
ロックミュージック(インディー・ロックやパンク・ロック)とダンスミュージック。イギリスでは80年代から続く伝統と歴史を持つ異ジャンルのハイブリッドだが、それを今の時代の音として鳴らしているバンドが出てきて面白い。
英リーズ出身の6人組、Adult DVDはそういったバンドの一つで、SNS広告が日本でも注目を集め、4月には初来日公演を成功させたばかりだ。UKの名門インディー・レーベル、Fat Possumとの契約を発表し、昨年はグラストンベリー、Green Man、End Of The Roadなどに出演し、今年はSXSWの出演でも話題を呼んだ。4月10日のライブ(duo MUSIC EXCHANGEで開催された、SYNCHRONICITY26 Pre-Party)の前に、バンドの設立メンバーであるハリー・ハンソン(リードボーカル)とグレッグ・ロンズデール(シンセサイザー、ボーカル)にインタビューを行った。
―なぜ、Adult DVDというバンド名にしたんですか?
ハリー グレッグがよく絵を描くんだけど、「Adult DVD shop」っていう絵を描いて。それを僕たちのスタジオの壁に貼ってたんだ。曲を作り続けながらその絵を見てたから、「じゃあバンド名はこれにしようか」という話になった。検索もしたんだけど、Adult DVDというバンドはまだなかったから。
―このバンド名でライブをやった時、反応はどうでした?
ハリー 日本でライブをやるまでは、全く問題なんてなかったよ。誰も特に疑問に思わなかったし。それで、Xで日本のファンのツイートを翻訳してみると、「音楽は最高だけど、名前がひどい」と書かれていて(笑)。
―それこそ「Bill Murray」という曲で、何度も「Bill Murray, Bill Murray is lost in Japan」って歌ってきましたが、実際に日本に来てみてどうですか?
ハリー 日本は最高だよ。子供の頃からずっと日本には行きたかったんだ。日本に来てライブをやるなんて、スゴく特別なことだから。
グレッグ 僕も全く同じだね。元々日本には彼女と一緒に行くつもりだったけど、今はバンドでここに来てるわけで……ちょっと問題になるかもしれないなあ(笑)。
―2日前の大阪のライブ(4月8日のJANUSでの公演)はどうでした?
ハリー 信じられないくらい良かった。ソールドアウトだったし、会場は満員だった。というか、満員すぎたかもしれない(笑)。お客さんも素晴らしく、僕たちを受け入れてくれたんだ。
グレッグ 正直、お客さんは20人くらいかなと思ってたんだ。
ハリー 僕はさっき、3人って言ったんだけど(笑)。
グレッグ (笑)でも実際は、400~500人来てくれた。しかも、ファンが手作りのバンドグッズを持ってくるんだ。帽子とかネックレスとか。イギリスではあり得ないことだね。
ハリー イギリス人は怠け者だと思わされたね(笑)。ファンの中には、「まさか日本に来るなんて信じられない。ずっと待ってた」ってメッセージをくれた人も何人かいた。
―スタジオ音源とライブ演奏はもちろん違うと思いますが、ライブで特に大切にしていることはありますか?
ハリー 同じ曲でも、音源とライブは違うものになるべきだと思ってる。もしそのバンドが好きなら、ライブを観に行くのはワクワクする体験になるはずだ。基本的には同じ曲でも、ライブは別の体験だから、もっとエネルギーが強いし、そこに照明や音響も加わるからね。
グレッグ 僕たちは割とビジュアル的なバンドだと思うんだ。6人いるし、機材もスゴく多い。もっとお金があれば、バッキングトラックを使ってやることもできるんだけど(笑)。でもお客さんは、実際に楽器を演奏しているところを見たいはずだよね。
―しかも、メンバーに本物のドラマーがいるのがいいですね。
ハリー そうなんだ。僕の大好きなバンドでSoulwaxっていうのがいるんだけど、ライブでドラマーが演奏してたのがカッコ良くてね。それに、僕たちは今でもギターミュージックが大好きだ。だからバンドらしさというのは失いたくないんだ。シンセサイザーだけの演奏もできるだろうけど、バンドとして存在した上で、ダンスミュージックをやってるという形にしたかった。
―打ち込みビートだけでやりたくないわけですね。
ハリー ステージ上ではラップトップもなしだ。

Photo by Kentaro Kambe
ロックダウンで始まった、6人編成のロック×ダンス
―あなたたち2人がAdult DVDの設立メンバーなんですよね? バンドを始めるに当たって、どういう話をして、コンセプトなどを考えたのですか?
ハリー コロナ禍のロックダウンがきっかけなんだけど、その前の僕たちは別のバンドにいたんだ。僕はシューゲイズのバンドにいて。
グレッグ 僕はサイケデリック・ロックのバンドにいた。
ハリー 地元のリーズは小さな街だから、どのバンドとも顔見知りでしょっちゅう会ってるんだ。
―リーズと言えば、レディング&リーズ・フェスティバルの開催で有名ですよね。
グレッグ 9歳の時に最初に行ったフェスがそれだよ。ハリーとは地元のバンドのシーンで出会って、連絡を取り合ってて。ロックダウンの時に、オンラインで一緒に曲を作り始めたんだ。それで、コンピューターだけで作ってた曲をライブでやろうと思った時に、これでは足りないな、メンバーが6人必要だなと思って。友達をメンバーに誘ったんだ。
―Adult DVDのような、ロックとダンスミュージックを融合するというスタイルは、イギリスでは80年代から続く伝統と歴史がありますよね。自分たち世代としては、ジャンルの融合をどのようなアプローチでやろうと考えました?
ハリー 僕は新しい音楽も好きだし、昔のハシエンダとかファクトリー・レコードも好きで、アシッドハウスが大好きなんだ。だからそれを組み合わせるのは自然なことだった。それに、イギリスではエレクトロニック・ミュージックを取り入れるバンドが増えてきたから。
グレッグ しかも、ちゃんと今の音でやってるんだ。
―Soulwaxとハシエンダ以外にも、ロックとダンスミュージックの融合で好きなものはありますか?
ハリー ケミカル・ブラザーズは好きだね。僕のお気に入りのライブ映像の一つは、彼らのFUJI ROCK FESTIVALでのライブだ。あれは人生で一番好きなライブ映像かもしれない。
―ケミカル・ブラザーズは何度もFUJI ROCKに出演しているし、今年のFUJI ROCKではTOMORAが出演しますね。
ハリー TOMORAとはベルギーで共演するんだ。是非トムと会って、握手をさせてもらいたい。
―6人のメンバーのうち、4人がシンセサイザー・プレイヤーなんですよね。バンドの結成当初、シンセサイザーはある程度弾けたのですか?
ハリー うちのベーシストはキーボードを弾けるんだけど、弾いてるのはベース(笑)。他はみんな素人だった。
グレッグ メンバーのジェイクが機材を持ってて、そこにMIDIのトラックを全部まとめてる。みんなのシンセサイザーや機材もそこにつなぐんだ。そこからモジュレーションをいろいろいじって、ライブで演奏してる感じだ。シンセサイザーを4人で扱うから、そういうシステムが必要なんだ。
―Adult DVDで初めて使ったシンセサイザーは?
ハリー 303で、今も使ってるよ。Rolandのは高くて買えなかったから、Behringer製だよ。もしRolandの人がこの記事を読んでたら連絡してほしいな(笑)。
―シンセサイザーの使い方がギターみたいですよね。
ハリー そうそう。シンセサイザーにクレイジーなエフェクトをかけるから。モジュレーションを上手く使えばいいんだろうけど、本来の使い方とは違う使い方をしてる。
―だからユニークなサウンドになるんですね。
ハリー 上手くないからだよ。楽な方法でやってるから(笑)。
―4人でシンセサイザーを演奏するから、音のレイヤーがいくつもあるし、1曲の中に聴かせどころがいくつもありますね。
グレッグ 僕たちは耳に残るフックをかなり強く意識して作ってるから。
ハリー ダンスミュージックって基本的に反復的だよね。四つ打ちのビートが続いて、ボーカルのフックが一つあって、それがずっと回っていく。それはそれで素晴らしいんだけど、僕としてはちょっと退屈なんだ。僕はデッカいコーラスの入った曲が好きだ。だからそういうダンスミュージックをやりたい。みんなで歌えるのもいいしね。
―メンバーが6人いる中で、曲作りのプロセスはどうしているのですか?
グレッグ 基本的にはグループに分かれて作る。もし全員で一緒にやったら、たぶん喧嘩になると思う(笑)。まず何人かでアイデアを出して、それを他のメンバーに送る。誰かがまた手を加えて、それをまた回していく。最終的にトラックを完成させて、じゃあこれをどうライブでやろうかって考える。だからある意味、逆算していく感じだね。それでライブでは少し違うサウンドになるんだ。
ハリー ライブでは、自分たちで作った曲のカバーバンドになるんだ(笑)。
―バンドの最初の曲「Broken English」と最新曲「Real Tree Lee」を比べると、何が一番大きく変化しましたか?
ハリー ちょうど昨夜、新宿のバーにいたんだけど、僕たちの最初の曲がかかったんだよ。4年ぶりに聴いたけど、いい曲だったね!(笑) 基本的な部分は変わっていないんだ。進化はしてるけど、同じ理念でやってるから。
グレッグ 今は90年代っぽいサウンドに進化してると思う。
―ニューアルバムを出すとのことですが、さらなる進化をしています?
グレッグ もちろん! インディー・ロック的な要素もあるし、全体的に少しヘヴィになってる。ある曲はクラウトロックっぽい感じもあるし、ザ・ホワイト・ストライプスみたいなギターのラインもある。ダンス寄りの曲はよりプロディジー的な方向に向かってるね。基本的には、すべてにおいてエネルギーが高い状態をキープしてるよ。
ハリー ヘヴィなギターサウンドか、ヘヴィなダンスサウンドか、どちらかだね。
グレッグ 「Real Tree Lee」をリリースした時は、あれがちょうど中間地点みたいな感じだった。
ハリー 今まで単発で曲を出したり、EPを出したりしてきたけど、アルバムを作るってこんなに違うものなのかと思ったよ。作業量が多いし、カバーしなきゃいけないことも多い。歌詞で言いたいこともたくさんあるし。長いプロセスではあったけど、めちゃくちゃ楽しかったね。
―Adult DVDの曲って、歌詞も面白いんですよね。歌詞は誰が書いているんですか?
ハリー 僕たち2人とも書いてる。だけど、どの歌詞も僕のことじゃないし、グレッグのことでもなくて、全部作り話なんだ(笑)。キャラクターみたいなものだよ。だって、すでに多くのバンドが自分のことを歌ってるじゃない? 失恋とか、そういう話ばかりで。だから僕たちは、もっと違う面白いことをやりたかった。
グレッグ 観察してる感じだね。例えば、ニューアルバムの「Cowboys」って曲は、スーパーマーケットにいるカウボーイの話だ。アクションフィギュアのキャラクターを見てるような感じで歌いたいんだ。ちょっと皮肉の入った笑える歌詞で、深刻なものじゃない。
ハリー 全部作り話だから、アイデアが尽きないんだよ(笑)。
―ダンスミュージックって、シンプルなワードが異様に頭に残ったりしますよね。例えば、「Bill Murray」を演奏した時とか、お客さんはついつい一緒になって歌ったりしそうですが。
ハリー フランスでやった時は、僕が「Dont worry(心配するな)」って歌ってると思われたよ(笑)。でも、そのくらい頭に残ったんじゃないかな。
―最新曲の「Real Tree Lee」はまた歌詞が変わっていますよね。終末オタク、ミリタリーオタク、陰謀論者、インセルが混ざったようなキャラを歌っていて。これってアメリカ人のことですか?
グレッグ しーーーーっ(笑)。間違いなく、良い人間ではないね。トランプ支持層みたいなタイプだよ。
―先ほど、新宿のバーに行ったという話が出ましたが、お酒は好きなんですか?
ハリー 大好きだよ。日本にはバーが多すぎる。全部行ってみたくて、頑張ってるんだけどさ。酒好きという点で、イギリス人と日本人は同じ仲間だ(笑)。
―2人にとって、バンドのライブとクラブのパーティの楽しみ方ってどんな感じなのでしょうか?
ハリー どちらも好きだけど、僕はバンドのライブの方が好きだね。クラブでビートのループを延々と聴いてたら疲れてしまうから。僕も歳だからね(笑)。僕にとって最高なのは、バンドのライブを観て、アンプから爆音が鳴り響いてて、ドラマーが全力で叩いてるのを感じることなんだ。
―これまでで最高だったクラブのパーティはあります?
ハリー ブリストルのBugged Out!だね。家族で行くホリデーパークを丸ごと使ったようなパーティだった。2manydjsとかエロル・アルカンとか、昔ながらのDJたちが出てて、最高のパーティだった。
グレッグ 日本のアサヒビールがスポンサーのパーティで、亡くなる前のアンディ・ウェザーオールを観られたのは良かったな。
―イギリスからは2010年代にポストパンク・リバイバルのバンドがいくつも出てきましたが、Adult DVDは似て非なるものというか、文脈が違うと思いました。
グレッグ そうだね。僕たちもしばらく「ポストパンク」って言われてたよ。でもニューアルバムが出たら、ポストパンクの枠から外してほしいな(笑)。地元がリーズで、マンチェスターとか北部の音楽からの影響もあるから、違うものだと思うんだ。
―ニューアルバムはいつリリースされるのですか?
ハリー 年内には出ると思う。上手くいけば9月の終わりだ。今はちょうどミックスとマスタリングに取りかかってる。
―ニューアルバムからの新曲はすでにライブでは披露しています?
ハリー 今夜のライブで、アルバムの1曲目となる「Coffin Dodger」(注:「 死にかけの年寄り」の意味)をやる予定だ。
―非常に気になりますね……。ちなみに、これまでで一番良かったライブは?
ハリー 二つあるよ。一つは大阪。ステージに立った時、あんなに盛り上がるとは思ってなかった。もう一つはウェールズのGreen Man Festival。そこも大阪と同じで、突然1000人くらい集まって、みんなめちゃくちゃ盛り上がったんだ。予想していなかったのにそういう状況になるライブが、やっぱり一番好きだね。
グレッグ 泣きそうになる瞬間だった。大阪でも涙が出そうだった。
ハリー ステージで泣くのはカッコ悪いよ(笑)。

Adult DVD(アダルトDVD)
「Real Tree Lee」
Fat Possum
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