東京・吉祥寺に12月13日、あんかけパスタ専門店『親父のあんかけパスタ』がオープンした。元BE:FIRSTのメンバーで、俳優、アーティスト、実業家としての顔を持つ名古屋出身の三山凌輝さんがプロデュースした同店。「幼いころからの大好物であるあんかけパスタ文化を東京でも広めたい」という思いで、都内初となる専門店のオープンにふみ切ったそう。オープン初日には4時間待ちの大行列ができたほど話題性は抜群だが、そのあんかけパスタのお味のほどは……? 吉祥寺在住のライターが食べに行ってきた。
1号店の場所がなぜ吉祥寺かというと、プロデュースした三山さんが、東京に上京してきた時に初めて住んだ“第3の故郷”だからそう。店は吉祥寺駅から徒歩5分ほど。レンガが敷き詰められた通りに、おしゃれな雑貨屋や飲食店が並ぶ吉祥寺を代表するショッピングストリート・中道通り沿いの新商業施設「NAKAMICHI GARDEN」1階の奥に構える。
オープンから5日後の平日14時頃に行くと、店の前には順番待ちしている6名のお客さんが。寒さ厳しい12月、それも混雑が予想される週末とランチタイムのピークを外して訪れたものの、待ち客がいるとは、さすが話題の店。
店頭に大きな看板があるわけでもなく、芸能人がプロデュースするお店とは思えないほど控えめな店構え。ガラス窓から中をのぞくと、やはり賑わっている。待っている間も食事を終えたお客さんがぞろぞろ出てきたので、回転率は良さそう。この時は、並んでから待つこと20分ほどで入店することができた。
店内は縦に長く、ずらっとテーブル席が並んでおり、一番奥のカウンター席と合わせて約24席。奇をてらった派手さはなく、食堂のような温かみあふれる雰囲気だ。北欧で「幸運をもたらす縁起の良い木」と言われる白樺の木は、三山さんのこだわりで設置されたとか。
席に座り、店内の様子を伺うと、客層の幅広さに驚いた。三山さんのファンと思しき女性客やカップルなどの若者の姿も見受けられたが、子連れ女性からスーツ姿のサラリーマン、近所に住んでいそうなシニア世代の方もちらほら。平日の昼下がりということもあり、ひとり客が圧倒的に多かった。
あんかけスパゲティは、1960年代に生まれた名古屋のソウルフード。とろみのある特製のピリ辛トマトベースソースに、ラードや植物油で香ばしく炒めた太麺と具材を合わせたもので、名古屋民に愛され続けるB級グルメだ。この店のあんかけパスタのレシピは、三山さんが幼少期から通っていた名古屋の名店のマスターから直接受け継いだもの。その店が閉店してしまったため、伝統の味を継承するためにマスターからレシピや作り方を教えてもらい、忠実に再現しているそう。店で腕を振るうのは三山さんの実の父親ということも話題になったが、この日は休憩中だったのか、親父シェフの姿は厨房にはなかった。一目見たかったが、残念!
席に着き、メニューをチェック。専門店ということもあり、メニューはドリンク以外、あんかけパスタのみ。あんかけパスタは4種類。そこにハンバーグやシーフード、エビフライなど9種類のトッピングを追加することができる。
この日は、あんかけパスタのド定番「ミラカン(ミラネーズカントリーの略)」(1,400円)と、根強い人気と書いてあった「ふわたま」(1,500円)に、「タチホコ」(エビフライ)トッピングの2品をオーダー。ほどなく、隣の席のおばさまの前にあんかけパスタが運ばれてきて、そのボリューム感に驚きつつも、トマトソースの香りが鼻腔をくすぐり、期待が膨らむ。
待つこと約10分。人気No.1の「ミラカン」が運ばれてきた。おおお、たっぷりのソースの中に太麺とたっぷりの具がそびえ立っている! 具は赤ウインナー、ハム、ベーコン、オニオン、ピーマン、マッシュルームの6種類。麺だけでも300gあるという圧倒的なボリューム感。
まずはあんかけパスタの要である、ソース単体を味見した。あんかけというほど粘度は高くなく、さらりとした口当たり。そして思った以上に、ケチャップソースの酸味と、ブラックペッパーの辛味が後を引くパンチのある味わい。ひき肉も入っているのでソース自体にも奥深さを感じる。これはアリ! これを麺と絡めた時、どんなケミストリーが生まれるのだろうか。
皿の中でソースと麺を混ぜてから、具と一緒に口に入れると、思わず「うまっ」と声が漏れた。さらりとしたあんが麺によく絡んで、ソースの旨味が洪水のように押し寄せる。しっかりと炒められた太麺はモチモチの中に香ばしさがあり、ソースの味わいを引き立たせる。濃厚だが、くどさは一切なく、噛むほどに旨味が広がる。ソース、麺、具の三位一体の絶妙なバランスで、飽きることなくあっという間に完食。
もう1品の「ふわたま」(1,500円)は、あんかけは変わらず、具なし麺の上にふんわり卵をのせたオムライス風。そこに追加トッピングした「タチホコ」(300円)なる名前のエビフライが3本鎮座。この大きさは、さすがエビフライも名物である名古屋発祥ならでは!
エビフライは後ほどいただくとして、まずは「ふわたま」を実食する。卵焼きがソースと麵がなかなか絡まず、少々てこずった。これ天津飯のように、あんかけを卵の上にかけたら、もっと食べやすいのではないかと一瞬思ったが、それは“あんかけパスタ界”では邪道なのだろう。郷にいては郷に従え。一口食べて、これはこれでアリ! と確信した。
とろとろの卵のまろやかさによって、酸っぱ辛いソースのパンチが中和され、「ミラカン」より優しい味わいに。卵好きならこれ一択かも。そしてエビフライは、しっかりと下味が付いているため、何もつけずに食べても美味しいが、あんかけをつけて食べると、よりコク深くなって旨さが倍増。
パスタのお供にオーダーしたドリンクは、「おもひでのメロンソーダ」(900円)とコーヒー(900円)。メロン風味をしっかり感じられる爽快感のあるメロンソーダは、この程よい甘みとソーダの後味が、あんかけパスタとめちゃくちゃ相性がよく、この組み合わせハマりそう。
コーヒーはエチオピア、タンザニア、インドネシアの3種類あり、産地直送の豆を使用しているため上質なアロマの余韻が感じられる。ちなみに11:00~14:00のランチタイムは、あんかけパスタとコーヒーのお得なセットもあるようだ。
鳴り物入りでオープンした店とあって、正直そこまで期待していなかったのだが、実際に食べてみたら、名店のレシピを再現してしっかりと作り込まれており、お世辞抜きで美味しかった。隣のおばさまもぺろりと平らげていて、幅広い世代に愛される一皿かもと感じた。新しさの中に懐かしさも感じられ、また食べたくなる、中毒性のある味。これは食のレベルが高い東京でも流行るかもしれない。わざわざ吉祥寺に来て食べる価値あり、です。
■information
「親父のあんかけパスタ」
住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町2-26-2 NAKAMICHI GARDEN 1F
時間:8:00~22:00、不定休









