
この記事は「最強ホットハッチ5台を徹底比較|ホンダ・シビック・タイプR編」の続きです。
【画像】英雄的ホットハッチ、フォード・フォーカス RS(写真3点)
フォード・フォーカス RS
世界ラリー選手権を想起させる姿と、愛された名称の復活。初代フォーカスRSには、応えるべき期待が山ほどあった。フォードのそれまでの前輪駆動車はそこまでの期待に応えきれてはいなかったが、RSはほとんど擁護を必要としない出来だった。ザックスのダンパー、ブレンボのブレーキ、クワイフのデフといった高価なブランド製品は期待を裏切らず、フォードによればRSの構成部品の約70%が強化品か専用品だったという。
2002年の登場は、新たな「スーパーハッチ」という亜種を広く知らしめる役割も果たした。先に現れたのは、1998年のミドシップ、クリオV6だったが、その後すぐに、ゴルフR32やアルファロメオ147GTAといった、ほとんど抑えの利かない猛獣じみたモデルが現れた。
シャシーの達人リチャード・パリー・ジョーンズの執拗な開発と、熟成されたマルチリンク式リアサスペンションによって、フォーカスは動的性能の面で飛躍的な進歩を遂げた。RSはさらにその一段上にあった。たとえ、LSDを介して右足を調節することに慣れていない人にはその真価が伝わらなかったとしてもだ。フォードは追う側の立場から、一気に市場の主導的存在へと踊り出た。
ホモロゲーションモデルの要素を色濃く備えながらも、このMk1 RSは純然たるモータースポーツのための一台ではなかった。むしろ、WRCにおけるマルコム・ウィルソンとMスポーツの優れたエンジニアリングに着想を得て、ある意味ではそれをなぞった存在だった。さらに、開発にはフォードのワークスドライバーであるコリン・マクレーとカルロス・サインツも関わったと伝えられている。
0-60mph加速6.4秒のこのスーパーハッチは、4501台のみが生産され、そのほぼ半数が英国市場へ渡った。発売時の価格は1万9995ポンドであり、この額は原価をかろうじて賄える程度だったと言われている。今では、状態の良い個体だと少なくとも2万5000ポンド、最上級のものは3万5000ポンドを超える。
このフォーカスは、本稿で最初に登場するターボ付きの英雄的ホットハッチだ。その性格は、実に分かりやすい。212bhpの4気筒は、センターコンソールの緑色のスタートボタンで目を覚ますが、それもキャビン全体と同様に経年の影響は隠せない。カーボン調とブルーの色分けは、人によっては少々過剰に映るかもしれないが、そもそもRSのフォードに控えめさを期待するものではない。
ターボラグに悩まされるものではないが、パワーは確かに一気に炸裂する。それも、青い弧を描くRSロゴ入りメーターの低い位置からだ。視界の端では、ブースト計が荒々しい過給圧に達したことを赤い振れで知らせる。楽しさと加速感を遮るのは、ほんの一瞬のシフト操作だけ。そのケーブル式5速マニュアルは、ショットピーニング加工のギアを持ち、カチッ、スコンと気持ちよく入る。あの名高いクワイフ製LSDは、使える側の前輪へと的確に駆動力を配分する。踏み込みすぎれば、やや手強く感じることもあるが、その見返りとしてRSはタイトコーナーに鋭く食い込み、そこから力強く引っ張り出してくれる。そして、そのまま144mphの最高速へ向けて加速していくのだ。
このRSは、前輪駆動と四輪駆動ホットハッチのあいだに位置する過渡的な存在でもある。アルファロメオ147GTAは、200bhp超(あの常軌を逸したイタリア車では250bhp近い)をオープンデフで受け止める時代がすでに終わっていることを示した。一方で、四輪駆動のゴルフR32は、それと比べるとやや平凡に映る。RSはその両極の中間にあり、強烈な性能はほとんど制御しきれていないほどの、それでいて最後には優れたシャシーが支えてくれる。
フォード・フォーカス RSのライバル車は?
ホンダ・シビック・タイプR(EP3)
この英国生産のタイプRほど、RSにとって手強い競争相手はいなかった。ついに英国市場を重視したホンダは、EP3タイプRの生産をスウィンドンに委ねたが、EK9を逃していた我々にとっては歓迎すべき動きだった。197bhpを発するEP3はフォーカスRSに先んじて、200馬力・150mph級のホットハッチを数カ月早く世に送り出したのである。
動的性能ではフォードにほぼ匹敵しながら、価格は16000ポンドをわずかに下回っていた。それでも、両者は当時激しいライバル関係にあった。”ブレッドバン”と呼ばれるこのシビックはやや不当に忘れられているが、その分今では6000ポンドから狙えるお買い得な車となっている。
ルノー・クリオ182トロフィー
このトロフィーは、我々が選ぶ究極の一台に加わってもおかしくない存在だったが、同門のメガーヌがさらに高い水準を示していた。とはいえ今日では、多くの人がこのトロフィーを旧来のホットハッチの完成形とみなしており、それも納得できる−特製のリモートレザーバー付きダンパーも、182カップのセットアップに対して劇的な進化とは言えないにせよ。ルノースポールのクリオはどれも素晴らしいが、このモデルにはさらにひと味の特別感が加えられている。
・・・ルノースポール・メガーヌR26.R編に続く。
翻訳:オクタン日本版編集部 Translation: Octane Japan
Words: John-Joe Vollans Photography: Jonathan Jacob