Ettone×YAMORIが語る「トワイライト」──夕暮れの記憶を“今のポップス”に変えるまで

クリエイティブガールグループ・Ettoneの3rd Digital Single「トワイライト」は、夕方5時の防災チャイムや夕焼け小焼けをモチーフに、子どもの頃の記憶と今の感情をつなぎ直す一曲だ。制作には、ビートボックスを活かしたボーカルが特徴的な”ヒューマンビートシンガー”のYAMORI、プロデューサーのALYSAに加え、Ettoneからanriとshionが参加。ノスタルジーをなぞるのではなく、揺らぎのあるビート、人の声、そして”今”を生きる言葉で、夕暮れの記憶を新しいポップスへと変えていく。その制作過程を4人が語った。

─まず、ALYSAさんがこの4人で「トワイライト」を作ろうと思った理由から聞かせてください。「東京劇場」とはまた全然違う楽曲になりました。

ALYSA:最初はYAMORIさんにDMを送ったんです。すごく長いDMを送ってしまって(笑)。YAMORIさんの、いわゆるビートボックスの”硬さ”だけを前に出すんじゃなくて、もっと独自のスタイルで鳴らしている感じが、Ettoneに合いそうだなと思ったんですよ。そのオーガニックさみたいなものが、”LOOSE POPS”というEttoneの方向性にすごく合う気がして。

YAMORI:すごい量のDMでした(笑)。でも、その文章から熱量が伝わってきたんです。行間から「本気なんだな」というのがすごく分かったので、自然と「やりましょう」という感じでした。

ALYSA:しかも、すごくスムーズに受けてくださって。びっくりしました。それと、やり取りをしていく中で、YAMORIさんって音楽的なことだけじゃなくて、ものすごく丁寧に人や言葉に向き合う方なんだなって感じたんです。anriとshionは今大学生で、まさにいろんなことを吸収している時期でもあるので、YAMORIさんと一緒にやることで、新しい世界観を作れるんじゃないかと思ってお願いしました。

─その後、「トワイライト」という曲の題材や構想はどう生まれていったんでしょうか。

ALYSA:最初にYAMORIさんとトラックを作る日があって、その時点で私の中に”5時のチャイム”を使いたいというアイデアがありました。渋谷区の5時のチャイムって「夕焼け小焼け」なんです。生まれ育った実家の方でも同じ曲が流れていて、「私、この曲を子どもの頃からずっと聴いてるな」と思ったんですよ。「何か一つ、確固たるモチーフが欲しい」と思っていた時に、そのチャイムが鳴ったんです。

それで調べてみたら、地域によって曲や時間は違うけれど、日本の多くの場所で、防災無線として毎日何かしらのチャイムが流れている。つまり、これは日本で暮らしている人にとって、かなり普遍的な”日常の音”なんじゃないかと思って。そこから「この音を曲の中に取り込めたら面白いかも」と思って、YAMORIさんに相談しました。

YAMORI:最初にいただいたお題は、大きく言うと「5時のチャイム」と「ビートボックスを入れたい」という2つでした。歌詞やテーマはまだ固まりきっていなかったので、まずはEttoneの世代感に無理なくフィットする温度感って何だろう、というところから考え始めましたね。”チャイム”というモチーフはあるけれど、それをそのままノスタルジーとして処理するんじゃなくて、今の彼女たちが歌う必然がある形にしたいと思っていました。

─anriさん、shionさんは、この曲の構想を聞いて、最初は何から考え始めたんですか?

shion:ムードボードからだよね。

anri:まずはイメージからでした。Pinterestで画像を集めて、最初はすごくピュアに、子どもの頃のワクワク感とか、幼少期の景色にフォーカスして。写真やお絵描きみたいなものを並べて、「こういう感じの曲にしたい」という感覚を視覚で捉えてもらえるように持っていった感じです。

ただ、私たちは今大学生で、周りでは就職の話もすごく増えていて、「ちゃんと社会の枠にはまらないといけない」みたいな空気を日々感じている世代でもあるんです。だから、ただ懐かしいだけじゃなくて、そのノスタルジーと、今の自分たちのリアルな閉塞感みたいなものをどうつなげるか、という話になっていきました。その中で、「人生を少しラクに、少し楽しくするきっかけになるようなメッセージを入れたい」という方向が見えてきたんです。

ALYSA:初期段階では、もっと”子どもの頃の大冒険”みたいな方向だったよね。

anri:そうですね。そこからYAMORIさんが今の感覚も絡めてくださって、だんだん「今の自分たちの視点」が入っていった感じでした。

YAMORI:最初にもらったイメージボードは、かなり幼少期にフォーカスしていたんです。ただ、それを20代前後の人たちが歌う時に、どうしたらちゃんと今のリスナーにも刺さるものになるか、というのはすごく考えました。だから、単に「昔はよかった」という話じゃなくて、彼女たちが今どう感じていて、今どんな世界を見ているのかを知りたくて、かなり深く質問しました。

─実際に作詞を進める中で、anriさんとshionさん、それぞれの個性をどのように見ていましたか?

YAMORI:anriは、言語化する力がすごく高いんですよ。やり取りの中でも、ただ感覚で終わらせずに、「それを言葉にするとどうなるか」まで持っていける。その力がこの曲にはすごく大きかったと思います。一方でshionは、無自覚に周りに元気や抜け感を与えるタイプで、みんなで考えすぎてしまう場面でも、ポッと出すアイデアがすごくクリアだったりする。この2人のバランスがすごく良かったですね。

anri:私はどうしてもロジカルに考えすぎてしまうところがあって、言葉も少し硬くなりがちなんです。でもshionは、もっと感覚的で、ビジュアルや空気から入るタイプなので、そのおおらかさがすごくいいバランスになったと思います。

shion:私は逆に、anriがすごく考えて言葉にしてくれるから、自分はもう少しフィーリングで出しても大丈夫、と思えたところもありました。2人でやることで、自分だけでは出てこないものが出た感じがあります。

左から、shion、anri(Photo by Yoko Yamashita)

YAMORIのビートボックスが支えた”揺らぎ”

─YAMORIさんとのやり取りで、特に学びになったことはありましたか?

anri:すごく覚えているのが、私が一度「AI」という単語を歌詞に入れたことがあったんです。就活生の感覚として、「自分の価値って何なんだろう」「AIに取って代わられるんじゃないか」みたいな不安を入れてみたくて。そしたらYAMORIさんが、「AIという言葉には、それ自体にテクノロジーとか機械の匂いがある。その言葉がこの曲の色に本当に合うか、一回考えてみたいね」と言ってくださって。その時に、言葉って意味だけじゃなくて、色や雰囲気も持っているんだ、ということに気づいたんです。すごく大きな学びでした。

shion:私は、歌詞を出してフィードバックをもらう、というラリー自体が初めてに近かったので、すごく勉強になりました。抽象的すぎるところはここ、ここはもっと具体的にした方がいい、みたいに、すごく丁寧に見てくださって。本当に”塾の先生”みたいにわかりやすかったです(笑)。

YAMORI:最初にALYSAさんからもらったメッセージの時点で、本人たちにクリエイティブの経験を積ませたい、という意志を強く感じていたんです。今のガールズグループって、どうしても”今この瞬間”の消費みたいな見られ方をしがちだけど、長く音楽をやっていくためには、自分たちで考えて、自分たちで作る経験が絶対に必要だと思っていて。だから、自分なりにできる範囲で”赤ペン先生”をやらせてもらいました。

─ALYSAさんは、YAMORIさんのヒューマンビートボックスを曲の中に取り入れる上で、実際にサウンドプロダクションを進めてみてどうでしたか?

ALYSA:めちゃくちゃ難しかったです。そもそも、ビートボックスを中心にしたトラックをミックスしたことがなかったので、どの音をどう前に出すのか、全体像がまったく未知数だったんですよ。しかも、YAMORIさんのビートボックスを後ろに下げてしまったら、この曲の意味がなくなってしまう。でも、Ettoneのメロディやハーモニーもちゃんと立たせたい。そのバランスを取るために、かなりいろいろ試しました。入れる楽器も、どれを足すか、どれを引くか、全部試行錯誤でした。

でも、今はAIの時代で、どんどん音楽制作の在り方も変わっていってる中で、Ettoneには生歌で勝負できる存在でいてほしいし、自分たちのクリエイティブで立てる人たちになってほしい。そう考えた時に、”オーガニックであること”を一番強く支えられる音が、今回のテーマにはビートボックスだったんです。5時のチャイムという記憶のモチーフと、人間の声から出るリズムの揺らぎ。それが一番合うと改めて思いました。

左から、ALYSA、YAMORI(Photo by Yoko Yamashita)

YAMORI:それを聞いてすごく嬉しかったです。自分としても、ビートボックスの魅力って、ドラムには出せないグルーヴとか、人間の口から出るからこその揺らぎだと思っているので、最初からそこを期待して選んでくれたのは本当に嬉しいですね。

anri:その”揺らぎ”って、人間にしか出せない魅力の一つだなと思います。AIの時代だからこそ、なおさら。

─YAMORIさん自身は、この曲にビートボックスを入れるにあたって、どんなことを意識していましたか?

YAMORI:ビートボックスって、揺らぎを大事にしすぎると、すごく生々しい音になっちゃうんです。例えば一発録りで、そのままライブみたいに入れると、それはそれで面白いけど、Ettoneのリスナーにとって”聴きやすいか”というと、また別の話になる。だから今回は、グルーヴは生で担保しつつ、音の輪郭は整える、みたいなバランスを意識しました。聴きやすさと生っぽさ、その両立ですね。

Photo by Yoko Yamashita

ALYSA:そこは本当に何度も確認しました。「ここ切って大丈夫ですか?」「これはどこまで触っていいんですか?」って、細かく聞きながら進めたんです。変に触って良さを消したくなかったので。

YAMORI:それはすごく嬉しかったですね。分かった気になって勝手に処理されるより、ちゃんと確認してくれる方が信頼できるので。

─音楽性の面で、何かリファレンスにしたものはありましたか?

ALYSA:YAMORIさんの曲はもちろんたくさん聴きましたけど、いわゆる参考として話していたのは、HYさんの「AM11:00」みたいな平成J-POPの空気感ですね。ラップが入って、サビでパーッと景色が開ける感じとか、みんなで口ずさめる感じとか。あの時代のJ-POPの作り方ってすごく豊かだったよね、という話をしていました。

YAMORI:しましたね。サビでみんなが大声でいける感じとか。あの感覚はかなり共有してたと思います。

Photo by Yoko Yamashita

”LOOSE POPS”とつながった小さくて近い幸せ

─ALYSAさんから見て、「東京劇場」の次に「トワイライト」という曲が来る意味は何だったのでしょうか。

ALYSA:「東京劇場」でかなり強く一方向に振り切ったからこそ、3作目では絶対に別の側面を見せなきゃいけないと思っていたんです。一つの方向だけを見せていくと、「Ettoneってこういうグループだよね」で終わってしまう。でも”LOOSE POPS”って、もっと広いはずなんですよ。だから、「東京劇場」とは違う方向に振り切った曲を、このタイミングで出す必要があると思っていました。

今回の「トワイライト」では、YAMORIさんのビートボックスと、Ettoneの生のハーモニーや歌がしっかり前に出ている。ビートボックスをここまで真ん中に置こうとしているガールグループって、たぶんそんなにいないと思うんです。そういう意味でも、すごく意味のある一曲になったと思っています。

YAMORI:本当に、そこまで真ん中に置こうとしてるのは聴いたことないですね。

─最後に少しだけ。さっきYAMORIさんがanriさんの”言語化する力が高い”と話していましたが、「言葉には、色や雰囲気もある」という発言とか、哲学的でもありますよね。

YAMORI:本当にそう思います。普段から自分が考えていることを、そのまま全部言わなくても汲み取ってくれる感覚があるんですよね。たぶん、言われたことを一回抽象化して、別のものと照らし合わせながら、また具体に戻せてると思うんです。抽象と具体を行き来できる人って強い。anriはそれがずば抜けてるタイプだと思います。

anri:YAMORIさんに聞きたいんですけど、そうやって俯瞰して考える時と、逆に何かに没入したい時って、どう切り替えてるんですか? さっきYAMORIさんが「これ、YAMORIっぽいな」と考えながら音を入れていく、みたいなお話をされていたと思うんですが、ライブとかだと、その”客観視している自分”を外さないといけない瞬間もあると思っていて。

Photo by Yoko Yamashita

YAMORI:それ、すごく難しいです。自分の力だけで完全にスイッチを切り替えられるかというと、意外とそうでもない。だからこそ、ライブが好きなんですよね。バンドメンバーのプレイとか、お客さんの反応とか、自分の外側にあるものが、俯瞰している自分を外してくれる瞬間がある。自分が冷静になりすぎてるなと思ったら、逆にこっちからお客さんを煽って、その場を作っていく。そうやって、自分を解放してくれる状況をつくる感覚に近いかもしれないです。

anri:面白いですね。

YAMORI:でも、この曲を通して改めて感じたのは、そういうことも含めて、言葉にして人と共有しないと、自分の中でも輪郭がはっきりしないってことなんです。それともうひとつ大きかったのが、”LOOSE POPS”の考え方でした。3人で話している時に、「この曲で思い出してほしいものって、大げさな夢なのか、それとも10円ガムみたいな小さな記憶なのか、どっちなんだろう」という話になったんです。その時に出てきたのが、「小さくて近い幸せ」っていう言葉で。しかもそれが、迷いなく返ってきた。それって、自分がYAMORIとしてずっと大事にしてきた感覚でもあったんです。遠くて大きな理想よりも、今ここにある小さな感情をちゃんと拾うこと。その感覚がEttoneの”LOOSE POPS”とこんなに自然につながったのは、すごく嬉しかったですね。

shion:だから歌詞にも〈10円ガム〉〈小さくて近い幸せ〉を入れてくださったんですよね。

YAMORI:そこは絶対入れようと思ってました。こういうタイミングで、こういう関係性の中で、それを曲にできたのは必然だったのかもしれないなと思います。

─では最後に、この曲を聴く人に向けて、それぞれメッセージをお願いします。

shion:この曲を聴いて、あの頃の青春時代とか、幼少期のキラキラした思い出とか、そういう楽しい気分が少しでも蘇ってくれたら嬉しいです。

anri:懐かしいものって、遠くなればなるほど、きれいなものとしてしまっておきたくなる部分もあると思うんですけど、あえてそこを今の自分がもう一回解釈し直してみると、日常に彩りを持たせられることがあると思うんです。「あの時好きだったお菓子を買ってみよう」とか、「昔好きだった音楽を聴いてみよう」とか、そういう小さなことで心が躍る瞬間が、皆さんの日常の中に少しでも増えるきっかけになったら嬉しいです。

Photo by Yoko Yamashita

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3rd Digital Single「トワイライト」

Ettone

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YAMORI

柔らかくも芯のある独特な歌声と、声を駆使したビートボックスをナチュラルに楽曲に落とし込み歌い上げる、”ヒューマンビートシンガー”。盟友John-Tと結成した「Jairo」としてヒューマンビートボックスの世界大会(Grand Beatbox Battle 2024)で優勝を果たし、ソロとしても、ももいろクローバーZがホストを務める「第7回ももいろ歌合戦」に単独で出場して横浜アリーナを沸かすなど、躍進を遂げている。世界的にも類を見ない唯一無二のスタイルで、現在もコンスタントにリリースとライブを続けている。

https://www.instagram.com/yamorita_keitaro/