フジテレビの清水賢治社長が30日、東京・台場の同局で記者会見を行った。約1時間にわたって行われた記者との全やり取りの概要は、以下の通り。
――就任1年の所感と、2026年の目標は?
まだ十分に振り返る余裕はないが、この1年は最優先で「人権方針=人権を尊重する会社に生まれ変わる」改革に取り組んだ。ガバナンス面では取締役会構成をコンパクトにし、独立社外取締役の導入や女性比率3割以上などを進め、外部の目を入れることを重視してきた。2026年はガバナンス・コンプライアンス改革を続けつつ、「本来の事業改革」を加速し、放送起点ではなく“コンテンツ起点の会社=真のコンテンツカンパニー”として力をつける施策を打ち出したい。
――月9の好発進やF1・サッカー放映権などを踏まえ、今後の制作の展望は?
月9は配信も回っており手応えがある。F1やサッカーのような大型スポーツは、無料でアクセスできる良質なコンテンツ提供や地上波価値向上にも資する。こうした編成を行いながら、独自のオリジナルIPをどれだけ立ち上げられるかが重要になる。
――CM出稿(スポンサー数等)の状況は?
2025年10月以降、回復が顕著。2026年1月も回復傾向が進み、スポンサー数は前年比で93%程度。スポットも80%台半ばまで戻っており、4月改編で可能な限り100%に戻すべく取り組んでいる。
――スポンサー数は93%でも単価が下がっていると聞く。単価の前年比、結果としてCM売上金額の前年比は?
単価は開示していない。売上は決算で開示するため、そこで確認してほしい。
――“物言う株主”との交渉(不動産売却、自社株買い等)は進んでいるのか。特定株主への利益供与になるようなことは「あり得ない」と断言できるか。
それは親会社のフジ・メディア・ホールディングスの話で、この場(フジテレビジョン社長会見)では答える立場にない。仮に答える立場でも、個別株主・投資家とのやり取りは開示していない。
――フジ・メディア・ホールディングスが不動産事業を切り離す場合、制作費など制作面への影響は?
不動産事業の利益がフジテレビの制作費に回る構造ではない。制作費はフジテレビ自身の中でどう回すかの話。制作費はコンテンツを生み出す源泉で、投下すべきものは投下する。放送番組としての制作費と、コンテンツ投資としての制作費の二面があり、回収可能性がある投資は上限を設けない考え方で進めている。
――“楽しくなければテレビじゃない”からの脱却を掲げるリブランディングプロジェクトの進捗と、今後の打ち出しは?
リブランディングはサステナビリティ経営委員会の一環として実施し、「社員が自ら考える」ことを軸に、若手中心メンバーが社内で対話を重ね、外部も交えてゼロベースで検討中。スローガンやキーワードが出てくる可能性もあり、それがパーパス・ミッション・バリューにつながっていく。2月中に中間的なもの、3月末までにもう少しまとまったものが出る見込み。
――制作費を前年比2割ほど絞っているように見える。問題前水準へ戻す道筋は? 限られた予算で成果を出すには?
開示資料上、制作費が減っているのは見て取れる。来年度も放送収入の回復見通しが不確かなため、基礎番組(タイムテーブルを作る基礎的番組)の番組費は抑制的にする。一方で「投資として回収できる」なら、配信・映画・二次利用(商品・グッズ等も含む)で利益が出る場合はより多く投下してよいという判断。回収できるなら投資額も大きくなるという投資効率の考え方。
――制作現場の企画の出し方など、意識は変わってきている?
まさに変えている最中。投資の考え方が浸透するには時間がかかるが、社員は頭では理解しており、具体的な企画に結びつくことを期待している。
――放送に縛られず打って出る考えは?
放送“だけ”ではないということ。テレビ広告市場は依然大きく、放送競争でも勝たねばならない。ただ制作・プロデュース部門は放送番組しか作れないわけではない。放送最優先でリソースを寄せすぎた結果、視聴率の枠に合わない企画が通らず機会損失が生まれた面がある。今後は全方位に解放し、まず企画は「通す前提」で考え、その上で放送にも使うという発想にしていく。
――メディアコンテンツ事業の利益水準が低い点を踏まえ、どう伸ばす方針か。
まず「IP創出」が川上として重要。次に、生まれたIPの市場を大きくする。メディアを持つコンテンツ企業として、認知・リーチを活かして市場拡大を図る。ただ具体策は今の段階では発表できない。ベンチマークは他局だけでなくコンテンツ企業群であり、グループ内にないなら創出も含めて考える。
――アクションプランの新しいものを近く公表する考えは?
必要であれば発表する。
――一連の問題を理由にした退職者はいるか。新卒採用応募への影響は?
退職者数は開示しておらず、当該事案の影響かどうかも把握しきれない。クリエイティブ部門は外資OTT等へ人材流出もある一方、今年は中途採用で入ってくる人も多い。採用総数については影響が出ていると聞いているが、具体数は言えない。
――『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ』を定期的に放送してきたが、昨年はなかった。MCの石橋貴明さんの事情(療養等)や、一連の問題は影響したか。
当時の体調面なども含め、総合的に判断した結果。
――中居正広氏への損害賠償請求について、現在の考えは?
以前の回答から内容は変わらない。因果関係など法的論点を詰めて検討している。ただ被害女性への負担、二次被害や誹謗中傷の発生も考慮し、慎重に対応したい。
――中居氏との調査・やり取り、コミュニケーションは続けているのか。
それについては答えられない。
――『千鳥の鬼レンチャン』総合演出の“パワハラでクビ”という報道の事実関係は?
個別社員の詳細は答えられない。報道後、外部弁護士を入れて調査等を行っているが、個人情報保護の観点もあり説明が難しい。
――前社長の港浩一氏、元専務の大多亮氏への訴訟提起後、新たな動きは?
訴訟なので粛々と進行している以上のことは言えない。
―― 経費不正や情報漏えいなどの処分が続く。どう受け止め、今後どう対応する? また公表が抽象的だが基準は?
懲戒解雇まで至ったのは残念。ただ、ガバナンス・コンプライアンス改革の徹底過程で覚知し、外部弁護士の調査や慎重なヒアリングを踏まえ、規定に則って判断した。公表は人事処分の詳細を開示しないのが原則。今回、重い処分で、(個人特定につながらない範囲で)報道に関係する人間だった点は、報道機関として責任の重さを踏まえ言える。
――今回の社長会見をこのタイミングで実施した理由は?
新年を迎えた節目は大きい。社長が定期的に会見し対話するのは、開かれた会社としてやるべきで、再開方法を検討してきた結果が今回。現形式がベストかは分からないが、以前より多くの人と会話できる形を目指した。
――先ほど「フジ・メディア・ホールディングス社長としての立場ではない」「個別株主への言及は難しい」との回答を踏まえた上で伺う。現在進めている自社株買いの結果として、不動産事業分離などを求めている旧村上ファンド側の議決権比率が上昇していると思われる。これをどう受け止め、今後自社株買いをどう進める方針か。
今申し上げられることは、自社株買いの方針は11月に開示している改革アクションプランおよびキャピタルアロケーションに書いてあることがすべてということ。そこには2,500億円の自己株買い枠を設定し、2029年までに実施すると開示している。この枠の中で、今進めているのが500億円の自己株買いで、現在市場で進行中。それ以上のことは、プランとして出している以上には言えない。
――昨年から今年にかけて処分事案が複数あったが、一連の事案から1年が経った現在、もう全て膿を出し切った現状なのか。あるいは今後も内部調査を続け、処分事案が出てくる可能性があるのか。
最近開示した処分は、最近発覚したというわけではない。昨年4月以降の社内調査(外部からの報道で把握したものも含む)の過程で覚知したものについて、一件一件、外部の弁護士にも入っていただいて調査を進めてきた結果。
この調査は、申告者の心理的安全性を確保しながら進めなければならず、調査の過程で新たな人権侵害が発生してはいけないという点を弁護士の先生方が最も重視する。そうすると1件の調査が何カ月にも及ぶことがあり、ヒアリング一つ取っても安易にはできない。
結果として「最近もまだ出てきている」と見えてしまうのは致し方ない面があるが、出てきたものについては改革で申し上げた通り厳正に処分し、外に開示できるものは開示していく。適切な調査と対応のプロセスを踏んでいるからこそ、こうなっているとご理解いただきたい。
――港前社長らとの訴訟について。10月末に予定されていた公開法廷での審理がなくなり、現在はウェブ上での手続きが進んでいると承知している。プライバシーを守るべき方がいる点は理解するが、秘匿情報を秘匿した上で公開の場で審理を進めることで、御社が人権改革を進めていることを対外的に示すこともできるのではないか。判断理由を教えてほしい。また、このままウェブで進めて和解となった場合、何らか公表の場を設ける予定はあるのか。
裁判の受け入れ方については、かなり慎重に判断・検討した結果、今の形となっている。これについてはこのままの形で進めていきたいと思っている。
どのぐらい時間がかかるかは、裁判の初期段階なので正直まだ分からないが、このスピード感で見ていると数年はかかるのではないか。何らかの結果が出た時には、その時にまた判断したいと。
――清水社長はフジ・メディア・ホールディングス(FMH)とフジテレビジョンの社長を兼ねている。兼務のメリット・デメリットをどう考えているか。また兼務体制を解くなら、いつ頃が適切だと思うか。
デメリットは、あまりにも忙しく、過重労働だということ。ただ、フジテレビもFMHも有事の事態で対応しており、2社の連携を取り、改革のスピードを速め、トップの意識を全体に隅々までコミットすることを考えると、形がしっかり出来上がるまでは、私が兼務している方が会社の改革にとっては良いのではないかと思っている。(兼務を)いつ解くかは、ある程度、普通の状況に戻って巡航速度になったところで考えられることだと思う。
――社員の処分について。今回、懲戒解雇になった方が出たが、昨年6月の処分発表時は解雇の方がいなかった。あの時よりも今回の方が重い事案だと判断したという理解でよいか。
懲戒処分はかなり慎重に判断している。我々の中だけで決めず、調査自体も外部弁護士に入っていただき、処分内容についても複数の弁護士事務所に入っていただいてセカンドオピニオンを取り、外の会社だったらどういう処分が適当かといった様々な事例も勘案して判断している。今回そのような結果になったということは、それだけ重たかったということになる。
