不十分だとプロジェクトの進行に大きな影響を与える一方で、上手くいけばクライアントも含めて大きなメリットをもたらすことができる「ヒアリング」。

「でざいん姉さん」としてSNSで日々デザインに関する発信をしている佐野五月氏は、「ヒアリングの質がプロジェクトの成功を左右する」と指摘します。

佐野さんの新刊『デザインはヒアリングからはじまる』(マイナビ出版)から一部を抜粋し、クライアントと制作者、双方にメリットを生み出すヒアリングの方法を解説します。

  • 過去のヒアリングを振り返るためのチェックシート

    過去のヒアリングを振り返るためのチェックシート

ヒアリングが不十分だとどうなるの?

もしもヒアリングが甘いままだと、どんな問題が起きるでしょうか。主な例をいく つか紹介します。

1:クライアントの目的が達成できない

ヒアリングが曖昧だと、「誰に」「何を伝えたいか」の軸がずれたまま進んでしまいます。その結果、「見た目は良いけれど反響がない」「問い合わせが増えない」など、本来果たすべき目的を達成できず、クライアントの満足度も下がってしまいます。

2:リテイクが多くなる

必要な情報をしっかり聞き取らずに作りはじめると、「ここを直してほしい」「やっぱり元に戻して」など、修正のやり取りが繰り返されやすくなります。作業時間が増えるだけでなく、関わる人たちのやる気にも影響します。

3:ミスが増える

「ロゴが古いまま使われていた」「最新の原稿が反映されていない」といったミスも、ヒアリングできちんと確認していれば防げることです。聞き漏らしが重大なトラブルにつながることもあります。

4:プロジェクトの遅延

修正やミスが重なることで、当然スケジュールも遅れがちに。再撮影や再印刷、追加コーディングなど余計な労力やコストも生じ、最悪の場合、信頼関係が損なわれることもあります。

5:追加作業・追加料金が発生する

やり直しや追加作業が増えれば、そのぶん費用もふくらみます。どこまで誰が負担するのかを話し合わなくてはならず、これがクライアントとの関係を悪くする原因になることも。結果として、クライアントの負担も増えてしまいます。

  • ヒアリングが十分でないと、デザインそのものの質まで下がる場合も

    ヒアリングが十分でないと、デザインそのものの質まで下がる場合も

ヒアリングの成功で生まれる「3つのメリット」

一方で、ヒアリングが成功すると、プロジェクトにおいて「効率・提案・信頼」という3つの大きなメリットが生まれます。

【効率】プロジェクトを無駄なく進められる

  • やりとりの手間が減る

「伝えたつもりだった」「聞いていなかった」といった認識違いが起こりにくくなり、確認や修正にかける時間や手間が大幅に減らせます。

  • リテイク(修正依頼)が減る

最初に考え方のズレをなくしておくことで、「何を・どんなふうに」進めていくかが明確になり、「ここを直して」「やっぱり戻して」など曖昧な修正も減ります。

【提案】提案の幅と質が高くなる

  • クライアントの“本当の目的”に合った提案ができる

表面的な「こうしたい」という要望だけでなく、「なぜそうしたいのか」という本当の目的に目を向けることで、より適切で価値のある提案につながります。

  • デザインや提案の説得力が増す

ヒアリングの中で得た言葉や背景を反映させることで、提案内容の意図や理由をスムーズに伝えられるようになります。

  • クライアントの「本当の目的」に合った提案が可能になる

    クライアントの「本当の目的」に合った提案が可能になる

【信頼】信頼関係が強くなる

  • クライアントの思いに寄り添える

丁寧に話を聞くことで、クライアント自身が「実はこうしたかった」と気づくこともあります。

  • 意見交換から、より良いアイデアや解決策が生まれる

対話を重ねることで、「一緒に進めている」という安心感が育ちます。信頼関係が深まることで意見が交わしやすくなり、思いがけないアイデアや効果的な対応策が見つかることもあるのです。

ヒアリングは誰のための時間?

一般的に「情報を引き出す」「内容を擦り合わせる」など、ヒアリングは制作者側にとって必要な時間であると思われがちですが、本来、ヒアリングはクライアントにとっても多くのメリットがある大切な工程です。

私たち制作者が丁寧にヒアリングを行うことで、「考えが整理された」「思いが言葉としてかたちになった」「仕事の流れがスムーズになった」など、クライアント自身にもたくさんの“よかったこと”が生まれます。

ヒアリングを制作者にとっての情報整理の時間として終わらせず、クライアントとより良い関係と成果を築いていくために重要なステップだという意識を常に持つようにしましょう。

クライアントにとってのメリットの一例

  • 本当の思いが明確になり、依頼内容への納得感が生まれた

  • 方針が共有できたことで、安心して任せられると感じた

  • 進め方を事前に確認できたので、途中で迷わず進行できた

このような“クライアントにとってのメリット”は、制作者がヒアリングを丁寧に行い、しっかり意見交換を積み重ねたからこそ得られるものです。

プロジェクトがはじまるときにヒアリングで信頼関係が築ければ、その後のやり取りも格段にスムーズになります。こうして、お互いにとって心地よいパートナー関係ができあがります。

  • 「ちゃんと聞いておけばよかった」と後悔しないために、ヒアリングを重要なステップとして意識することが大切です

    「ちゃんと聞いておけばよかった」と後悔しないために、ヒアリングを重要なステップとして意識することが大切です

書誌情報

書名:デザインはヒアリングからはじまる
著者名:佐野五月
書籍:2,497円
電子版:2,497円
判型:A5
ページ数:272ページ
発売日:2025年11月21日
ISBN:978-4839988067
マイナビBOOKS
Amazon

2026年1月24日、大阪で出版記念イベントを開催

『デザインはヒアリングからはじまる』の発売を記念して、イベントを開催します。 詳細は、マイナビBOOKSの特設ページをご確認ください。

<概要>
日時:2026年1月24日(土) 14:00開場/14:30開演/16:30終演予定
場所:株式会社マイナビ大阪支社 マイナビルーム(〒530-0011 大阪府大阪市北区大深町4番20号 グランフロント大阪 タワーA 31階)
参加費:
書籍+チケット 5,000円(税10%込み)
チケットのみ 3,000円 (税10%込み)
定員:80名 ※先着順

<内容>
・ヒアリングテクニックが学べるデザイン姉さん特別セミナー
・佐野さんが考える「ヒアリング」の力とは(宮田シロクさんとのお仕事事例)
・Q&Aコーナー

<出演者プロフィール>
佐野五月
アートディレクター・ブランディングデザイナー

宮田シロク
仕事運専門占い師。副業から独立した経験をもとに、西洋占星術で個々に合った働き方を設計。がんばり方のズレを整え、「好き」を仕事にする方法を提唱。モットーは「ヘルシーに働く」。