阪神タイガースの佐藤輝明【写真:産経新聞社】





 



 開幕から圧巻の打撃を見せる阪神・佐藤輝明。打率、出塁率、長打率、OPSでリーグ上位に位置するなど、その打棒は際立っている。“確変”ではなく“覚醒”――長打力だけでなく精度も高めた佐藤の進化をデータから読み解く。(文:ニコ・トスカーニ)

「確変」ではなく「覚醒」か “wRC+249”が示す異次元の打撃
 

 

 
 2026年の日本プロ野球もそろそろ開幕から1か月が経とうとしているが、昨季の本塁打王・佐藤輝明(阪神)が今季もここまで凄まじい打撃成績を残している。
 
 本塁打数こそ2位タイだが、打率、出塁率、長打率、OPSなど主要な打撃指標でセ・リーグ1位で、打者としての傑出度を表すwRC+は249を記録している(4月19日時点)。
 
 wRC+は平均値が100になるように計算式が作られているため、言い換えると佐藤一人で平均的なリーグの打者2.5人分の効率で得点を生産していることになる。
 
 昨季の佐藤はプロ5年目にしてほぼすべての指標でキャリアハイの成績を残したが、今季ここまでの経過を見ると、どうやら昨季は「確変」ではなく「覚醒」だったようだ。

 






 


もともと優れたアーチスト?データが示す佐藤の進化
 
 本塁打を打つにはまず打球に角度をつけなければならないが、佐藤はもともと打球を打ち上げるのが上手い打者だ。
 

 

 
 ルーキーイヤーの2021年、佐藤のFB%(フライ性の打球を打った確率)は51.8%だった。現代最強の長距離打者であろうアーロン・ジャッジ(ヤンキース)が、ア・リーグ新記録の62本塁打を打ったシーズンのFB%は43.5%。ジャッジのFB%が最も高かったシーズンですら、51.2%である。
 
 FB%は平均的には25〜35%程度であり、佐藤は極端なまでにフライ性の打球が多い、言い換えると打球に角度をつけて打ち上げるのが上手いことがわかる。その後のシーズンの佐藤も軒並みFB%は高く、昨季は43.2%だった。一番FB%が低かったシーズンでも42.7%で、かなり極端なフライボールヒッターと言えるだろう。
 
 それに加えて佐藤は年々粗さが抜けて、打撃の精度が高くなっている。
 
 1年目はFB%こそキャリアハイだったが、IFFB%(内野フライ率)も高く16.8%だった。打球に角度をつけてもポップフライになる確率が高かったのだ。三振率も38.0%あり、ポップフライと三振の多い荒っぽい打者だった。
 
 それが年を追うごとに改善されている。
 
 三振率は2年目以降30%を超えることなく、IFFB%も2年目以降は10%を切っている。
SwStr%(空振りによるストライク率)が1年目は22.4%あったが、2年目以降は20%未満で、コンタクト率も1年目の59.7%から、2年目以降はワーストでも69.2%に改善された。
 
 長打の量産が話題になりがちだが、ボール球をより見極めるようになり的確にボールにコンタクトできるようになった。打者としての精度が全体的に上がっているのだ。
 
 打球の質にも特筆すべき進化ポイントがある。
 

 

 
 昨季の佐藤は、打球速度が95マイル(約153km/h)以上の打球を打った「ハードヒット率」がキャリア最高だった。
 
 また、フライ性の打球が本塁打になった確率が24.5%で、この数字もキャリアハイだった。フライ性の打球の約4分の1が本塁打になるのだから凄まじい精度である。
 
 佐藤に打球を打ち上げられた瞬間、相手バッテリーは恐怖したことだろう。しかも、左打者の本塁打が特に出にくい甲子園球場を本拠地にしての成績であることも加えておくべきだろう。
 
 さらに昨季の佐藤は、Pull%(引っ張り率)もキャリアハイだった。
 
 つまり佐藤は色々試行錯誤した末に「引っ張って角度をつけた強い打球を打つ」という、いかにもスラッガーらしいスタイルで打撃精度を高めたのだ。
 
 この打撃スタイルは、いくら右寄りのシフトを敷かれても引っ張り続けた松井秀喜氏を思わせる。スタンドに叩き込んでしまえばシフトなど関係ない。スラッガーとしての矜持だろう。







 


スラッガーなのに“万能”…佐藤のユーティリティ性
 
 佐藤の特筆すべき点と言えばまず打撃だが、50m走6秒台の俊足と遠投100mの強肩も兼ね備えており、実は守備・走塁の貢献度も高い。
 

 

 
 ここ3年は三塁をメインポジションにしているが、三塁守備の精度が年々向上し、昨季はNPBの三塁手で全体トップのUZR1.7を記録している。同年は投票者の主観で選ばれるゴールデングラブ賞を受賞しただけでなく、アナリストがデータで客観的に判断して選ぶデルタ・フィールディング・アワードも受賞している。
 
 外野両翼も平均以上に守ることができ、一試合だけ二塁を守ったこともある。NPBの歴史上でも珍しい「ユーティリティ・スラッガー」と言えるだろう。
 
 盗塁は佐藤のスタイルでは無いが、スピードもある佐藤はシーズン2桁盗塁を二度記録している。2022年は11盗塁で失敗3、2025年は10盗塁をマークして失敗2だ。
 
 盗塁はアウトになった時のマイナスが成功したときのプラスよりも大きいため、最低でも70%は成功させないと収支が合わなくなると言われている。佐藤は両シーズンとも75%以上の確率で盗塁を成功させており、走塁でもプラスを稼いでいることになる。
 
 こういったユーティリティ性は、度々比較される松井秀喜氏が持ち合わせていなかったものだ。佐藤は将来的なMLB挑戦の意志を明確に示しているが、こういった高いユーティリティ性は、出場機会を確保するうえで確実に有利に働くだろう。
 
 今季、どこまで成績を伸ばすのか注視したい。

 
【著者プロフィール】
ニコ・トスカーニ
大学卒業後、IT技術者をしながら「ニコ・トスカーニ」のペンネームでカルチャー系の兼業ライターとして活動。また共同制作者、脚本家として神谷正倫名義で『11月19日』(2019)、『階段下は××する場所である』(2021)、『正しいアイコラの作り方』(2024)の3本の劇場公開作がある。FanGraphsのデータを確認するのが趣味で、好きが高じて野球の原稿も時折手掛けている。










 


【動画】打球速度180キロ!佐藤輝明の5号バックスクリーン弾がこちら
 
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【了】