「解約したくても方法が見つからない」「月額のつもりが年間契約だった」――。ネットショッピングやサブスクリプションサービスを利用するなかで、こうした「だまされた」ような感覚を覚えたことはないでしょうか。消費者にとって不利な選択を誘導するWebサイトやアプリの仕組みは「ダークパターン」と呼ばれ、近年問題視されています。

  • 「サブスクでの申し込み時」に関する通報が76件(67.9%)で最多(出典:ダークパターン対策協会「第4回ホットライン報告レポート」)

    「サブスクでの申し込み時」に関する通報が76件(67.9%)で最多(出典:ダークパターン対策協会「第4回ホットライン報告レポート」)

ダークパターン対策協会(NDDA)は8月31日、消費者から寄せられた情報をまとめた「第4回 ダークパターン・ホットライン報告レポート」を公開しました。同レポートはこれまで3回公開されています。これまでは「サービス解約時」に関する通報の割合が増えていましたが、今回の調査対象期間は「サブスクでの申し込み時」が全体の約7割を占め、最も多くなりました。

通報は112件、半数以上が1つの動画配信サービスに集中

今回の調査対象期間は2026年5月1日から7月31日で、オンラインアンケートで寄せられた有効回答は112件でした。前回の第3回は27件だったため、通報件数は大幅に増えています。

ただし、112件のうち65件(58.0%)は特定のひとつの動画配信サービス(以下「サービスX」とする)に関するものでした。同協会では、一律に通報が増えたというより、このサービスXの契約や料金表示をめぐる通報が短期間に集中した影響が大きいと分析しています。今回の数字を理解するにあたっては、このサービスXについての通報とダークパターン被害全体の傾向を分けて考える必要がありそうです。

トラブルの中心は「解約時」から「申し込み時」へ

通報が寄せられた場面で最も多かったのは「サブスクでの申し込み時」の76件(67.9%)で、「サービス解約時」の19件(17.0%)が続きました。

「サービス解約時」の割合は、第1回が36.4%→第2回が46.9%→第3回が51.9%と上昇していましたが、第4回では、問題が多く報告された場面が「解約するとき」から「申し込むとき」へ大きく変わりました。

これには、前述のサービスXに関する通報が「申し込むとき」に集中していたことが大きく影響しています。ただし、このサービスXを除いた47件の通報でも、「サブスクでの申し込み時」が19件(40.4%)、「サービス解約時」が11件(23.4%)確認されました。契約前に重要な条件がわかりにくい問題と、契約後に解約しにくい問題の両方が、サービスXだけでなく、複数のサービスで起きていることがうかがえます。

申し込み時の事例では、月額料金や割引額が目立つように表示される一方で、年間契約であることや支払総額、中途解約時の条件などを認識しづらかったとする通報が目立ちました。無料体験の初期選択や、安価な商品の1回だけの購入のつもりだったのに、その後も料金が発生する契約へ移行する仕組みも確認されています。

最も多かったのは「重要な情報が見つけにくい」ケース

ダークパターンの手口は複数回答で計203件確認され、このうち「隠された情報」が66件(32.5%)で最も多くなりました。次いで「誤解を招く価格表示」が29件(14.3%)、「価格比較困難」が23件(11.3%)、「隠れた定期購入」が21件(10.3%)、「解約オプションの非表示・目立たなくさせる」が16件(7.9%)となっています。

  • ダークパターンの類型別では「隠された情報」が66件で最多(出典:ダークパターン対策協会「第4回ホットライン報告レポート」)

    ダークパターンの類型別では「隠された情報」が66件で最多(出典:ダークパターン対策協会「第4回ホットライン報告レポート」)

第3回のレポートでは、「申し込むのは容易だが、やめるときには複雑な手続きや追加操作が必要になる」といった解約関連の類型が中心でした。今回はこれに代わり、価格や契約期間、支払総額などの重要な情報がわかりにくいケースが上位を占めました。前述のサービスXを除いても「隠された情報」は21件と最も多く、契約条件のわかりにくさは特定サービスだけの問題ではありません。

また、同じ種類でも異なる手口が使われたケースを含めると、112件のうち56件(50.0%)で2つ以上の手法が確認されました。最も多かった組み合わせは「隠された情報」と「誤解を招く価格表示」の23件です。契約期間や支払総額などをわかりにくくする表示に、価格を正しく把握したり比較したりしにくくする表示が重なる傾向がみられました。

被害はお金だけでなく、時間やストレスにも

被害の種類を複数回答で尋ねたところ、「金銭的な被害」が91件(81.3%)で最も多く、「時間を浪費した」が65件(58.0%)、「心理的な被害」が63件(56.3%)と続きました。

  • 被害の種類では「金銭的な被害」が91件で最多。「時間を浪費した」が65件、「心理的な被害」が63件と続きました(出典:ダークパターン対策協会「第4回ホットライン報告レポート」)

    被害の種類では「金銭的な被害」が91件で最多。「時間を浪費した」が65件、「心理的な被害」が63件と続きました(出典:ダークパターン対策協会「第4回ホットライン報告レポート」)

契約内容の確認や解約方法の探索、問い合わせ、返金交渉などに時間を取られるだけでなく、混乱や不安、いらだち、諦めといった心理的な負担も生じています。協会は、ダークパターンによる影響は請求額だけでなく、問題に気づいてから解決するまでに費やす時間や心理的な負担にも広がっていると分析しています。

年間契約で2万円台の負担になるケースが目立つ

月額料金や年額料金、自動更新など、継続して料金が発生する被害では、金額を集計できた74件の被害総額が163万2,982円に上りました。平均被害額は2万2,067円で、中央値は2万6,000円でした。

  • 継続型の金銭被害は74件で、被害総額は163万2,982円。平均被害額は2万2,067円、中央値は2万6,000円(出典:ダークパターン対策協会「第4回ホットライン報告レポート」)

    継続型の金銭被害は74件で、被害総額は163万2,982円。平均被害額は2万2,067円、中央値は2万6,000円(出典:ダークパターン対策協会「第4回ホットライン報告レポート」)

第3回レポートの10件/総額13万35円と比べて件数・総額とも大幅に増えましたが、ここでもサービスXへの通報集中が強く影響しています。今回は従来みられた少額の月額課金の積み重ねに加え、年間契約による2万円台の負担が多数を占めました。

前述のとおりサービスXだけで65件の通報がありましたが、そのうち57件はサブスクリプションサービスの申し込み時、8件はサービス解約時に関するものでした。月額料金や割引額は目につきやすい一方、年間契約であることや年間の支払総額、最低契約期間、中途解約後の支払い条件などを十分に認識できなかったとする指摘が多く寄せられています。

このサービスXについて金額を集計できた59件の被害総額は145万9,552円で、継続型被害全体の総額163万2,982円の約9割にあたります。中央値は2万6,340円でした。問い合わせ窓口につながらない、返金や解約を求めても対応が得られないとする通報も複数確認されています。

サブスクリプションサービスは「月額」だけでなく契約期間と総額も表示を

今回のレポートでは、月額料金だけでなく、契約期間や契約期間中に支払う総額、中途解約時の条件などを利用者が十分に把握できないケースが繰り返し確認されました。協会も、継続型サービスでは月額料金を表示するだけでなく、契約前に契約期間や最終的な支払総額がわかるように表示することが重要だとしています。

サブスクリプションサービスを申し込む際には、大きく表示された月額料金だけを見るのではなく、契約期間や支払総額、途中で解約する場合の条件まで確認しておくことが、思わぬ負担を避けるうえで重要です。

ダークパターン対策協会は、消費者の声から被害の実態や手口を把握するため、「ダークパターン・ホットライン」を設置しています。今回の調査については、寄せられた通報をもとにした参考値であり、市場全体の傾向を直接示すものではないとしたうえで、契約前に重要な条件がわかりにくい「入口」の問題と、契約後に解約しにくい「出口」の問題がともに複数のサービスで確認されたとしています。

ダークパターン・ホットラインの詳細や情報提供方法は、同協会のWebサイトで確認できます。