第84期順位戦B級1組(主催:朝日新聞社・毎日新聞社・日本将棋連盟)は、8回戦計6局の一斉対局が11月6日(木)に各地の対局場で行われました。このうち関西将棋会館で行われた伊藤匠二冠―大橋貴洸七段の一戦は85手で伊藤二冠が勝利。昇級候補同士の大一番を制して自身初となるA級昇級に向け大きく前進しました。
負けられない上位争い
王座のタイトルを奪って波に乗る伊藤二冠は順位戦でも6勝1敗と首位を独走。迎え撃つのは5勝1敗で暫定2位につける大橋七段で、どちらも昇級に向け負けられない大一番となりました。伊藤二冠の先手番で始まった本局は両者得意の相掛かりへと進展。後手の大橋七段が素早く銀を繰り出したのに対して伊藤二冠は飛車の力でこれを押し返したことで、すぐの戦いは避けられました。
盤上は両者の棋風が好対照をなす中盤戦へ。コンパクトな陣形からの鋭い攻めを持ち味とする伊藤二冠が整然とした中住まいに組めば、力戦を苦にしない大橋七段は二枚の銀を自由に展開させつつ玉飛接近の奇想天外な布陣を披露。つかみどころのない局面に思われましたが、ここからの伊藤二冠の指し回しが秀逸で、形勢の針は一気に先手優勢に傾くことになります。
視界開いた理外の好手
5筋の歩を突いて歩交換を迫った手が伊藤二冠の充実ぶりを示す勝着となりました。後手の飛車が待ち構えている筋に自らの玉頭の歩を突き上げるのはまるで頭突きのような理外の手ですが、本局では居玉の後手陣が駒の打ち込みに弱い、飛車先の拠点が大きいという条件から例外的に成立しています。この数手後、敵玉そばへの垂れ歩が決め手となりました。
終局時刻は20時59分、最後は自玉の詰みを認めた大橋七段が投了。一局を振り返ると、大橋七段の奔放な序盤策を丁寧にいなしつつ、中盤で敵陣攻略の急所をうまく見抜いた伊藤二冠の快勝譜となりました。大きな上位対決を制した伊藤二冠は7勝1敗と単独首位をキープ。敗れた大橋七段は5勝2敗の暫定4位に後退したものの、後半戦での巻き返しを目指します。
水留啓(将棋情報局)
