この企業動向ニュースのまとめ

・H.U.グループホールディングスが決算・中期経営計画の説明会を開催
・連結業績は、売上高が1.8%増/営業利益が81.0%増の増収増益
・中期経営計画では「世界のH.U.グループ」を目指す姿勢を表明

2026年5月14日、H.U.グループホールディングスの2025年度(2026年3月期)決算および中期経営計画「H.U.2030」2.0の説明会が、東京・日本橋の会場とオンラインのハイブリッドで開催された。本記事ではその模様をレポートする。

  • 代表執行役社長兼グループCEOの石川剛生氏

    説明会に臨む、代表執行役社長兼グループCEOの石川剛生氏

前年比増収増益で注力領域が堅調に成長

まずは取締役 執行役常務の北村直樹氏が登壇し、2025年度決算の概要を説明した。連結の業績では、売上高が前年比1.8%増の2474億円、EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)が同13.5%増の265億円、営業利益が同81.0%増の48億円、当期純利益が同147%増の68億円となり、いずれも対前年で増収増益となった。当期純利益に関しては、資産売却による増益があったことで、ROE(自己資本利益率)は5.0%まで改善(前年は2.0%)した。

  • 2025年度連結決算の概要

    2025年度連結決算の概要

セグメント別の業績について北村氏は「各セグメントで注力すべき領域が堅調に成長しています」と語り、続いてセグメント別の決算を解説した。

まず、高品質の充実した検査サービスを医療機関に提供する「検査・関連サービス事業」(LTS)は遺伝子関連検査と特殊検査が堅調に伸長するとともに、価格適正化をはじめとした限界利益の増加と固定費削減施策によって増収増益となり、通年で黒字化を達成。連結の売上高と営業利益の成長を牽引した。

  • 取締役 執行役常務の北村直樹氏

    説明を行う取締役 執行役常務の北村直樹氏

革新性の高い臨床検査薬を提供する「臨床検査薬事業」(IVD)はCDMO(受託開発製造)の抗体販売が中国市場の影響を受けて落ち込み、製品ミックスの悪化が業績に大きく影響した一方、NEURO(神経疾患)領域は欧米を中心に成長を続けている。また、COVID関連の検査減少とM&A関連費用の発生で、売上高は前年比ほぼ横ばいであったものの20%の減益となり、連結の営業利益減益に影響した。

ワンストップのサポートで病院および福祉・介護の効率運営を支援する「ヘルスケア関連サービス事業」(HS)は、滅菌・手術関連事業の堅調な成長が福祉用具事業の連結除外の影響を吸収し、売上高、営業利益ともに前年とほぼ同様となった。

  • セグメント別の決算概要

    セグメント別の決算概要

この後、北村氏はLTS/IVD/HSの各セグメントごとにより詳細に説明。最後に、営業キャッシュフローが前年比横ばいである一方、フリーキャッシュフローは大きく増加していること、またフリーキャッシュフロー増加により前年3月末に458億円だった純有利子負債残高が262億円と200億円近く減少したことを示し、決算の説明を終えた。

前年発表の中期経営計画をアップデートしグローバルな発展を目指す

続いて代表執行役社長兼グループCEOの石川剛生氏が登壇し、中期経営計画「H.U.2030」2.0について説明を行った。

「H.U.2030」2.0は、“2.0”と付いていることからわかるように、2025年5月に発表した中期経営計画のアップデート、すなわち更新版という位置付けになる。石川氏は“「世界のH.U.グループ」への道”というサブタイトルを冠して説明を始めた。

まず、更新版という形をとった背景として次の3つを提示した。

「1つ目は、グループとして何を目指すのか、技術、グローバル、社会貢献の点からしっかり定義すること。2つ目は、中期経営計画の目標値は変えず、その目標値をいかに達成するか、確度をどう高めるか。そのため事業にフォーカスし、どの領域、どの分野に注力して結果を出すのかを明確にすること。そして3つ目は、各事業でシーズになる具体的製品等にこの数年で多くの進展があったこと。そこでそれぞれの事業に関する説明も含め、アップデートした中期経営計画を説明したいと考えています」

次に石川氏は、副題に付けた「世界のH.U.グループ」という表現について、目指す姿の解説を行った。

「グローバルのヘルスケア市場には、診断薬だけでなく、製薬メーカー、診断薬メーカー、ライフサイエンス、医療機器などさまざまなセグメントが存在します。トレンドとしては、多くのグループが治療薬と診断薬の密接な連携を始めています。また研究から臨床へのつながりも、とりわけアルツハイマー病やNEUROの領域で密になっています。加えてAIやITを活用した医療機器の進歩により、非常に多くの技術革新が起きています。
そうした中で当社グループがどういう役割、位置付けとなるのか。それについては、我々の強みであるユニークな技術や製品開発力を活用し、富士レビオやH.U.グループ中央研究所で新たに自社開発したものを世界に広げること、世界でパートナーシップを通じてさまざまなメーカーと共に市場をつくっていくこと、同時に世界から日本にも、エスアールエルや日本ステリが市場に有するナンバーワンのシェアや顧客基盤のカバレッジを活用し、イノベーションを日本に積極導入していくこと。それらがグループの最大の特徴であり、強みであり、グローバルヘルスケアの中で我々が果たすべき役割です。

  • 「世界のH.U.グループ」として目指す姿

    「世界のH.U.グループ」として目指す姿

したがって、グローバルなヘルスケア企業との真のパートナーシップを結ぶことにより、グローバル市場を舞台に成長を遂げるというところがポイントだと考えています」

グループとして果たすべき使命と成長に向けたポイント

石川氏は同社が果たすべき使命を「ヘルスケアを通じて新しい価値を創造し、人々の健康と医療の未来に貢献する」ことだとして、3つのポイントを挙げた。

  • H.U.グループが果たすべき使命

    H.U.グループが果たすべき使命

「まず1点目は、『検査を止めない』『手術を止めない』こと。前者は診断薬や自社臨床検査の事業について、後者は滅菌や手術支援の事業についてですが、医療インフラとしての当社の役割に対するコミットメントは、安定供給、品質第一、お客様からの信頼であると考えています。
2点目はイノベーションです。イノベーションを通じ、日本および世界に新しい価値を創造すること。当社はサイエンス企業としてITも含む技術を重視し、臨床的価値の高いオンリーワン、ナンバーワンのものを広げていくことを大事にしています。
そして3点目は、開発したものをいかに早く市場に出していくか、また新しいものをいかに早く日本に導入するか。これは競争ではなく、協業、パートナーシップを重視した戦略に基づき、『世界のH.U.グループ』を実現したいと考えています」

石川氏は続けて、同社グループを取り巻く現在の環境と足元の状況について語った。

「過去8年の業績の推移を見ると、COVIDの影響を受けた期間もありましたが、現在の論点は各事業が収益力を高め、中期経営計画に沿った成長が本当にできるのか、だと思います。LTS事業では東京都あきる野市の新たな医療検査拠点に大型投資を行い、新システムを導入しました。それを活用し、いかに収益につなげるか、回復・成長を遂げるかがポイントです。IVD事業では市場の変化の中でCDMOでどう成長するか、どこまで成長できるのか。またNEUROについてもどこまで成長できるか、その次に何があるのかが問われています。HS事業では、非常に安定した事業ではあるものの、成長できるのかがポイントになります。
さらに、国内外の市場環境等の変化が各事業にどのような影響を与えるか。そして、グループを形成する意義やシナジー、一体化の効果は何か。こうした多様な論点をまとめ、それに対して執行役の中で議論したものを、今回の“2.0”として発表しています」

更新版中期経営計画“2.0”を構成する5つの骨子

2025年発表の「H.U.2030」の骨子は「一体化経営のさらなる深化」「高収益体質への転換」「キャピタルアロケーションの最適化と資本効率の向上」の3つ。石川氏は“2.0”の骨子として、次の5つを示した。

1つ目は「一体化経営という表現」をやめ、「“疾患”を軸としたグループ戦略を設定する」となった。これは機能の一体化ではなく、戦略を通じた事業間連携によるグループとしての価値最大化に着目したものだ。

2つ目は「高収益体質への転換」から「各事業は収益力の強化に専念する」に変わった。各事業でコアに注力し、それを成長させる最適なリソース配分の実施がポイントだ。 3つ目は「キャピタルアロケーションの最適化と資本効率の向上」のまま変えず、新たに4つ目として「人的資本の強化:エンゲージメントの向上」、5つ目として「ガバナンスの強化:社外取締役とワンチームで価値を実現する」を掲げた。数値目標は前出のように、2029年度の目標は変更せず、その達成に向けて取り組んでいくという考えを示した。

  • 中期経営計画「H.U.2030」2.0の骨子

    更新版の中期経営計画「H.U.2030」2.0の骨子

5つの骨子の中で、新しく掲げた1つ目の“疾患”を軸とした考え方について、石川氏はより深く言及した。

「従来は事業ごとに説明を行ってきましたが、グループ全体の2025年度売上高(2474億円)のうち、34%(840億円)がオンコロジー(がん)領域の製品・サービスの売上に関わっています。そして4%(100億円)がNEURO領域、感染症領域が10%(245億円)となっています。これまで事業ごとに見てきたものに横串を刺し、疾患別で横断的に見るとこのような内訳になります。
一方、世界全体で見ると、オンコロジーや臨床の患者数は大きく増加しています。こういった社会問題における検査や治療の需要に対し、我々は何をするのか、グループとして考えていくことが重要になります」

  • “疾患別”戦略の概要

    “疾患別”戦略の概要

例えばオンコロジーでは同社グループが、がんの診断や治療を受ける患者が経ていくスクリーニング、確定診断、治療方針の決定、治療、モニタリングといった「ペイシェントジャーニー」に関わっている。

「現在、富士レビオがCDMOで提供している腫瘍マーカーがスクリーニングとモニタリングで国内外で使われており、推計値としては世界の約8割に供給しています。これは極めて強い事業であり、今後も伸びていくと考えています。一方、日本においてはエスアールエルの事業で、遺伝子関係の検査やがんパネル検査、病理検査、染色体検査など、がん治療における重要な検査を、大病院を中心に非常に高いシェアで供給しています。また治療についても滅菌・手術支援で日本ステリが国内ナンバーワンのシェアを有し、手術において不可欠なものを供給しています。これらは社会的に求められる業務であり、事業としてもさらに成長すると考えています」

石川氏は同様にNEUROについても「アルツハイマー病に関してペイシェントジャーニーを踏まえた早期診断、診断、治療、モニタリング、予後があります。診断のところではマーカーを供給し、治療においても治療薬が製薬メーカーを通じて世界中に広まっています。製薬メーカーや診断薬メーカーと共に、NEUROの領域をペイシェントジャーニーに沿って世界で広げていくことを目指していきます」と説明したうえで、次のように語った。

「これまでは事業会社の軸で見てきました。今後も事業会社ごとの戦略を含めて取り組んでいきますが、横串を刺し、グループとして世界でも市場が広がっていくオンコロジーやNEURO、さらには感染症、その他の領域についても取り組み、ペイシェントジャーニーにおけるアンメットニーズ(まだ十分に満たされていない課題)をどう解決するか、そのために各事業会社でどういった製品・サービスが必要なのかを見極め、進めていきたいと思います。また、将来的にはデータの利活用を含めた新たな価値も創出したいと考えています」

  • NEURO領域の戦略

    NEURO領域の戦略

事業会社ごとの成長戦略・注力領域

中期経営計画に関する説明の後半では、事業会社ごとの成長戦略と注力領域についても紹介された。LTS事業では特殊検査や先端検査領域での差別化、日本の病院市場での検体数増加、その中でのがん遺伝子、遺伝子病理、染色体、がん遺伝子パネルを含めたラインナップ強化を挙げた。またNEUROの領域では、富士レビオや製薬企業との連携を示した。そしてこれらを実現するうえで、「あきる野の新施設をどのように活用し、限界利益の向上とともにエスアールエルの差別化を強化していくか」がポイントになるとの認識を示した。

  • LTS事業の注力領域

    LTS事業の注力領域

IVD事業に関しては、技術的に優位性のある新しい項目を開発し、それをパートナーシップを通じてグローバルに供給していくとし、CDMOについても確立したビジネスモデルとして、ユニークな項目を世界の診断薬メーカーに供給することで市場を拡大していきたいと石川氏。そのうえで、次の大きなステップとしてインド市場を挙げ、強いパートナーシップを活かして拡大していく考えを示した。併せて、NEUROに関するラインナップ強化、「ルミパルス」の拡大などに取り組むとした。

  • IVD事業の注力領域

    IVD事業の注力領域

そしてHS事業については「日本の大病院における手術の支援という観点から、高付加価値業務へのシフトを通じて事業をいかに拡大するかがポイントになり、手術室周辺の高付加価値業務へのサービス範囲高度化・拡大、規制緩和を受けた院外滅菌などにより、医療機関へのサービス強化を進めたい」と説明。この滅菌・手術関連事業に加えて、訪問看護事業も注力領域として挙げた。

  • HS事業の注力領域

    HS事業の注力領域

財務・人的資本・ガバナンスについて

財務戦略について、キャピタルアロケーションの考え方は変更なく、継続的かつ安定的な累進配当の実施、自社株買いの積極的かつ機動的な実施、自社株買いに加えた戦略投資としてM&Aや成長投資を進めると語った。株主還元についても、累進配当と自社株買いを引き続き実施するとの方針を示した。

また人的資本の強化に関しては、「従業員が長く働きたいと思える会社の実現を目指します。経営から従業員に対する積極的な発信やコミュニケーションを行いながらエンゲージメントを高め、人的資本を強化していきたいと考えています」と語った。さらにガバナンスの強化については、執行側と社外取締役がワンチームとなって企業価値向上を実現するため、取締役会は経営を監督する場から経営を共に強くする場にするとし、加えて持続的な価値創造と稼ぐ力の強化をワンチームで実現していきたいと話した。

最後に、2026年度(2027年3月期)の業績見通しとして、連結売上高は前年比3.5%増の2560億円、EBITDAは同9.3%増の290億円、営業利益は同88%増の90億円、さらに当期純利益は50億円、連結のROICは3.0%、ROEは3.7%、連結の営業キャッシュフローは230億円という目標値を掲げた。

  • 石川剛生氏、北村直樹氏