「病院に行っても結局、痛み止めを出されるだけでは?」――そんなイメージから、頭痛の受診をためらっている人も少なくありません。製薬会社のファイザーが2026年に行った調査では、過去に片頭痛と診断されたにもかかわらず現在通院していない人の2割が、「市販薬で対処できると思ったから」を理由に挙げています。
一方で近年は、片頭痛治療の選択肢が大きく広がっています。前回に続き、頭痛専門医の五十嵐久佳医師に、市販薬との付き合い方や受診の目安、最新の治療について聞きました。
市販薬との付き合い方で注意すべきこと
――頭痛持ちの方の中には、市販薬を飲み続けながら対処している人も多いと思います。市販薬との付き合い方で注意すべき点はありますか。
五十嵐先生:月に2~3回市販薬を飲む程度で、1~2時間で頭痛が消失し、生活に支障がない、ということであれば、どの市販薬を選んでも特に問題はありません。
しかし、週に複数回市販薬を飲んでいる、ということであれば、単一成分のものを選ぶほうが薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛;MOH)になりにくいと考えられています。
また、「市販薬が効きます」といっても1日3回服用している人もいます。少なくとも1回服用して2時間以内に頭痛が改善しなければ、効果は不十分、ということになります。
市販薬の飲み過ぎで頭痛が悪化することも
――市販薬の使い過ぎによる影響について教えてください。
五十嵐先生:週に2日は市販薬を服用している、という人は薬物乱用頭痛の予備軍です。
薬物乱用頭痛は、薬を飲んでいるのに頭痛が続く、あるいは以前より頭痛の回数が増えるという特徴があります。
患者さんの中には、「薬を飲んでいるのに治らないから、さらに薬を飲む」という悪循環に陥っている方もいます。
薬物乱用頭痛になってしまうと生活への支障が大きくなりますし、症状の改善にも時間がかかります。そのため、市販薬を飲む回数が増えてきたら、ぜひ専門医に相談していただきたいと思います。
片頭痛治療はここ数年で大きく変わっている
――近年、片頭痛治療は変化していると聞きます。以前と比べて、現在はどのような治療選択肢が増えているのでしょうか。
五十嵐先生:片頭痛の痛みを止める薬(急性期治療薬)としては20年前にトリプタンが出ました。今でも片頭痛の急性期治療薬としては主流となる薬剤ですが、血管収縮作用があるため、狭心症や脳梗塞など血管の病気がある人には使うことができず、副作用で使いにくいという患者さんもいます。
2022年にラスミジタン、2025年にリメゲパントといった新しい急性期治療薬が出て、いずれも血管収縮作用がないため、狭心症をお持ちの患者さんでも使用できるようになりました。
また、予防薬(発症抑制薬)としては2021年にCGRP関連抗体薬、2025年12月以降、CGRP受容体拮抗薬であるリメゲパント、アトゲパントが使用できるようになっています。
これらの薬剤は片頭痛の病態を狙って開発された薬剤であり、従来の予防薬で効果が乏しかった患者さんにも効果を発揮することが多いです。
「病院に行っても痛み止めだけ」ではない
――「病院に行っても痛み止めを出されるだけ」と思っている方もいますが、実際にはどのような治療やサポートが受けられるのでしょうか。
五十嵐先生:頭痛で受診なさる患者さんの多くは市販薬の効果が乏しい方たちです。
まず、「あなたを悩ませている頭痛はどのような頭痛か」を診断し、生活指導や、その人に合った薬剤を提案し、患者さんの意向を確認しながら治療を選択していきます。
頭痛日数が多い場合や強い頭痛で困っている場合には、痛いときに飲む薬剤だけではなく、頭痛そのものを起こしにくくする予防薬を処方します。
予防薬を使用することにより、頭痛頻度が減少するだけでなく、頭痛発作そのものが軽くなり、急性期治療薬の効果が高まることも期待できます。
月3~4日以上ならば受診のサイン
――どのようなタイミングになったら、頭痛外来などへの受診を検討した方がよいでしょうか。
五十嵐先生:生活に影響がある頭痛が月に3~4日以上ある、市販薬の効果が乏しい、週に2日は市販薬を服用している、頭痛頻度が少なくても強い頭痛で寝込む、生活に支障をきたしている、頭痛がいつ起こるか不安――こうした場合は頭痛外来を受診していただくことをお勧めします。
また、そろそろ妊娠を考えているけれど、片頭痛が起こった時にどうすればよいか心配な方も専門医を受診していただきたいです。
どこを受診してよいのかわからないという人も少なくありません。その場合は日本頭痛学会のホームページにアクセスしていただければ、全国の頭痛専門医のリストが掲載されています(認定頭痛専門医一覧│日本頭痛学会)。
――最後に、頭痛を我慢しながら生活している読者に向けてメッセージをお願いします。
五十嵐先生:“市販薬で何とかなる”は決して、十分な解決にはなっていません。片頭痛は“ただの頭痛”ではなく、コントロールできる神経疾患です。
本来のあなたの生活を取り戻すために、少しでもお困りなら是非専門医を受診なさってください。
