キリンホールディングスは9月3日、「武蔵野もみじの森保育園」で、ファンケルとともに「キリン×ファンケル 夏の健康啓発イベント」を開催した。高温・脱水条件下における免疫細胞の変化に関する細胞実験の結果が発表されたほか、体表面の温度変化を可視化する「示温シール」を貼って遊ぶ子どもたちの様子が公開された。
猛暑によって変わる日本の夏の生活
東京都武蔵野市の緑地に囲まれた自然豊かなエリアにある「武蔵野もみじの森保育園」で行われた本イベント。テーマは「夏の健康と免疫」だ。
近年、夏の暑さは厳しさを増している。2026年6~8月には、最高気温40度以上を観測した地点が全国で延べ36地点に上り、過去最多を記録。こうした環境変化を受け、暑熱順化や休憩場所・給水スポットの整備など、暑さ対策のあり方も変化している。
特に子どもは体温調節機能が十分に発達していないうえ、身長が低く、地面からの照り返しの影響を受けやすい。東京都心で気温が32.3度だった際には、地上約50cmで35度を超えた例もあるという。周囲の大人が体調の変化に注意し、規則正しい生活やこまめな水分・栄養補給を心がけることが大切だ。
キリンホールディングス ヘルスサイエンス事業本部 経営企画部 主務を務める三和聖奈氏は、「特別なことをするというより、生活の中で健康的な習慣を積み重ねていくことが、暑い夏を元気に過ごすための土台づくりとして必要になってくると思います」とまとめた。
高温・脱水条件下でのプラズマ乳酸菌の働きを細胞実験で確認
こうした厳しい夏を健康に過ごすうえで、土台となるのが体の免疫機能だ。キリングループは、「免疫は健康な生活を送るために欠かせない機能であり、人間にとっての健康の土台」と位置づけている。
キリンといえばビールだが、実は長年にわたり乳酸菌の研究を続けている。その理由は「乳酸菌はビール製造の“大敵”だったから」だという。2012年、キリングループは、免疫の司令塔であるpDC(プラズマサイトイド樹状細胞)を直接活性化する乳酸菌「L.ラクティス プラズマ」を発見したことを発表している。これが「iMUSE (イミューズ)」を初めとした同社製品で使用されている「プラズマ乳酸菌」だ。
キリンホールディングス R&D本部 キリン中央研究所の大塚早真氏は、免疫研究の最新成果について説明した。
キリン中央研究所は、夏の暑熱環境を想定した高温条件下で細胞実験を実施した。その結果、通常温度の37度で培養した場合と比べ、38.5度では免疫細胞pDCの活性が低下した一方、L.ラクティス プラズマを事前に添加することで、その低下が抑制されたという。
また、脱水状態をシミュレートした高い浸透圧条件下での細胞実験でも免疫細胞pDCの働きは低下してしまうが、こちらもプラズマ乳酸菌の添加により低下を抑えることができるそうだ。
子どもの体表面温度の変化を“見える化”
子どもの体調管理が難しい理由として、子ども自身が体調の変化をまだうまく言葉で伝えられないことや、見た目だけでは周囲が変化に気づきにくいことが挙げられる。
保育園・幼稚園でも「WBGT測定器」を利用し、暑さ指数を確認するなどの対策を進めているが、把握できるのはその場の暑熱環境であり、子ども一人ひとりの状態までは確認できない。また、体表面温度の変化を測定し、警告を発するウェアラブルデバイスなども登場しているが、子どもたち全員に配布するのはコスト的にも厳しいという現実がある。
こうした課題や、保護者、保育園・幼稚園が抱える不安に着目して、ファンケルが開発したのが「示温シール」だ。同社は、TOPPANがもつ「肌に貼っても大丈夫なフィルム」と「熱で消えるインク(示温インク)」に注目。体温を“見える化”できる「示温シール」を共同開発した。
この示温シールの仕組みは非常にシンプルだ。子どもの体表面に貼ると、体表面温度34度付近から色が変化し始め、普段は紫色のシールから徐々に汗をかいている人型のデザインが浮かび上がる。
ファンケル 経営企画本部の松田妙氏は、「色の変化によって、体温の上昇を一目で直感的に把握でき、本人だけでなく、先生方や周りの大人の方々もひと目で体調変化に気づくことができるというのが最大の特徴です」とその効果について語る。
2024年10月に小学校で行われた実証実験では、教員の85%がその効果を高く評価。また、児童からも「シールによる体温変化を確認できた」との回答が得られており、肌トラブルも確認されていないという。目下の課題は剥がれにくさの改善で、こちらは鋭意改良を進めているそうだ。今年は30万枚の提供を目標としており、現時点で約10万枚が提供済みとのこと。
「色が変わったよ!」子どもも楽しみながら体験
イベントでは、この示温シールを実際に保育園の子どもたちに貼付するデモンストレーションも実施。子どもたちは「なにそれ?」「痛くない?」と最初は警戒しつつもシールを腕に貼ってもらうと、園庭へ飛び出し、遊具などで遊び始める。そして色が変わったことに気づくと、「色が変わったよー!」と自慢げに見せに来てくれた。
武蔵野もみじの森保育園 園長の佐藤衣里氏によると、これまで同園はWBGT(暑さ指数)を確認しながら、水遊びを含む外での活動の可否を判断し、適宜体温チェックも実施してきたという。だが最近の夏は外遊びを実施するのが難しいほどの酷暑が続いており、水遊びも屋内にプールを持ち込んで実施するなどの対策を行っているそうだ。
佐藤氏は「子どもたちに夏の楽しさを体験させながら、同時に暑さ対策をどう両立させるか、試行錯誤が続いていました」と語る。そして昨年度よりファンケルと取り組みを進め、今回、示温シールを体験することになったという。
「シールがとても軽く貼りやすいため、子どもたちが違和感なく快適に遊べるという点がとても良いなと思っています。気温によって変化する色がすごく見やすく、子どもたちにもわかりやすいので、子どもたち自身が色の変化や絵柄の変化を教えたりもしてくれます。子どもたちの体温変化に素早く気づき、迅速に水分補給や木陰での休憩、室内への移動などの対策が取れるようになりました」(佐藤氏)
ファンケルの松田氏も、「手軽に、楽しみながら安全対策ができることが最大の特徴です」と笑顔で語った。
キリングループは免疫領域の研究を、ファンケルは体表面温度の変化への気づきを促す示温シールの開発を進めている。今後、こうした取り組みがさらに広がっていくことを期待したい。











