
リンゴ・スター(Ringo Starr)によるカントリー・アルバム第2弾『Long Long Road』が、本日4月24日にリリースされた。昨年の前作『Look Up』に続き、T・ボーン・バーネットがプロデュースと多くの楽曲提供を手がけた全10曲を収録。85歳の人間が作ったとは思えない充実作は、どのようにして生まれたのか?
この狂った世界にあって、一つだけ変わらないものがあると知るのは救いだ。それは、リンゴ・スターがこの惑星で最もチャーミングな男であり続けているということ。このザ・ビートルズのレジェンドは、音楽界で最も普遍的に愛されている人物かもしれないが、85歳になった今もなお、その内側にはさらなる歌が溢れている。彼は快活に笑いながらこう言った。「4歳の孫娘が言うんだ。『Siri、リンゴをかけて!』ってね」
リンゴの新作カントリー・アルバム『Long Long Road』は、絶賛されたナッシュビルでのコラボレーション作『Look Up』から1年後、プロデューサーのT・ボーン・バーネットと共に作り上げられた。「カントリー・ミュージックを愛しているから、難しいことではなかったよ」とリンゴは語る。そこには友人の助け(little help from his friends)もある。モリー・タトルやビリー・ストリングスといった注目の若手先鋭アーティストから、シェリル・クロウ、セイント・ヴィンセントといったスターたちまでもが名を連ねているのだ。
「イエロー・サブマリン」を歌ってから60年が経過した今も、リンゴの活力は衰えを知らず、もはや驚異的ですらある。近年のステージでの彼は、常に動き回るつむじ風のようだ。そこで一つの疑問が浮かぶ。リンゴ自身、自分が今でもロック界最高のダンサーであると認めるだろうか?「ああ、その通りだ」と彼は言う。「僕はとにかく、じっとしていられないタチなんだ」
彼は真の意味でインスピレーションを与えてくれる存在だ。椅子に座ってやり過ごすこともできるはずのショーの間中、彼はドラムを叩き続けるか、体を揺らしている。「(椅子に座るのは)最高だろうね」と彼は笑う。「ドラムスツールはアームチェアみたいなものさ。『よーし、レッツゴォォォォ』ってね。いやいや、背筋を伸ばして、のめり込まなくちゃいけないんだ」
『Long Long Road』は、リンゴが相変わらず「のめり込んでいる」ことを証明している。彼は昨年、1970年のソロの名盤『Beaucoups of Blues(バラの香りを)』以来となるカントリー・アルバム『Look Up』で皆を驚かせた。そこで最先端のミュージシャンたちと共に、正真正銘「今」の音を鳴らすナッシュビル・アルバムを作り上げたことで、彼は活力を得たようだ。「それがリンゴの本質なんだ」とバーネットは語る。「彼は長い間、人々を呼び集める招集役(convener)にして、共同作業者(collaborator)であり続けてきたんだ」
『Long Long Road』で、彼はモリー・タトル、ビリー・ストリングス、サラ・ジャローズといった新世代の型破りなプレイヤーたちと共演している。「最高だと思わないかい?」とリンゴは言う。「モーリーは本当に素晴らしかったし、ビリー・ストリングスも驚くべき才能だ。ナッシュビルに行った時、本当に温かく迎え入れてもらったよ。とにかく素晴らしい体験だったから、そのままもう一枚作ることにしたんだ」
シングル「Choose Love」は、彼の2005年のアルバムの表題曲をカントリー調にリメイクしたものだ。その中でリンゴは〈『The Long And Winding Road』(長く曲がりくねった道のり)は、単なる歌じゃない〉という一節を歌っている。このラインは、今も彼の中で響き続けている。「長い、長い道のりだよ(Its a long, long road)、ブラザー」と彼は言う。「リヴァプールを離れ、ロンドンに住み、ニューヨークに辿り着き、ロサンゼルスへやってきた。それは僕の人生そのものなんだ。だからこのアルバムを『Long Long Road』と呼びたかった。そこに『Its a...(それは…)』と付けようとは思わなかった。長さを限定してしまうからね。ただ『Long Long Road』とすれば、それは永遠に続いていくんだ」
リンゴは取材中も、あの有名な知性と陽気さ、そして壁を震わせるほどの笑い声を振りまいている。(映画『ハード・デイズ・ナイト』でジョン・レノンが彼に言った通りだ、「お前は窓をガタガタ言わせる奴だな、息子よ」)。この日の彼のZoom画面は、ヤシの木が並ぶトロピカルなビーチの背景になっていた。「これを設定しておくのが好きなんだ」と彼は言う。「冬用の背景だよ。夏になったら、また別のものにするさ」。彼は「朝起きて、自分のやるべきことをやり、自分のやるべきことをやるだけさ」といった、いかにもリンゴらしい哲学的な格言をさらりと口にする。
リンゴ・スターのカントリー・ルネサンス
昨年、彼はエミルー・ハリスの誘いを受け、グランド・オール・オプリ(ナッシュビルにあるカントリーの聖地)に初出演した。そこで披露したのは、映画『HELP! 四人はアイドル』でも彼が歌ったバック・オーウェンズのクラシック「Act Naturally」だ。また、ライマン公会堂で特別番組『Ringo & Friends』を収録し、ブレンダ・リーやロドニー・クロウエル、そして「Don't Pass Me By」を歌ったジャック・ホワイトといったスターたちと共演した(「Octopuss Garden」の役目はモリー・タトルが務めた)。このライマンの特番には、同じく「長く曲がりくねった道のり」をよく知る旧友、ポール・マッカートニーからのトリビュートも寄せられた。ポールはこう語っている。「ザ・ビートルズの中で、最初に僕たちをカントリー・ミュージックに夢中にさせたのは彼だったんだ」
グランド・オール・オプリにて、モリー・タトルらと共演したリンゴ・スター
新作アルバムは、彼のナッシュビル・ルネサンスを継続させている。「正しい一歩を踏み出し、正しい角を曲がったと思いたいね」と彼は言う。「きっかけは、オリヴィア・ハリスン(ジョージ・ハリスンの未亡人)がジョージに捧げた詩集(『Came the Lightning』)の朗読会を聴きに行ったことだった。そこには50人ほどが集まっていて、その一人がT・ボーンだった。70年代から何度も出くわしている仲さ」。彼はバーネットに曲を書いてほしいと頼んだが、期待以上のものが返ってきた。「彼がカントリーのトラックを送ってきたんだ。僕は『よし、それじゃあカントリーのEPでも作るか?』と言った。でも、彼がこちらへやって来て一緒に座っているうちに、彼にアルバムをプロデュースしてもらえるんじゃないかと思ったんだ。僕が『それで、曲はいくつあるんだ?』と聞くと、彼はポケットの中に9曲も持っていたのさ」
「ついやってしまうんだ」とバーネットは認める。「彼に曲を書いてほしいと頼まれて、結果はこの通りさ。彼のために、長くて良い曲を書いたよ」。前作『Look Up』の成功を経て、曲は次々と溢れ出してきた。「彼の声のために、彼の魂のために曲を書くのはとてつもなく楽しい」とバーネットは語る。「リンゴは世界で最も認識しやすい歌声の一人だ。だから、一言書くたびに彼の声が頭の中で鳴り響く。そうなれば、あとはとても簡単だ。ただ追いかけていけばいいガイドレールのようなものが、道となって続いていくんだから」
リンゴの魂には、常にカントリーが宿っていた。「まあ、こんな風に喋るのは、自分の育った場所のせいだね」と、彼はリヴァプール訛りを強調して言う。「これこそ、めちゃくちゃカントリー(田舎臭い)だろ? でもリヴァプールで育った僕たちは恵まれていたんだ。あそこは港町だったからね。船がアメリカへ行って戻ってくると、カントリーやブルースのレコードをどっさり積んでいた。当時のリヴァプールは、今のアメリカで起きていることの震源地みたいな場所だったのさ。船乗りたちがレコードを持ち込んでは、3日もすれば金を使い果たしてレコードを売り払う。そんな時代だったんだ」
リンゴ・スターとT・ボーン・バーネット(Photo by Scott Ritchie)
1970年にザ・ビートルズが解散した際、リンゴはカントリー・アルバム『Beaucoups of Blues(バラの香りを)』を制作した。共演したのは、ボブ・ディランの『Nashville Skyline』でも演奏したペダル・スティールの伝説、ピート・ドレイクだ。しかし、リンゴはスーパースターとしてのカントリー・ロックの旅ではなく、ミュージック・ロウ(ナッシュビルにあるカントリーの音楽街)へ向かい、現地の流儀でそれを行った。「ピート・ドレイクがカントリーの面々をまとめてくれたんだ」とリンゴは振り返る。「当時、僕たちはジョージ・ハリスンとスタジオにいてね。ヒースロー空港までピートを迎えに車を出したんだ。すると彼は『おい、旦那(hoss)、あれはあんたの車かい?』と言ったんだ。僕のことを『hoss』なんて呼んでね! 車の中にカセットがたくさんあったから『あんた、カントリーが好きみたいだな。ナッシュビルに来てカントリーのレコードを作るべきだ』と言われたよ。僕は『ナッシュビルで1カ月か、耐えられるかな?』と返したんだが、『何を言ってる。Nashville Skylineなんて2日で録り終わったぞ!』って彼は言うんだ」
案の定、ナッシュビルのスタジオ・ミュージシャンたちは、あっという間に『Beaucoups of Blues』を仕上げてしまった。「現地に飛んで、最初の朝に5曲選んで、昼間に録音して夜には完成させた。次の日もさらに5曲、まずはバンド、次に僕が録って、2日でアルバムを完成させたよ。今じゃ機材のプラグを差し込むだけで2日かかるっていうのにね」
一方で、リンゴとT・ボーンは、『Long Long Road』を単なるレトロな懐古趣味にしないよう細心の注意を払った。前作『Look Up』と同様、今作も新しい血が通っている。「Its Been Too Long」にはタトルとジャローズがボーカルで参加している。「リンゴが人生でデュエットをしたのは数えるほどだ」とバーネットは言う。「だが、そのうちの2曲はモリー・タトルと歌ったものだ。二人の声の重なりは本当に美しい。ダラス出身のアニー・クラーク(セイント・ヴィンセント)も大好きだよ。彼女はソウル・シスターだ。シェリル・クロウも、本当に素晴らしい女性だ。彼女たちは本物のアーティストであり、リンゴもまた本物だ。だからこそ、僕は他の本物たちを彼と引き合わせたかったんだ」
それこそが、チームプレーヤーとしてリンゴが常に好んできたやり方だ。「僕にはこのやり方が合っているんだ」と彼は言う。「とにかく演奏するのが大好きなのさ。自分にはたくさん孫がいるが、そのうち3人はドラマーだ。この10年、多くの人たちのレコードで演奏してきたよ。自分のパートを叩いて送り返し、『使うも外すも君たち次第だ』と言うんだ。彼らの望み通りじゃないかもしれないが、まあ、僕を外した奴はそう多くはないよ」
リンゴの音楽人生が「原点」に立ち返った瞬間
彼は、1990年からメンバーを入れ替えつつ継続しているオール・スター・バンドと共に、再びツアーへと繰り出す。「観客と僕は、お互いを知り尽くしている」と彼は語る。「彼らが僕を愛してくれているのも、僕が彼らを愛しているのも分かっている。だから一緒に楽しめるんだ。バンドの連中にはいつも言っているよ、『テンションを上げていこう』ってね。それが僕たちのやり方さ」
私たちは皆、この男のエネルギーを見習うべきだろう。「まあ、もっとブロッコリーを食べることだね」と彼は言う。「僕の良いところは全部ブロッコリーのおかげだよ。だから最近はこう言っている。『ピース・アンド・ラヴ、そしてブロッコリー』ってね」
『Long Long Road』に響く彼の飾り気のない歌声には、どこか思索的な響きがある。本作が、85歳の人間が作り上げた史上最高のアルバムであることはほぼ間違いないだろう。レコーディングはナッシュビルとロサンゼルスで行われ、バーネットによる6曲と、スターによる3曲が収録されている(「メロディとコードを少し与えてくれれば、曲は書けるさ」とリンゴは誇らしげに語る)。また、ザ・ビートルズにとって最大のヒーローの一人であるロカビリーの先駆者、カール・パーキンスによる1950年代のヴィンテージ・ナンバー「I Dont See Me in Your Eyes Anymore」もカバーしている。リンゴは、「It Dont Come Easy(明日への願い)」や「Photograph(想い出のフォトグラフ)」といった名曲の頃から常に彼の歌声に宿っている、あのストイックな運命観を湛えてこの曲を歌い上げている。
ファブ・フォーは全員、カントリーのサウンドに深く浸っていた。「いいかい、もしザ・ビートルズが今の時代にデビューしたなら、アメリカーナ・バンドと呼ばれていただろう」とバーネットは指摘する。「初期からずっと、ジョージ・ハリスンはチェット・アトキンス・モデルのカントリー・ジェントルマンを弾き、カール・パーキンス流のフィンガー・ピッキングを披露していた。その源流を辿れば、ビル・モンローに教えを説いたアーノルド・シュルツに行き着く。ビルはアーノルド・シュルツのバンドのマンドリン奏者で、彼の叔父のペンがフィドル奏者だったんだ」
しかし、ザ・ビートルズの中で最もカントリーのいなせな響きを体現していたのはリンゴだった。バンドに加入する以前から、彼はリヴァプールで「ザ・テキサンズ」という名のスキッフル・コンボで演奏していた。「彼のドラミングのフィールは、極めてテキサス的だ」と、フォートワース出身のバーネットは語る。「ミルトン・ブラウン&ザ・ブラウニーズのような、スウィング・タイムの感覚なんだ」。リンゴのサウンドには常にローン・スター・ステート(テキサス州)の気風があり、同時にニューオーリンズの色彩も色濃く反映されている。「彼は、リトル・リチャードの数々の名盤で叩いていたドラマー、アール・パーマーに近い強烈なエネルギーを持っている。新作の『Baby Dont Go』は、非常にニューオーリンズ的でセカンド・ラインの雰囲気があるが、彼の手にかかれば、それが完全に独創的なものとして立ち上がってくるんだ」
『Long Long Road』は、彼の最初期におけるアメリカーナのルーツまで遡っている。「このレコードでは、カール・パーキンスの曲を取り上げたんだ」とリンゴは言う。「『I Dont See Me in Your Eyes Anymore』はそれまで聴いたことがなかった。彼は僕が歌いたくなるような書き方をするんだ」
パーキンスの曲を歌うことは、リンゴの音楽人生の旅路が円を描いて繋がった瞬間でもあった。「僕がザ・ビートルズで初めてレコーディングした2曲は、どちらもカール・パーキンスの曲だった。そして今、またカールのところへ戻ってきたような気分さ。物事とはそういうものなんだ。つまり、僕はここに座って大きな計画を立てたりはしない。ただ何かに『イエス』と言い、進むにつれてそれが展開していく。それだけなんだ」。リンゴにとって、それは今でもそれほどまでにシンプルなことなのだ。
From Rolling Stone US.

リンゴ・スター
『Long Long Road』
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