介護食は「味が薄い」「見た目が冴えない」という先入観が根強い。そこでアサヒグループ食品は長年販売してきた介護食シリーズ「バランス献立」を刷新し、"食の楽しみ"にフォーカスした新ブランド「まんぷく日和」を2025年9月29日より発売開始する。テーマは「お腹だけでなく心も満たす介護食」だ。9月5日、その発表会が行われた。
食だけではない。日本のさまざまな介護問題
日本の高齢化が加速しているのは周知のとおり。アサヒグループ食品によると、2025年に75歳以上が国民の5人に1人、2030年に65歳以上が3人に1人、2040年には85歳以上が高齢人口の3割に達する見通しだという。医療費・介護費の急増はもちろん、生産年齢人口の減少など様々な課題が噴出している。その中の一つが「ビジネスケアラー」の問題だ。
「介護のために職を辞める『介護離職』が増えており、2022年には約10万人がそれを理由に離職したと言われています。また、離職しなくても仕事をしながら介護をする『ビジネスケアラー』も増加しており、これが生産性を低下させ、経済損失が大きくなっています。さらに、仕事と介護の両立は心身ともに疲れる状況を生み出しています」(マーケティング四部部長の高橋岳春さん)
このような課題から、同社ではシニア事業に力を入れている。介護食市場は2017年の約86億円から2024年に約144億円へ拡大しており、同社の出荷指数は2017年比214%に増加している。一方で、利用率は推定約15%にとどまる。
「栄養面は評価されていますが、『おいしくなさそう』『(要介護者が)食べてくれないかもしれない』といった先入観が普及の壁になっていました。さらに、利用理由を見てみると、栄養バランスや柔らかさ、保存性といった基本的な価値が優先されており、本来はおいしくあるべき食事が、介護食という視点を通すことで、おいしさをあまり期待されないものになってしまっている現状があります」(マーケティング四部の岸奈津美さん)
まんぷく日和は「柔らかい=味気ない」という固定観念を覆し、食後に「おいしかった」と感じられる食体験を中心に設計した。さらに、ユニバーサルデザインフード(UDF)の構成を見直し、新規ユーザーが手に取りやすい「歯ぐきでつぶせる」区分の比率を高めている。これにより、初期利用のハードルを下げ、継続利用へとつなげる狙いがある。
まんぷく日和には大きく3つの特徴がある。1つ目は、全商品に食物繊維を配合している点だ。咀嚼、嚥下機能の低下に加え、食欲減退や食事量の減少にも対応できるよう、風味に影響しにくい食物繊維を選定した。
2つ目は食材の多様化と香りの設計をしている点。「2種以上の野菜+たんぱく質食材」を基本に、彩りと味の奥行きを両立し、ひじきややわらかく処理したレンコンなど新食材も取り入れた。さらに、ショウガやニンニク、バジルといった香味を品目ごとに最適化し、食欲を引き出す香りを工夫した。
3つ目は、和食だけでなく洋食や中華までジャンルを広げた点だ。例えば、ニンニクを効かせスプーンでも食べやすくした「ナポリタン」、複数の野菜を裏ごしして甘みを強調した「滑らかにんじんかぼちゃ」など、多彩なメニューを用意している。
介護施設で実施した試食会では味の評価が高く、実際に口にした要介護者からは笑顔も見られた。発売後は、需要が最も高まる12月にYouTube広告を初めて展開する計画だ。さらに、ブランドサイトでの活用事例の公開や、医療・介護専門職へのサンプル提供も進め、情報発信をより強化していく。


