ビザ・ワールドワイド・ジャパンが11月6日、企業間取引におけるカード決済の動向・展望をテーマにした「Visa B2Bフォーラム」を開催した。全国の地方銀行やカード発行会社を対象にしたもので、その一部がメディア向けにも公開されており、その内容をお届けする。

わずか0.7%のB2Bカード決済を高めるためには

  • Visaは様々な法人カードを提供している。今回は中小企業がテーマのため、下の2種類のカードがターゲットとなっている

    Visaは様々な法人カードを提供している。今回は中小企業がテーマのため、下の2種類のカードがターゲットとなっている

日本のキャッシュレス決済比率は4割を突破し、国はさらなる拡大を目指している。そのうちクレジットカードが35%を超え、順調に拡大している。ただ、それはあくまで一般的な決済の時の話で、法人同士の請求、支払いにおいてはまだ請求書で銀行振込をするという例が多く、クレジットカードを使って企業間(B2B)の取引は少ない。

  • Visaの法人ソリューションズ本部長の松田海氏

    Visaの法人ソリューションズ本部長の松田海氏

Visaの法人ソリューションズ本部長の松田海氏は、B2Bにおけるカード決済の利用はまだ広がりきっていないと指摘する。実際、2023年には99.3%が銀行振込などで、クレジットカードは0.7%にとどまっていたという。

  • 日本のB2B決済におけるカード比率。わずか0.7%。これはVisaだけでなく他の国際ブランドのカードも加えたもの

    日本のB2B決済におけるカード比率。わずか0.7%。これはVisaだけでなく他の国際ブランドのカードも加えたもの

まだ1%にも満たない数字だが、個人のキャッシュレス決済比率を考えれば「非常に大きな伸び代」だと松田氏は強調する。

海外はB2Bでのカード決済が日本よりも多いと松田氏は説明する。韓国で4.4%、米国で3.3%などとなっており、日本は韓国の1/6程度にとどまっており、他国と比べて後れを取っている。

  • 世界的にもB2Bにおけるカード決済が主流ではないが、日本は大きく出遅れている

    世界的にもB2Bにおけるカード決済が主流ではないが、日本は大きく出遅れている

韓国は日本よりも個人のキャッシュレス決済比率が高く、9割を超えているという調査もある。日本はまだ4割程度のため、さらにキャッシュレス決済比率が伸びれば、B2Bのキャッシュレス決済も伸びると松田氏は推測。韓国と同程度になれば、市場規模は6倍に拡大すると予想する。

比率自体は低いものの、B2Bのカード利用の取扱高は上昇している。「日本におけるVisaの法人カードの取扱高の伸び」でみると、2021年度から2024年度にかけては、年平均22%で伸張。2024年度から25年度にかけては12%の伸びにとどまっているため、「減速傾向にある」と松田氏。

  • Visaにおける法人カード取扱高は、2024年度まで22%平均で成長したが、今年にかけて成長幅は縮小

    Visaにおける法人カード取扱高は、2024年度まで22%平均で成長したが、今年にかけて成長幅は縮小

これは市場が飽和したのかというと、「決してそうは考えていない」と松田氏は強調する。

「今後の成長の鍵を握るのはまさに地方」(松田氏)だ。地方でいかに法人カードを拡大し、ムーブメントを起こしていくことが、再び成長局面に戻すために重要だというのが松田氏の考え。

中小企業の34%は、メインバンクに地方銀行を選んでいる。ところが、Visa法人カードの取扱高で見ると、地方銀行発行カードは10%程度だという。地方銀行は、中小企業との関係性は強いが、法人カードの決済では成長機会を十分に生かしきれていないのではないか。そう松田氏は仮説を立て、このギャップを埋めることが成長の鍵になると分析する。

  • メインバンクの3割が地銀にも関わらず、法人カードの取扱高は伸び悩んでいる

    メインバンクの3割が地銀にも関わらず、法人カードの取扱高は伸び悩んでいる

法人カードの取扱高では、地方銀行発行とそれ以外で発行されたカードを比べると、取扱高は地方銀行が低く、この4年での伸び率も1.4倍に対して2.0倍と差があった。ただ、これも「伸び代」という判断もできる。

そうした伸び代の1つとして、松田氏は「法人カードで利用される業種が変化してきている現状を挙げる。2022年と2025年の法人カードの実績ベースでは、従来の旅費交通費、会議費といった業種に対して、仕入れ・広告、B2B(サプライヤーへの支払い)、オフィス用品といった業種への支払いが増加。こうした変化に対して戦略的にアプローチすることが、法人カードの成長のポイントになると指摘する。

  • 法人カードでは仕入れ・広告での利用やB2Bでの支払いが拡大

    法人カードでは仕入れ・広告での利用やB2Bでの支払いが拡大

同時にセミナーに登壇したイーエフピーの取締役社長室長・花田京氏は、地方銀行が中小企業経営者に法人カードの発行・利用を推進する方策として、「教える」ことの重要性を指摘。

  • イーエフピーの取締役社長室長・花田京氏

    イーエフピーの取締役社長室長・花田京氏

  • 教えることで、今後の取引につながると花田氏

    教えることで、今後の取引につながると花田氏

多くの中小企業経営者は、カードを使いたいと思っていても、何に、どのように使ったらいいか分からないという状態にあるという。そのため、まずは個人のカードの使い方を教えて、ポイントの貯め方やマイルの貯め方、付帯サービスの使い方といった初歩的なことからでもサポートすることで、信頼関係が生まれ、法人カードでもポイントなどを活用できることが分かって利用が促進される、といったアプローチが有効なのだという。

  • こうしたシンプルな質問から始めるのも効果的だそうだ

    こうしたシンプルな質問から始めるのも効果的だそうだ

LayerXのバクラク事業部パートナーアライアンス部マネージャーの水野広明氏は、日本の労働力不足に対して、2040年には生産性が現在の1.2倍に向上しないと不足分をカバーできなくなると話す。それに対して、日本の労働生産性は世界的にも低水準で、こうした課題の原因の1つにデジタル化の遅れがあると指摘する。

  • LayerXの水野広明氏

    LayerXの水野広明氏

特にバックオフィスでの人材不足が深刻化しており、経営にも悪影響が出かねないと話す水野氏は、よく言われる企業のDX化について、「システムに業務を合わせる」ために日本の企業文化になじまない側面があり、それに対してAIは「人や業務にAIが合わせてくれる」(水野氏)。そのため、DX化を飛ばして、一気にAI化することを推奨する。

  • 紙からDXを経由するのではなく、一気にAI化することで日本でのデジタル化に繋がる

    紙からDXを経由するのではなく、一気にAI化することで日本でのデジタル化に繋がる

特にAIエージェントはまだ期待感が先行して幻滅期がくると水野氏は見る。しかしその後に地に足の付いた解決策が出て普及に至るとの予測だ。水野氏は、様々な用途の小さなエージェントがいくつも稼働するようになるとみており、バクラクも様々なAIエージェントを開発していくとしている。

  • バクラクが検討する様々なAIエージェント

    バクラクが検討する様々なAIエージェント

バクラクは、B2Bにおける請求書払い、口座振替、カード払い、そして立替精算といった債務管理に加え、仕分けや消込、振込、証憑などを管理し、会計ソフトや銀行などと連携する仕組みを提供。法人カードを導入しても、一元的にバックオフィス業務が管理できるため、法人カードとの連携でシームレスな体験を提供できるとアピールしていた。

  • バクラクシリーズによって、カード決済を含めたバックオフィス業務の効率化が可能になるとしている

    バクラクシリーズによって、カード決済を含めたバックオフィス業務の効率化が可能になるとしている