米Adobe主催の年次イベント「Adobe Max 2025」が、10月28日~30日(現地時間)に、ロサンゼルスで開催されました。オープニングキーノートでは生成AI「Adobe Firefly」を中心に、数多くの製品やサービスのアップデートが紹介されたほか、YouTubeやGoogle、他の生成AIモデルとの連携も発表されました。
Premiere×YouTube、スマホアプリで本格的な動画編集
プロクリエイター向けのツールで知られるAdobeですが、近年は「Creativity for All」を掲げ、テンプレートや生成AIを使ってコンテンツを作成できる「Adobe Express」など、誰もがクリエイティビティを発揮できるプロダクトに注力しています。
2025年にはモバイルファーストのクリエイターに向けて、スマホアプリを相次いで発表。写真編集のAdobe PhotoshopのiPhone版、Android版に続いて、9月末には動画編集のAdobe PremiereのiPhone版もリリースされています。キーノートでは、このPremiere iPhone版がYouTubeショートと連携し、ショート動画を簡単に投稿できるようになると発表されました。
これらのアプリで、より直観的な編集を可能にしているのが、生成AIのAdobe Fireflyです。権利関係がクリアなデータのみで学習し、生成したコンテンツを安心して商用利用できるのが特徴。Photoshop、Illustrator、Premiereなど、Adobe Creative Cloudの各ツールやAdobe Expressに機能として組み込まれているほか、Web&スマホアプリで利用できます。キーノートでは最新の生成モデル「Firefly Image Model 5」のプレビュー版や、楽曲や音声の生成、動画編集といった新機能も発表されています。
生成AI関連ではさらに、2つのトピックスがアナウンスされました。1つはOpen AIのGPT、Google のGeminiなど、サードパーティが提供する生成AIモデルとの連携強化。もう1つは、会話するように要望を伝えることで、コンテンツ制作のプロセスを加速・変革する、AIエージェント機能です。
Photoshop×Nano Banana、外部の生成AIと多数連携
Adobeの会長兼CEOのシャンタヌ ナラヤン氏は、キーノートの冒頭、「AIがクリエイターの力となり、創造性は新たな時代を迎えています。AIによってクリエイターは、シームレスにアイデアに没頭できるようになった。Adobeのクリエイティブツールと生成AIによるアイデアの創出との融合は、私たちのクリエイティブの在り方を再定義するでしょう」と話しました。
また、他の生成AIモデルとの連携強化については、「生成AIモデルにはそれぞれ独自の美的スタイルがあります。アイデアの創出のために、クリエイターにより多くの選択肢を提供することが重要です」と、その理由を説明しています。
キーノートにはGoogle DeepMind担当バイスプレジデントのイーライ コリンズ氏がゲスト登壇。Adobeのデジタルメディア事業部門代表、デイビッド ワドワーニ氏と、両者のパートナーシップについて語りました。
先行スタートしているFireflyのWeb&スマホアプリに加えて、ムードボード作成ツールのFirefly ボード(ベータ)やAdobe Express、最新版のPhotoshopでも、Gemini 2.5 Flash Image(Nano Banana)など、一部パートナーの生成AIモデルがシームレスに利用できるようになっています。
2025年12月1日まで、Creative Cloud ProプランおよびFireflyプランの加入者は、Fireflyおよびパートナーモデルによる画像生成が無制限利用できるので、この機会に試してみたいところです。
Adobe Express×ChatGPT、対話型AIはクリエイティブを変革するか
ワドワーニ氏からはさらに、自分のスタイルを学習させて生成できる「Adobe Fireflyカスタムモデル」についても発表がありました。現在はまだFirefly Webアプリにおいて、プライベートベータとなっていますが、今後が楽しみな機能のひとつです。
一方、昨今注目を集めている対話型のAIエージェント機能を使って、コンテンツ制作を実現するのが、「AIアシスタント」です。
「AIエージェントをクリエイティビティに適用するとどうなるか。私たちはテキストによる対話と直接的なアプリ操作を組み合わせることが、適切なアプローチだと考えています」と、ワドワーニ氏。
「AIアシスタント」(ベータ)の提供が始まったAdobe Expressのデモでは、ハロウィーンをテーマにしたコンテンツにしたいというユーザーの意図をAIが理解し、画像や色、フォントなど、最適なものを提案。ツールを使ってカスタムするだけで、簡単に作成できる様子が紹介されていました。
ワドワーニ氏によれば、Adobe ExpressでAIアシスタントを使えるようにするだけでなく、ChatGPTのような対話型のAIプラットフォームに、Adobe Expressの機能を提供する取り組みも進められているとのこと。
デモではChatGPTにチラシのコピーを考えてもらうとともに、同じ画面にAdobe Expressの機能を呼び出して、シームレスにチラシのデザインが完成していく様子が見られました。
キーノートではこのほかAdobe Creative Cloud各ツールの最新アップデートについても、デモを交えながら詳しく紹介されました。
また対話型のAIエージェント機能を拡張して、SNSの情報や複数のAdobeツールの機能を連携。アイデアを形にするのをサポートしてくれる「Project Moonlight」や、アプリケーションの機能を切り出して並べ、マインドマップのようにつないでワークフローを可視化し、共有できる「Project Graph」など、革新的なツールも発表されています。
「Project Moonlight」はすでにプライベートベータとなっていて、意外に早く利用できるかもしれません。アイデアを思いつくまま話すだけで、狙い通りのコンテンツができあがるなんて、本当にクリエイティブの在り方が変わってしまいそうですが、楽しみに待ちたいと思います。








