個性豊かな輝く星たちをひとつにまとめる、“オリオンJAPAN”のキャプテン、金子和也。コート内では得点源として、コート外では芯の強いリーダーシップで世界一のチームを牽引する。パリ2024パラリンピックの金メダル獲得を経て、ロサンゼルス大会での連覇へ挑む現在地と覚悟に迫る。

金子 和也(かねこ・かずや)|ゴールボール
2000年埼玉県生まれ。小学1年から野球を始め、小学4年で難病を発症し弱視に。中学3年で母の勧めで参加したパラアスリート発掘事業でゴールボールと出会う。2016年に日本代表デビュー。サウスポーから繰り出す高速ボールを武器に、両ウィングを担うマルチプレーヤーとして活躍。パリ2024パラリンピックでは主将として男子日本代表を悲願の金メダルへ導いた。

チームを背負う覚悟

「日本代表としての使命を胸に、どんな状況でも全力、笑顔、そして楽しんでプレーすることを約束します」――ロサンゼルス2028パラリンピック出場権をかけた世界選手権に臨む壮行会。金子はキャプテンとしてあいさつした。2024年の4月からチームを束ねている。

金子和也(以下、金子):それまでのキャプテンがパリ大会の選考から漏れ、「そろそろ世代交代か」というところで、チームのみんなで話し合いました。投票形式で決めることになり、先輩方が「和也がいいと思うよ」って言ってくれましたし、自分も「キャプテンをやりたいな」と思っていたので立候補したんです。

実は、2022年にクラブチームの「ゴールデンスターズ」を立ち上げたときに気づいたことがあって。自分が点を取ってチームを盛り上げていこうと思える状況のほうが、圧倒的にパフォーマンスがよくなるんです。代表のキャプテンになれば、コートの内外でチームを背負うことになる。それは人間的にも競技者的にも成長できるチャンスだし、プレッシャーややることが増える中でもコンディションを整え、色んなことに深く関わっていくことこそが、自分をさらに強くしてくれるんだろうな、と思って覚悟を決めました。

小学生の野球チームで副キャプテンでしたが、当時は大きな声を出すくらいで。ただ、ゴールボールを始めてからは高校の部活や、日本代表のユースチームでもキャプテンを経験させてもらっていたので、その土台はありましたね。

2024年からゴールボール男子日本代表のキャプテンを務める

性格は、マイペース。「ガツガツしている方ではない」という。だが、いざキャプテンとしての役割に話が及ぶと、チームを引っ張る「芯の強さ」を見せる。

金子:キャプテンとしては、言葉だけじゃなくプレーで見せることも必要だなと思っています。ただ、自分の立場もありますし、何よりチームのためを思えば、言うべきことは言います。もしチーム全体にやるべきことを軽視してしまうような風潮があれば、僕がハッキリと言いますね。

例えばパリ大会の直前、落選してしまった後輩が、その悔しさからか、練習で少し散漫なプレーをしてしまったことがあったんです。追いかければ取れるボールを見送ってしまった。そのときには「そんなプレーをしちゃダメだろう」と厳しく言いました。

コート内では、誰であっても真剣に、全力でやるべきです。それが少しでも緩むのであれば、無理してやる必要はないですし、一度コートから外れればいい。ただ、やる以上はしっかりやってもらわなきゃ困りますから。

とはいえ、代表選手は本当にそれぞれが頼れる選手ばかりなので、そこまで(常に厳しく)思う必要はないんですけどね。毎回、みんな楽しそうにやってくれるので、ありがたい限りです。

私服はシャツが好きだという勝ち続けるチームに

日本代表はパリで金メダルを獲得。連覇への挑戦をスタートさせた。

金子:パリ大会の選手村では、チームメートの田口(侑治)さんと同じ部屋でした。決勝後のセレモニーを終えて部屋に戻り、もう夜中の2時頃だったと思うんですけど、田口さんから「こんなんで満足するなよ。ここからだぞ」と言われたんです。その会話が、ロサンゼルス大会での2連覇を意識した最初の瞬間でした。「分かってるよ」と返して寝ましたけどね(笑)

目標は金メダルを獲り続けること。日本の強さを証明するには、勝ち続けるしかありません。パリでの金メダルはもちろん嬉しかったですが、「やったー!」というよりは「いい大会だったな」という感覚。いま金メダルがどこにあるか、ですか? 多分、袋に入れたまま机の上の時計やネックレスと一緒にかかっています。

過去のメダルには執着がない。「先日も、遠征用のカバンからメダルが出てきてびっくりしました」

とはいえアスリートの4年は長い。パリ大会後はどのように切り替えたのか。

金子:リフレッシュする時間は大事にしています。金メダル獲得後は2週間お休みをしましたが、すぐトレーニングをしたくなり、練習を再開しました。

年間を通してナショナルトレーニングセンターに泊まり込んでいることも多いのですが、以前、部屋で自分が悶々としているのが壁から跳ね返ってくるような感覚があったんです。そんな経験があり、今は部屋にずっと閉じこもっているのではなく、チームメートを誘って周りを散歩したりするようにしています。

普段はゲームをすることが趣味です。遠征の移動中などもゲームをして競技のことを忘れるので、それが気持ちを切り替えるいい方法になっているように感じています。

仲間とは引退後の未来について話すことも。「選手育成とか、トレーナーもいいですね」

いよいよロサンゼルス大会に向かう戦いが本格化する。

金子:パラリンピックにつながる大会が始まると思うと、やはり気持ちの入り方は変わりますね。チームのボールのキレも上がっていますし、それを確実に止めるディフェンス力もついていて、状態の良さは目に見えて分かります。パリ大会で金メダルを獲得できたのは、海外勢に負けないフィジカルがあったから。だからこそ今も、パリ大会前のようなウエイトトレーニングを取り入れていますし、若手の成長も心強いです。

僕の役割としては、基本はレフトでスタートして前半の流れを作ることですが、ライトでも戦う準備はできています。もしビハインドの場面で僕がライトに入ったら、「得点を取りにいくモードに入ったんだな」と思って応援してもらえれば嬉しいですね。

自然体でありながら強い覚悟を胸に戦う若きキャプテン。連覇を狙うチームの新たな挑戦から、目が離せない。

text by Asuka Senaga
photo by Michi Murakami