広島で有名なものといえば「嚴島神社」「平和記念公園」「お好み焼き」「牡蠣」。それは誰もが知る定番の魅力だが、「広島発ジャパニーズウイスキー」や「世界で最も美しい美術館」など、近年新たな魅力が続々と登場している。広島県主催の「広島の美食とクラフトマンシップ&世界で最も美しい美術館を堪能するツアー」に参加し、2025年の今注目の広島の観光スポットを取材した。
→「世界で最も美しい美術館」と評される広島県の注目スポットに行ってきた
知識豊富な店主の話とともに「瀬戸内さかな」を味わい尽くす
広島の牡蠣はおいしい。一方で瀬戸内海に面する広島は、当然「魚」もおいしいのだが、どういうわけかあまり知られていない。広島県の海は瀬戸内海の中でも浅く、内湾や島周辺は魚の産卵場所になっており、季節ごとに多種多様な魚を楽しめるのが大きな特徴だ。
そんな広島近海で獲れる「瀬戸内さかな」を味わいたい時に、うってつけの寿司店が中区胡町の「鮨稲穂」。店主の三原美穂さんは江田島出身で、瀬戸内さかなの豊富な知識があり、広島らしさを表現する「瀬戸内前鮨(せとうちまえずし)」を提供している。
ランチのおまかせコースは、基本的にお通しからはじまる12貫(9,900円)。この日最初に登場した「ハモのしゃぶしゃぶ」は、三原さんと同じ江田島出身の漁師・野村幸太さんから仕入れたハモを使用。ハモは夏のイメージがあるが、気候変動などもあり、瀬戸内のハモは取材に訪れた11月中旬が最もおいしいんだとか。鮨稲穂では三原さんが目利きした、今、おいしい瀬戸内さかなが食べられる。
「こんなにも白身を食べ比べられるのは、瀬戸内ならではですね」と、三原さんが話すように、瀬戸内さかなの大きな魅力は「白身魚」。今回はトラフグ、オコゼ、真鯛、サワラ、カワハギ、穴子と12貫中半分が「白身魚」だった。同じ白身魚といってもプリッと歯ごたえを残した「オコゼ」、スッと脂が溶けていく「サワラ」、ふわっふわの身が口いっぱいに広がる「穴子」など、違う味わいを楽しませてくれる。5日間真空状態で熟成させた地アジはまったく臭みを感じさせず、三原さんの職人技が光る味だった。
広島発のシングルモルトウイスキー蒸留所「SAKURAO DISTILLERY」
日本の三大酒処といわれる「西条」をはじめ、酒の製造が盛んな広島。日本酒だけではなく、「ウイスキー」や「ジン」がつくられているのはご存知だろうか。サクラオブルワリーアンドディスティラリーが2017年に立ち上げた「SAKURAO DISTILLERY」(廿日市)は、広島初のシングルモルトウイスキーや、広島県産原料を使った初の純国産ジンを製造する蒸留所。ダルマ焼酎も製造するサクラオブルワリーアンドディスティラリーは1918年創業で、創業100年をきっかけにSAKURAO DISTILLERYのプロジェクトをスタートしたという。
SAKURAO DISTILLERYでは蒸留所見学(1人2,000円)が可能。日本語もしくは英語で、モルトウイスキー、グレーンウイスキー、ジンなどの作り方をガイドが案内してくれる。ジンとウイスキーは同じ蒸留器を使っており、この日はちょうどウイスキーを仕込んでいる様子も見学できた。
ちなみにシングルモルトウイスキーの「桜尾」と「戸河内」の違いは、熟成する場所。熟成前は同じウイスキーながら、それぞれの環境が反映された味になるという。蒸留所見学ではシングルモルトウイスキー「桜尾」の貯蔵庫に実際に入ることができ、ウイスキーの香りに包まれながらそのおいしさの秘密にふれられる。
蒸留所見学の最後はビジターセンターに移動し「試飲タイム」。ウイスキーやジンなど複数のお酒から、好きなものを3種類テイスティングできる。蒸留所の貯蔵庫で熟成させたウイスキーなど、ここでしか味わえない限定品を楽しめるのも、見学ならではの魅力。
エキニシエリアで、注目度上昇中の「コウネ」に舌鼓
美食の街「広島」では夜に飲み歩きたくなるようなお店が豊富にある。広島駅からふらっと立ち寄れるのが、ディープな昔ながらの赤提灯居酒屋から、若い人が集まるおしゃれな居酒屋まで軒を連ねる「エキニシエリア」だ。エキニシの「バルタン本店」(広島市)は新しさを感じる店構えで、カウンターだけではなく奥に席が広がっており、グループにもおすすめ。
ここで味わいたいのは、「和牛 コウネ 月見炙り」(1,380円)。「コウネ」とは牛肉の肩バラ肉で、ほかの部位よりも硬く、薄切りにして食べるのが広島流だ。コウネは他県だと別部位の一部として食べられているものの、コウネだけを切り取って食べるのは戦後、肉の文化が発展してきた広島ならではの食べ方で、今再注目されている。店によって提供方法は変わってくるが、バルタン本店が提供するすき焼き風の味付けで卵をつけて味わうコウネは想像よりも柔らかい。広島独自のグルメをおいしくいただいた。
バルタン本店はお酒の種類が豊富で、レモンサワー、SAKURAO DISTILLERYのジントニック、40種類以上の広島の日本酒などを楽しめる。例えば広島の酒都・西条の老舗「亀齢(きれい)」の日本酒は広島県以外では手に入りにくく、広島に旅行に来たからこそ味わいたいお酒のひとつである。
幻の牛・比婆牛も、やっぱり牡蠣も「牡蠣と肉と酒 MURO」
今の広島ならではの地産地消グルメを味わえる、新しいお店が2024年にオープンした「牡蠣と肉と酒 MURO」(広島市)。平和大通りに面しており、広島の中心地にあるメジャーなホテルからも歩いて行ける距離だ。築70年以上の木造建築をリノベーションしており、木の温もりと洗練された空間デザインも心地よい。
MUROは広島の生産者や職人がつくる食材を約9割使用していて、近年話題を集めている「比婆牛(ひばぎゅう)」も提供。飼養頭数が少ないため幻の県産高級和牛と呼ばれており、 MUROでは部位ごとに一頭買いをしているためさまざまな部位を味わえる。中でも「比婆牛のヒレ ステーキ100g」(8,800円)は、人肌で溶けてしまうほど脂の融点が低いという比婆牛の特徴を感じられるおいしさ。口に含むと上質な脂が溶けていき、くどさはない。赤みの深みも感じられる絶品の比婆牛は、広島に訪れたからには味わいたいグルメだ。
比婆牛もおすすめだが、広島に来て「牡蠣」を食べずに帰らないわけにはいかない。 MUROでは広島県産の牡蠣を生で、酒蒸しで、フライで、アヒージョで、水餃子で楽しめる。殻付きの牡蠣は呉市音戸産のブランド牡蠣「かきむすめ」。「殻付き焼き牡蠣」(1個 770円)は濃厚&クリーミーで、白ワインとのマリアージュも楽しめる。
おしゃれなのに、リーズナブル「THE KNOT HIROSHIMA」
世界中の観光客が集まる広島では、ゲストハウスからラグジュアリーホテルまでニーズに合わせてさまざまな宿泊施設が選べる。「THE KNOT HIROSHIMA」(広島市)はルーフトップバーが楽しめる洗練されたライフスタイルホテルで、外国人観光客にも人気だ。宿泊者は配布されるチェックイン時に渡されるホテルオリジナルのコインを使用し、バーの飲み物やフードを無料で楽しむこともできる。
客室はホテルオリジナルの照明など、シンプルながら細部までこだわったデザインに心惹かれる。宿泊料金はクイーン1泊朝食付き1万3,460円〜(変動あり)。
THE KNOT HIROSHIMAは「朝食」も名物。選べるメインのプレートに加えて、西洋風の惣菜、カラフルなサラダ、プロシュート、自家製グラノーラなどをビュッフェスタイルで楽しめる。
選べるメインはオムレツ、サーモングリル、アサイーボウルなど。サーモングリルはヤギのチーズとアボカドとのハーモニーも楽しめる一皿だ。ホットコーヒーは広島で人気のコーヒーショップ「ARCHIVE COFFEE ROASTERS」のコーヒー豆。おいしい朝食と上質なコーヒーで始まる広島の朝は、とても心地よい時間だった。
定番のみならず、新たな美食を楽しめる観光地として進化している「広島」。「瀬戸内さかな」など、以前からあった魅力も再発見し、食の豊かさを体感できた。白身魚の寿司を食べ比べ、広島発ジャパニーズウイスキーを試飲し、コウネと比婆牛に舌鼓。「旅の目的はグルメ」という人に、今、勧めたい旅先だ。
取材協力: 広島県















