(左から)上田晃穂さん、笹川友里
上田晃穂さんは、1997年に関西電力へ入社。2016年にはグループ会社のケイ・オプティコム(現・株式会社オプテージ)へ出向し、格安スマートフォン「mineo」の事業責任者を務めました。その後、関西電力に戻り、IT戦略室IT企画部長を経て、2024年にIT戦略室長、理事に就任。現在はAIファースト企業への変革を牽引しています。また、電力会社として初めて「DX銘柄2026」に選定されるなど、同社のデジタル変革を推進しています。
◆エネルギー分野で広がるAI活用
前回の放送では、関西電力が掲げる「AIファースト企業」やDX戦略について伺いました。今回は、関西電力グループが手掛けるサービスについて伺います。まず注目したのが、クラウド型サービス「SenaSon」です。こちらは、太陽光発電や蓄電池、EV、空調設備などの分散型エネルギーリソースをAIで最適制御し、効率的な運用をサポートするサービスで、「例えば、蓄電池って電気が多いときに貯めて、足りないときに放電すると一番お得というか、いい使い方なんですけども、それをいつ貯めるのがいいのか、いつ放出するのがいいのかをAIが計算して、それでお客さまに提示しています」と上田さんは解説します。
もう1つ紹介されたのが、グループ会社のE-Flow合同会社が手掛ける、AIを搭載した分散型サービスプラットフォーム「K-VIPs+」です。この名称は、Kanden VPP Integrated Platform systemの頭文字をとったもので、「VPP(バーチャルパワープラント)は仮想発電所の意味で、+(プラス)は最近AIがついて『もっと賢くなったよ』みたいなイメージです」と話します。
仮想発電所とは、さまざまな場所に分散している小規模電源や蓄電池、EV、節電に協力可能な電力消費を調整できる事業者などをまとめ、1つの発電所のように機能させる仕組みです。例えば、電力が不足する際には、あらかじめ協力を申し込んでいる事業者に対して、指定した時間帯の節電を依頼します。事業者が節電に協力すると、その対価としてインセンティブが支払われ、電気料金の削減につながります。
従来の電力供給は、火力発電所や原子力発電所など大規模な発電所で電気を作り、送配電網を通じて各地へ届けるという形が中心でした。一方、仮想発電所では、各地に分散した小規模電源や蓄電池、節電による需要の抑制などをまとめ、電力が不足するところへ融通します。こうして、分散した電力リソースをまとめて制御し仮想的に1個の発電所として見なすのが、この仕組みの特徴です。
◆“3つの価値”で考える関西電力の事業
関西電力の挑戦は、エネルギー分野だけにとどまりません。社会貢献型のポイントアプリ「モアクト」や、使用済みPC・スマートフォン等の再生・リユース事業を展開する「ポンデテック」など、社会課題の解決とビジネスを両立させる事業にも取り組んでいます。
上田さんは、その背景に関西電力が企業の提供価値を「3層」で捉える考え方があると言います。まず、電気やスマートフォンなど、商品やサービスそのものが持つ「機能的価値」。その上にあるのが、その提供サービスが顧客の安心や信頼、嬉しさ、楽しさ、好きなどにつながる「情緒的価値」。その上に、地球環境や社会への貢献につながる「社会的価値」です。
上田さんは、「一番上の『社会的価値』にチャレンジしていこうという思いがありまして、『モアクト』や『ポンデテック』は、特に社会的価値を提供する会社としてサービスをおこなっています」と力を込めます。
◆変革の原動力となる「健全な危機感」
AIやDXを単なるツール導入で終わらせず、社内に広く深く浸透させていくためには、人や組織そのものも変わっていく必要があります。そこで、笹川が「変革を進めていくうえで、上田さんが大切にされていたことってどんなことですか?」と質問します。
これに対し、上田さんは「人は急に変わらない」ということを前置きしたうえで、「まず、変革には息の長い取り組みが必要で、そのために一番最初に何をしたかというと、僕は危機感を共有することが、変革の一丁目一番地かなと思いました」と力を込めます。
とはいえ、単に不安や恐怖を煽るわけではなく、「このまま変わらないでいたら何の成長も発展もなく、逆に衰退して大変なことになる」「会社を変えるためになんとかしなければ」といった“健全な危機感”を一人ひとりに感じさせることが重要だといいます。さらに、上田さんは、「社長のようなトップの人から、そういう言葉を言ってもらいつつ、そのなかで『こういうビジョンを目指して変われば、その先に新たなチャンス、機会があるよ、明るい未来が待っているよ』というのを見せながら変えていく。そこがまずスタートかなと思っています」と語ります。
次のステップは、その変化を担う人を増やしていくことです。しかし、「トップダウンで危機感を煽るだけでは長続きしないし、どこかで息切れしてしまう」と上田さんは言います。ここで大切なのが、一人ひとりが危機感を自分ごと化して、心から“変わりたい”と思うこと。そのうえで、実際に手を挙げた人が全力で活躍できる環境を整えることだとし、「やりたい人が困っていれば、ITツールの環境だったり、ルール整備、経営資源の提供をしたりして、障壁を取り除きます。そうしていくと、現場からどんどん手を挙げて自発的にやってくれるんです」と声を大にします。
そして、実際に成果が出れば、表彰などで称えることも重要なアクションです。そうした成功体験が周囲にも伝わることで、「あの人のように自分もなりたい」と、新たに挑戦する人が生まれていきます。持続的な変革には、社員自身の意志が欠かせません。関西電力では現在、こうした人と組織の変化を生み出す取り組みを進めています。
最後に、笹川が「グループ全体で変革が広がっていくっていう手応えは、変革されているご自身としても、かなり感じていらっしゃるところはありますか?」と質問すると、上田さんは、「『DX銘柄2026』に選んでもらいましたが、単純に『関西電力だけが良くなったらいいか』というとそうではなくて。グループ会社はもちろん、インフラ業界全体、顧客、社会において、その価値をどんどん広げられるような取り組みをしないと、今後の日本の活性化とか成長・発展につながっていかないということはすごく意識しています。ですので、今後も取組みや成果を1つの会社に閉じるのではなくて、グループやインフラ業界、顧客、社会まで含めた広い範囲で新しい価値提供を進めることによって、DXも進化させていきたいなと思っています」と話していました。
次回9月12日(土)の放送は、株式会社りそなホールディングス執行役兼グループCDIOの川邉秀文さんをゲストにお迎えします。1,000万ダウンロードを超える「りそなグループアプリ」で、金融のデジタル変革をリードしてきたりそなグループの金融×DXが描く未来について伺います。
<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里
番組Webサイト: https://www.tfm.co.jp/podcasts/futurepix/