最強ホットハッチ5台を徹底比較|ホンダ・シビック・タイプR編

この記事は「最強ホットハッチ5台を徹底比較|プジョー205GTI編」の続きです。

【画像】時代の頂点を示すハッチバック、ホンダ・シビック・タイプR(写真3点)

ホンダ・シビック・タイプR

1990年代に入る頃には、ホットハッチはその成功ゆえに自らの犠牲者になっていたのかもしれない。多くの人が、懲罰的なほど高い保険料によって、高性能であることそれ自体が割に合わないと感じていた。各メーカーは、露骨にスポーティではないモデルを送り出すことで応じた。本当に性能を備えるというより、性能をほのめかす車である。その典型がフォルクスワーゲンだった。そもそも、ホットハッチブームの火付け役だったにも関わらず、ヴォルフスブルク(フォルクスワーゲンの本社の所在地)のGTIは、1990年代にはその名に以前ほど見合わなくなってきた。洗練さ、受動安全性、使い勝手の向上は、いずれも車重の増加を招いたが、当初はそれに見合うほど馬力は増えなかった。もちろん、フランス勢には優れたモデルもあった。クリオ・ウィリアムズや、見事なプジョー306GTI-6のことだ。だが、この時代の流れを真に変えたホットハッチを探すなら、さらに外へ目を向ける必要がある。

初代ホンダ・シビック・タイプR(ホンダの型式ではEK9)は、英国では正規販売されなかった。しかし、205からドライバー好みのホットハッチという象徴的なバトンを受け取り、そのまま走り抜けたのはこの車だった。ホンダは、この輝かしい”Type R”のバッジを掲げた最初のシビック−NSXとインテグラに続く、まだ3代目のタイプRでもあった−を、公道も走れるレーサーとして構想した。国内ワンメイクレースのホモロゲーション取得のために作られたものであり、その優先順位は欧州の大半のメーカーとは正反対にあった。

そのモータースポーツ由来の設計思想は、特別に手作業でポート加工された1.6リッターエンジンを回した瞬間に明らかになる。並のエンジンならコンロッドを吹き飛ばしてしまうような回転域まで、平然と駆け上がっていくからだ。少し大げさな言い回しになってしまうが、EK9の体験を支配しているのは、まさに常軌を逸した高回転そのものである。巧みなVTEC可変バルブ技術によって、この自然吸気エンジンは8200rpmで185bhpを発する。もっとも6000rpm以下の回転数では、いったい何がそんなに騒がれているのかと不思議に思うかもしれない。しかし、その先へ踏み込めば、エンジンの性格は機械じみた狂気の塊へと変貌する。VTECの領域へ足を踏み入れた瞬間、その変化は劇的なものとなる。エンジン音はうねり、より低く太い響きを帯びる。前方への加速が一気に強まり、背中をそっと、それでいて確かに押される感覚が現れる。

あれだけの力を前輪で、しかも制御可能なかたちで路面へ伝えるには、トルクセンシング式のヘリカルLSDが必要だったし、縫うように補強溶接された強靭なボディシェルも欠かせなかった。そして、この「タイプR劇場」の主役がエンジンだとすると、助演賞はシャシーのものだ。乗り味は引き締まっている。このチャンピオンシップホワイトの個体では社外の車高調がその印象をさらに強めているが、それ以外の改造はごくわずかである−JDM(日本国内市場)の世界では珍しいことだ。やや硬めのスプリングと、1980年代の先達とほとんど変わらない1090kgという軽さもあって、このシビックはピッチングをほとんど見せない。姿勢変化を内耳で察知できるだけの手がかりがあり、そこに饒舌なステアリング、適切に配置されたペダル、そして機械として心地よいギアチェンジが加わる−25万マイルを走った日常兼サーキット仕様のこの個体でさえ、フィードバックは見事なものだ。

ドライバーに愛される評判と、英国では希少な存在であること−英国には300台から500台ほどしかないと考えられている−が重なって、EK9は愛好家から強く求められている。日本の高性能車の相場は長く上昇傾向にあり、こうした系統の車を好む若い世代が、購入できる年齢に達してきたこともその背景にある。手にする価値のあるEK9は、およそ1万5000ポンドから始まり、極めて大切に扱われた個体では3万ポンド近くに達する。

ステアリングを握ると、このタイプRは時代の頂点を示すハッチバックに感じる。とはいえ、どのギアでも気軽に性能を引き出したいのなら、この車は向いていない。だが、集中を要求し、ひとつひとつのシフトとクリップを正確に決めたくなるような車を求めるのなら、タイプRとは完全に波長が合うはずだ。

ホンダ・シビック タイプRのライバル車は?

プジョー306GTI-6

プジョーは1990年代、二本立ての戦略を採った。小型の106GTIは205の流れを継ぎ、306GTI-6はより大型のゴルフに直接対抗した。いずれも運転して楽しい車だったが、追加されたギア段数、より厚みのあるトルク、そして洗練度の高さによって306の方が総合力に優れていた。

シトロエン・サクソ VTS

ボーイレーサー的な先入観はひとまず脇に置いてほしい。若い頃の”やらかし”がサクソの評価をいつまでも曇らせるべきではないからだ。たしかに、”マックスパワー”という名の元に、数々の痛々しい改造が施されてきたことは事実だが、そうした車文化の残滓を取り払ってしまえば、VTSは実に魅力的な小型ホットハッチである。後期型205や106と同系統のエンジンを積み、先代AX GTIの優れた評価を受け継いだこの車に、いったい何を嫌う理由があるだろうか。

ルノースポール・クリオ172

速いクリオは初代の登場以来ずっと存在してきたが、2代目にあたってディエップはその水準を数段引き上げた。クリオ172はその名が示す通りの出力(正確にはPS馬力)を備え、1999年当時としては十分に大きな数字だった。続くモデルでは182馬力へと引き上げられ、さらに次世代では197馬力、最終的には200馬力にまで達している。

・・・フォード・フォーカス RS編に続く。

翻訳:オクタン日本版編集部 Translation: Octane Japan

Words: John-Joe Vollans Photography: Jonathan Jacob