フェルスタッペンの元愛車|200台限定のポルシェ911 GT2 RS クラブスポーツ

2018年11月、ロサンゼルス・オートショーの舞台に姿を現したポルシェ 911 GT2 RS クラブスポーツは、世界中のエンスージアストを一瞬で虜にした。最新世代となる992型と肩を並べて発表されたこのマシンは、同時に991型の最終進化を象徴する存在でもあった。ポルシェ・モータースポーツが公言した「史上最強のロードイリーガルGTスポーツカー」という言葉は決して誇張ではなく、限界を追い求める顧客に捧げられた究極のサーキットツールとして誕生したのである。

【画像】F1界のスター、マックス・フェルスタッペンが所有していたポルシェ 911 GT2 RS クラブスポーツ(写真10点)

ベースは言わずと知れたGT2 RS。専用設計の排気システムはより自由度の高いフローを実現し、咆哮にも似たサウンドを放つ。製造はポルシェの聖地フラハトにあるモータースポーツ工房で行われ、そこで組み立てられるのは911 GT3カップや911 RSR、さらにはル・マンを制した919ハイブリッドといったモータースポーツ界の主役たちだ。その血統に連なる存在であること自体が、クラブスポーツの特別性を物語る。隣接するヴァイザッハのテストトラックで鍛え抜かれたシャシーは、ロードカーでは味わえない純粋な競技車両の挙動を与え、ドライバーの感覚を研ぎ澄ます。

先日RMサザビーズのオークションに出品されたこの車両は、生産された200台のうちシリアルナンバー065という希少な一台である。そして、この車には特別なストーリーが。2019年8月、フォーミュラ1のスーパースター、マックス・フェルスタッペンが購入した記録が残されているのだ。売買契約書には、追加のホイールセットやスペアパッケージが同時に手配されたことも記されており、その徹底ぶりはプロフェッショナルらしいこだわりを感じさせる。サポートを担ったのは、アムステルダム近郊デ・リップに拠点を構えるGP Elite。カレラカップやポルシェ・モービル1スーパーカップを舞台に実績を築き上げてきた名門であり、ベネルクス地域においてポルシェのトレーニングやレースサポートを求めるなら真っ先に名が挙がる存在だ。

フェルスタッペン父子は、このGT2 RS クラブスポーツを2020年1月にスペイン・カタロニア・サーキットへ持ち込み、テスト走行に挑んだ。その模様はオランダで放送されたTVシリーズ「Max Verstappen: Whatever It Takes」に収められ、マックスの軌跡を描く上で重要な一場面となっている。彼の父ヨス、妹ヴィクトリアも同席し、家族とともにレーシングドライバーとしての頂点を目指す姿が描かれた。そこで残された証は、この車を唯一無二の存在へと高める。フェルスタッペンはダッシュボード、エンジンルーム、そしてフロントフードという3か所に直筆サインを施したのである。さらにデジタルダッシュには彼の名前とともに、長年のマネージャーであるレイモンド・フェルメーレンの名が刻まれ、まるでチームとしての絆を象徴するかのようだ。

さらに売買契約書や、フェルスタッペンが実際に署名を行う姿を収めた写真が付属しており、この個体の価値を証明する強力なエビデンスとなる。モータースポーツ界で最も輝かしい若き才能の一人がハンドルを握った911——その事実こそが、他のクラブスポーツにはない物語性を与えている。

このGT2 RS クラブスポーツは2022年にベルギーから米国へ輸入され、その後はほぼ動態保存に近い状態で維持されている。991型という時代の最終進化を凝縮し、当時最強の911をさらに研ぎ澄ましたこのモデルは、ポルシェが誇る「最後の991」を象徴する存在である。その上で、マックス・フェルスタッペンという現代F1を代表するドライバーがそのステアリングを握ったというストーリーは、比類なき輝きを放つ。

GT2 RS クラブスポーツは、純粋な性能を追い求めるポルシェの哲学を体現したモデルである。最大限のパフォーマンスをサーキットに解き放つことを目的に設計されたその姿は、ロードカーの領域を完全に超えている。そしてこの個体は、世界選手権の頂点に立つドライバーの手によって命を吹き込まれた。だからこそ、このマシンを前にすると、単なるスペック以上の感情が込み上げるだろう。その希少性とストーリー性が融合したとき、このGT2 RS クラブスポーツは単なるコレクターズアイテムを超え、真の意味での”史上最強”となる。