1927年フォード・モデルTで、一か八かの山越えへの旅|『Octane』UKスタッフの愛車日記

『Octane』UKスタッフによる愛車レポート。今回は、1927年フォード・モデルTのエンジンがようやくかかるようになったマークが、試走を兼ねて山越えの旅に出た話をお届けする。

【画像】恐る恐る1927年フォード・モデルTを試しに走らせてみた(写真2点)

「動画を見たよ、ひどい音だな!」それは期待していた言葉とは程遠いものだった。これは、フォード・モデルTのエンジンのアイドリングの様子をスマートフォンで撮影した短い動画を、友人でありT型フォード専門家のリチャード・リマーに送った時のことだ。低回転時に、以前に気づかなかったようなノッキングやタッピングの音が聞こえるような気がして、リチャードにチェックするべきポイントをいくつか教えてもらった。クランクシャフトプーリーの緩み、同じくタイミングギアの緩み、ファンがラジエーターに接触していないかなど。しかし、見たところすべて問題なさそうだった。

もしかしたら、始動用のハンドルがクランクプーリーと噛み合う部分で単にガタガタ鳴っているだけなのかと思い、少し引き出してみた。それで違いが出たかどうかは正直よくわからないが、少しは静かになった気がしないでもない。リチャードは、「スマホの動画では判断は難しいよ。リビルドされたT型エンジンでも、動画だと釘の入った袋のような音に聞こえるしね」と言っていた。

特に問題はなく、スロットルを開けても騒音がひどくなることもなかった。そこで恐る恐る、試しに何度か走らせてみることにした。まずはもちろん、隣の村のパブまで。そして手応えを感じ、一か八かの覚悟で、近くの町ラドローまで山越えの旅に出かけることにした。そこは、まさにモデルTが似合う町なのだ。

しかし、このルートはキルホースレーン(馬殺しの道)を通る必要がある。急勾配の長い登り坂が続いた後、町へと下る同じような急勾配の下り坂が続く場所だ。

幸いなことに、モデルTは完璧に走ってくれた。ただ、ボディパネルやフロントガラス、スプリングから、いつものようにガタガタ・ギシギシ音の大合唱はあったが、要するに「いつもどおり」だった。タペットの点検が必要かとは思う。所有する期間中、一度も気にしたことがなかったが、少なくともひとつは少しカチャカチャという音を出している。しかし私は「緩いタペットが鳴るのは幸せなことである」と、何かのおまじないのように信じている。なぜなら、隙間が緩いので、バルブが焼き付く可能性が低いからだ。

リバースギアも、本当にどうにかしなければならない。T型フォードでは、中央のペダルを踏むことで、遊星ギアボックスのリバースギアがかかる。しかし、いまはそのペダルを一番奥まで踏み込まないと効かなくなっていて、しかもかなりガタつきがひどくなってしまった。加えて、ブレーキライニングも確認しておくべきだろう。これも、今まで一度も必要性を感じたことはなかったのだが。 普通の車なら、私はむしろ整備しすぎなほど手をかけてしまうタイプだ。しかし、モデルTは構造がシンプルなので、最小限の手入れで問題なく動く。ありがたい限りだ。

無事に帰還した後、やるべきことはただひとつだけだった。パブに行って、シャンディ(ビールのレモネード割り)を飲むしかない。パブもTも両方とも、私にとってはまさに「幸せの場所」なのだ。

文:Mark Dixon