
2年連続でパ・リーグを制し、連覇日本一を目指す福岡ソフトバンクホークスのシーズンがまもなく開幕する。長年に渡って今宮健太がレギュラーを張ってきたショートのポジションに、野村勇が割って入ろうとしている。昨季大事にしてきた「打席での考え方」を今年も継続しながら、レギュラーの座をつかみ取る準備を着々と進める。(取材・文:灰原万由)
プロフィール:野村勇
1996年生まれ、兵庫県出身。香川・寒川高から拓殖大に進み、NTT西日本で3シーズンプレー。2021年ドラフト4位で福岡ソフトバンクホークスに入団し、1年目に10本塁打を記録する。プロ4年目の昨季はキャリアハイとなる成績でソフトバンクの日本一に貢献し、11月には侍ジャパンにも選出されている。
飛躍の1年を終えて掲げる目標
ソフトバンクの野村勇内野手が、勝負のプロ5年目へ順調な調整を続けている。昨季は自己最多となる126試合に出場し、打率2割7分1厘、12本塁打、18盗塁を記録。昨季につかんだ手応えを定位置奪取へつなげたい今季へ向け、「コンディションはいい。昨季から継続してやってきたことをキャンプや実戦でも出せていて、自信になっている」と手応えを口にした。
昨季は、野村にとって今季の定位置争いへつながる土台を築いたシーズンだった。ルーキーイヤーの2022年には97試合に出場して10本塁打を放つなど、持ち前のパンチ力を示した。
だが、その後の2シーズンは出場機会、成績ともに伸ばし切れず、立場を固め切れない時期もあった。そうした中で迎えた昨季は一軍での出場機会を広げながら結果も残し、自身の現在地を押し上げた1年だった。
4年目のシーズンを終え、野村が今季の目標として明確に掲げたのが「開幕ショートスタメン」、そして「遊撃のレギュラー」だった。
これまで不動の遊撃レギュラー・今宮健太に弟子入りして自主トレに参加してきたが、今年は単独での調整を選択した。同じ遊撃のポジションを争う以上、今年は一人で勝負する。その覚悟が、自主トレの形にも表れていた。
「反省の仕方が変わってきた」
オフにとりわけ力を入れたのは守備だった。昨季は打撃で結果を残した半面、自身の中では守備にまだ課題が残っていたため、「自主トレでもしっかり入念に取り組んできた」。打つだけでは定位置はつかめない。守ってこそ信頼を得られるポジションだからこそ、遊撃手としての完成度を高める時間をしっかり取った。
一方で、打撃については変化を加えなかった。「継続して、パワーアップできるように」と、昨季につかんだ感覚を土台に精度を上げていくことが今オフのテーマだった。
もっとも、継続しているのは技術面だけではない。昨年からチームに加わった伴元裕メンタルパフォーマンスコーチと話し合いを重ねながら形づくってきた、「打席での考え方」や「反省の仕方」も引き続き大切にしている部分だ。
「どういう考え方で行けたか。そこを考えると反省しやすくて、反省の仕方が変わってきた」と結果だけではなく、その打席にどう入れたかを見つめることを重視している。
その積み重ねが、今春の手応えをより確かなものにしている。キャンプ、実戦と段階を踏む中でも、昨季から継続してきたことをぶらさずに出せている感覚がある。
オープン戦では16試合に出場し、打率2割6分2厘、2本塁打、5打点をマーク。「去年だけじゃなかった。ちゃんと継続すれば、今年も打てると自信になったキャンプでした」と昨季の中で見つけたものをそのまま今季へつなげている実感を口にした。昨年の結果が一時的なものではなく、今季へつながるものだという確信がにじんでいる。
もちろん、打席の中で常に迷いなく立てるわけではない。「空振りたくないとか、変化球やったらどうしようとか。真っ直ぐかな」と配球を読もうと考え出すこともある。だからこそ、打てなかった時もただ結果だけで終わらせるのではなく、その打席で何を考えていたのかを確かめる。
そうすることで、メンタル面にも変化はあった。以前は「結構引きずってしまうタイプ」だったが、今は「考えてもしょうがない、無意味だな」と切り替えを意識できるようになってきた。「しっかり集中できている中で、そういうことを考えてなくて打てていないなら、もう仕方ないかな」と過程と結果を切り分けて受け止める今の姿勢が表れている。
昨季に「1年間メンタルも体もしんどかった。やっぱり気持ちの方がしんどい」と感じたからこそ、1打席、1試合を必要以上に引きずらず、次へ向かうことの大切さも身に染みた。
「今宮さんは怪物やな」野村勇はその背中を越えられるか
[caption id="attachment_238096" align="alignnone" width="530"] 福岡ソフトバンクホークスの野村勇(写真:産経新聞社)[/caption]
5年目のシーズンもまもなく開幕する。ショートへのこだわりは、「今でも強い」とその思いは変わらない。昨季、自らもシーズンを戦うしんどさを知ったことで、13年連続で開幕遊撃を務めてきた今宮健太の凄さもあらためて実感した。
「それを何年も連続でやっているって考えただけで、今宮さんは怪物やなと思います」。それでも、「開幕ショートでスタメンを勝ち取るのは目標です」と目指す場所は変わらない。尊敬する相手だからこそ、真正面から競い合い、その背中を越えたい思いがある。一方で、「けどチーム事情もあると思うので、自分の与えられたポジションでできることやりたいです」とも話しており、求められた役割を果たす姿勢も崩さない。
その先に見据える数字も明確だ。まずは規定打席に立てるだけの出場機会をつかむこと。「そうなればレギュラーと呼べるかなと」と、その先に20本塁打という数字を見据える。
「今年は、終わって振り返ったときに20発ぐらい打っていたら、いいシーズンだったと言えると思う」。さらに「もちろん全試合出たいし、全試合出場して打席に立って20発打ちたいです」と続けた。
昨季の12本塁打を土台に、今季はさらに上を目指す。そのために必要なのは、まず試合に出続けることだと分かっている。
遊撃の定位置、規定打席、そして20本塁打。野村勇の勝負の5年目が、まもなく始まる。
(取材・文:灰原万由)
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