
5月16日と17日に開催された「World Para Athletics公認 2026ジャパンパラ陸上競技大会」。真新しいトラックで開催され、世界新記録1、アジア新記録4、日本新記録31、大会新記録67と数多くの記録が誕生した。
会場となった名古屋市瑞穂公園陸上競技場(パロマ瑞穂スタジアム)は、今秋に開催されるアジア・アジアパラ競技大会のメイン会場として使用されることになっており、4月に建て替え工事が完了し、お披露目されたばかり。パラ陸上競技のトップ選手たちは、スタジアムの導線や観客席の雰囲気を確かめながら10月のアジアパラに向けて気持ちを高めた。

大会初日は最高気温29度、2日目は最高気温31.5度。強い日差しが照りつける中で行われた今大会、義足のスプリンター大島健吾(T64)は、硬いタータンを味方につけ、義足の反発力を推進力に変えた。

初日に行われた100mでは、11秒11のアジア新記録をマーク。その力強い走りは、10秒台の手ごたえも感じさせた。
パリ2024パラリンピックでケガをし、その後、競技会からは離れフィジカルの強化に励んでいたという。体幹を中心に鍛えて体重も75㎏から80㎏にアップ。翌日の200mでは、22秒76の記録をたたき出し、2日連続のアジア新記録を樹立した。
愛知県瀬戸市出身で名院大AC所属。アジアパラでは「地元の大会。圧倒的な力で優勝したい」と語る大島は、地元の競技場で晴れやかな表情を見せた。
東海エリアゆかりの選手たちに注目地元企業・トヨタ自動車所属の石山大輝 (T12)は、今シーズンから挑戦している400mで51秒44の日本新記録で優勝を果たした。パリパラリンピックでは走り幅跳びで出場したが、ロサンゼルス大会では走り幅跳びが採用されず、現在は400mと100mに取り組んでいる。アジアパラは「出ることではなく勝つことが目標」。その言葉の裏にあるプレッシャーをにじませながらも、今回の日本新記録は石山にとって大きな弾みとなったはずだ。

同じ所属企業で、岐阜県各務原市出身の石田駆(T46)も連日好記録を出した。100mは向かい風ながら自身が持つ日本記録に迫る10秒89をマークして笑顔を見せると、翌日の200mでは21秒92の日本新記録を樹立した。
「会場の雰囲気がよかったし、(新しい)タータンと相性がよかった」
同会場は高校時代にインターハイ予選で自己ベストをたたき出した思い出のスタジアムだと振り返る。「戻ってきたぞ」と石田。出場を逃したパリ大会の悔しさを胸に、本番ではこのゆかりの地で、ひときわ大きな歓声を浴びて輝いてほしい。

中京大出身でパリパラリンピックの男子400m銀メダリスト・福永凌太(T13)は、走り幅跳び、200mに出場。「第2の故郷」という愛知県を舞台に行われるアジアパラではどんなパフォーマンスを見せるか。

三重県津市出身の大腿義足のロングジャンパー前川楓 (T63)は、100mと走り幅跳びに出場して2種目で2位。競技歴10年を超え、記録の伸び悩みに直面しているといい「今年は耐える年」と位置付ける。そんな中でもロサンゼルス大会を見据え、練習拠点を大阪から「日本で一番環境がいい」という鹿児島に移した。キャリアを重ねた今、「人と比べないようになった。過去の自分より上に行きたい」と前を向いた。

三重県尾鷲市出身の井谷俊介 (T64)は、パリパラリンピックの男子200mで7位入賞したスプリンターだが、現在は走り幅跳びに注力している。今大会では6回目の跳躍で6m42の自己ベストをマークし、笑顔を見せた。結果は田巻佑真に次ぐ2位となった。

大学時代に日本福祉大で競技を始め、現在はトヨタ自動車に所属する高橋峻也(F46)は、やり投げの日本記録保持者。今大会では技術的にうまくかみ合わない部分がありながらも、58m68のシーズンベストをマークして優勝を果たした。
会場となったスタジアムは、大学時代に初めてやり投げの試合に出場した思い出の地。やり投げ種目はアジア圏にインドという世界の強豪が立ちはだかるが、本番のアジアパラでは、自身の持つ日本記録(61m24)の更新と、その先にあるメダル獲得を見据えている。

もちろん東海ゆかりの選手以外も活躍した。吉田彩乃(T34)が100mで18秒36、400mで1分05秒63、800mで2分14秒33で優勝。3種目で小野寺萌恵の持つ日本記録を塗り替えガッツポーズを見せた。吉田は見事3冠を達成。新たなエースとしての存在感を強く印象づけた。

パリパラリンピックで4位だった400m種目がロサンゼルス大会の種目から外れた松本武尊(T36)が走り幅跳びに挑戦し、日本新記録を樹立するなどのニュースは、明るい材料となった。
text by TEAM A
photo by X-1