女優の今田美桜が主演を務める連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合 毎週月~土曜8:00~ほか ※土曜は1週間の振り返り)の最終回が26日に放送され、半年間にわたる物語が完結した。キャストや視聴者の力によって「想像以上のものになった」と手応えを口にする制作統括の倉崎憲チーフ・プロデューサーに、視聴者の声も受けて設定を変えたという制作秘話を語ってもらった。
「朝ドラは、日本で最も視聴者の皆さんと一緒に作り上げている枠なのでは」
112作目の朝ドラとなる『あんぱん』は、漫画家・やなせたかしさんと妻・暢さん夫婦をモデルに、何者でもなかった2人があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した『アンパンマン』にたどり着くまでを描く愛と勇気の物語。暢さんがモデルのヒロイン・朝田(柳井)のぶ役を今田美桜、やなせたかしさんがモデルの柳井嵩を北村匠海が演じ、脚本は中園ミホ氏が手掛けた。
戦後80年という年に、やなせさん夫妻の物語を届けたいという強い思いで『あんぱん』を完成させた倉崎氏。その仕上がりは「想像以上のものになった」と言い、その要因について「まず第一に中園さんの普遍的なメッセージも込めた力強い脚本と、キャストの皆さんの力だなと思っています。台本以上のものが現場で生まれ、日々いろんな化学反応が起こるのを目の当たりにしてきて、作品を高めていただいたなと思います」と中園氏とキャスト陣に感謝する。
そして、視聴者のリアクションも作品に大きな影響をもたらしてくれたと言い、「このシーンで予想以上の反響が来るんだとか、そういった声を日々感じながら進めてきたので、改めて朝ドラは、日本で最も視聴者の皆さんと一緒に作り上げている枠なのではないかなと感じました」と語る。
収録現場や台本の進捗によって感じたことや視聴者の声を受けてストーリー変更も。健太郎(高橋文哉)とメイコ(原菜乃華)が結ばれたが、一番当初の全体の簡易プロットの段階では健太郎の恋の相手が蘭子(河合優実)だったという。
「視聴者の皆さんの声だけで変えたというわけではないですが、メイコがこけて健ちゃんが手を差し伸べるキュンキュンするシーンなどを見て、視聴者の皆さんが『メイコと健ちゃんが結ばれてほしい』と。我々も現場で見ていていいコンビだなと思っていましたし、ネットでそういう感想も見ていたので、やっぱりそう見えるのかと」
続けて、「制作者たちだけの観点ではわからない部分があり、いろんな年代、立場の視聴者の方たちの意見を参考にさせていただくこともあります。1億人いたら1億通りの受け取り方がありますし、自分たちだけの感覚だけでなく、世の中の方々からみたらどう見えるだろうという意識はどこかに常に持っています」と述べた。
短い期間の登場にもかかわらず愛された次郎「想定以上の反響でした」
また、想定外だったこととして、「次郎(中島歩)というキャラクターがこれだけ世の中に受け入れられるというのは意外でした」と倉崎氏は打ち明ける。
そもそも当初、次郎について描く予定はなかったそうで、その理由は、史実として暢さんの1人目の夫の存在はわかっていたものの、詳細が明らかになってなかったから。ところが、中園氏が5~6週あたりの台本を執筆している段階で、お世話になっている高知新聞社の記者から「突き止めました!」と連絡があり、小松総一郎さんという方で、写真や職業や趣味などのディティールも出てきたことから、急きょ次郎を登場させることに決めたという。
「史実がいろいろ出てきたので、ドラマでも描くべきだろうということで、次郎を登場させました。世の中の人は、暢さんが結婚した相手はやなせたかしさんのイメージしかないと思うので、1人目の夫がいたということ自体、視聴者の皆さんにどう受け取ってもらえるのか未知数でしたが、世に出てきたからには、且つ、暢さんとしてもそこにちゃんと愛があったわけですし、暢さんを主人公のモデルにしている以上、描くべきと思いました」
ドラマでありながら、モデルの人がいるということで、史実を大切に。
「ドキュメントを大事にしたいと思っていますし、我々が心が動いた瞬間をドラマにしたいと思っています。総一郎さんの写真を見ながらいろいろ感じたところもありましたし、中島歩さんをキャスティングしたのも、総一郎さんにどことなく似ているというのもあります。朴訥な感じというか」
次郎は一等機関士として働いており、航海のために家を長く留守にすることもあったが、職業も史実通りとのこと。また、ライカが趣味だったというのも史実で、そういったところから次郎というキャラクターを作り上げていったという。
「当時ライカを趣味にしていたというのは、おそらく海外にも見聞があって、視野が広い人なんだろうと思ったので、ドラマの中でも、次郎がのぶに戦争が終わったらやりたいことを語る場面がありましたが、のぶからすると魅力的に見えたんだろうなと。戦争が終わった後の希望を語ってくれる存在というのは、次郎の大きな役割だったと思います」
モデルの総一郎さん同様、次郎も若くして亡くなり、短い期間の登場だったにもかかわらず、視聴者に愛されるキャラクターに。倉崎氏は「どう受け取っていただけるかなと思っていましたが、中島歩さんの力もあって、次郎ファンが意外にも多く、想定以上の反響でした」とうれしそうに話していた。
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