
『Octane』UK寄稿者による愛車レポート。今回は、マーク・ディクソンが1970年ローバー3500Sのベアリングの不調の原因を追究する。
【画像】愛車の窮状を毎回救ってくれる頼れる旧友とともに(写真3点)
自分の車を自分で整備すると、満足感は高く楽しいことも多いが、ときにはプロに任せた方が賢明な場合もある。ローバーの後輪ベアリングの不調が始まった時、そう判断して本当に良かったと、心の底から思った。
最初の1カ月は、1800マイルをトラブル無しで走破した。「トラブル無し」とは言っても、次第に大きくなる、唸るような異音は別だった。ホイールベアリングが寿命を迎えつつあるときの、あの典型的な音だ。でも、どのホイールなのかわからない。判断がつかなかったので、私はウスターシャー州マルヴァーン近郊にいる旧友デレク・マグラスのもとへ車を走らせ、彼の意見を聞くことにした。
デレクは非常に有能なエンジニアで、これまでに私が所有したフォード・モデルAからランボルギーニ・エスパーダに至るまで、いくつもの大掛かりな作業を手がけてくれた。我々は紅茶を数杯嗜みつつ、テストドライブに出かけた。その後各ホイールをひとつずつジャッキアップして手で回し、異音の発生源の特定を試みた。すぐにはわからなかったが、デレクは右後輪だろうと判断した。そこで彼に交換対応を依頼し、私は自宅に戻って新しいベアリングキットを注文することにした。
ローバー後部の各ユニットには、2つの円錐形のローラーベアリングの溝と、その間に圧縮スペーサーチューブがある。整備マニュアルによると、ベアリングはそこで組み立て、緩やかにトルクをかけて締める。そうすることにより中央のチューブが少し変形して対応する仕組みだという。これができるのは、チューブの片方の先端が直線ではなく(私たちが確認した通り)ベルのような形状になっているからだ。
ローバーP6パーツの専門業者へ、コンプリートキットを注文した。高かったものの、安価で現代的なパーツではなく、新品のGKN製旧在庫ベアリングだった。付属品として、いわゆるスペーサーチューブも含まれていた。だが実際には、それは単なる鋼管の切れ端で、潰れる気配は微塵も無かった。ベアリングの仮組みをしてみたデレクは、このセットが絶対に使えないことにすぐ気づいた。
しかし賢い彼は、新しいパイプを旋盤に掛け、若干長めに切断し、片方の端を少しだけ削り取り始めた。その後、彼がベアリングの溝の間に数回挿入してみた後、幸いにも旋盤で追加切削を施すだけで、マニュアルに記載されている抵抗値に正確に合わせることができた。作業完了。デレクの機転のおかげで、このベアリングは驚くほど静かで滑らかに回転するようになった。
また彼は単なる好奇心から、車体から取り外した古いベル型のスペーサーを油圧プレスにかけてみた。すると、5トンの圧力で変形し始めた。しかし、ベアリングキットに付属していた平行側面のスペーサーで同じように実験してみると、12トンを加える必要があった。それと、チューブは車軸にきつめの干渉でフィッティングされていたため、変形しだした瞬間に完全に噛み込んで詰まってしまっていただろう。
あらためて思う。クラシックカーを所有する人なら誰しも、その人生にデレクのような人物が必要だ。彼が私の人生にいてくれることを、心から嬉しく思う。
文:Mark Dixon