「見てたら、バラエティ番組なくなるんちゃうかなってちょっと思うたりして」…そう語ったのは、お笑いコンビ・ナインティナインの岡村隆史。7月10日に放送されたニッポン放送のラジオ番組『ナインティナインのオールナイトニッポン』での言葉だ。
7月6日にフジテレビで放送された中居正広氏と同局をめぐる一連の問題についての検証番組『検証 フジテレビ問題~反省と再生・改革~』についての意見だったが、当件のフジテレビ問題、国分太一氏にまつわる日本テレビの対応など、確かに今、コンプライアンス関連で、テレビに逆風が吹いているように感じる人も少なくないだろう。
本当に岡村が言うようにバラエティ番組はなくなってしまうのか。昨今のテレビ局にまつわる問題と合わせて、エンタメに詳しいレイ法律事務所の佐藤大和弁護士に直撃した――。
YouTubeの過度なコンテンツでテレビが没落したのか
思えば80年代頃のテレビはおおらかだった。ゴールデンタイムに女性の裸の上半身が放映されたり、ハチャメチャキャラのタレントがスタジオのセットを壊したり…。今となっては考えられないが、そうした時期にテレビを楽しみ、さらに自らも90年代から多少の無茶をしながら活躍して人々の爆笑をかっさらった岡村らしい意見と言える。
岡村は同番組で、こう続けている。
「優良なコンテンツを作っていかなければいけない。最後、これからも厳しい目でってアナウンサーの方が。そう言わざるをえへんのやろうけど、テレビ、ましてやバラエティを厳しい目で見られたら、笑われへんやんと思って」
「優良なコンテンツ、ドラマとかそういうのはみたいなことも言うてはるシーンもあったけど、バラエティでも面白かったって言われるのはもう優良なコンテンツではなかったりする」
賛否ある疑義ではあると思うが、コンプライアンスが厳しくなった今でも、実際にハラスメント問題が起こるという事実がある。つまり、被害者はまだまだ出ているということだ。佐藤弁護士は岡村のこの言葉について、こう見解を述べる。
「時代は変わっています。私たち弁護士でも今後、AIにより仕事を失うかもしれない。そのためにいかにスペシャリストとして変わっていくかということに心を砕いています。全く違う業界ではありますが、お笑いも他の業界も同じだと思っています。どの業界も時代に合わせてプレイヤーは変わっていかなければならない。コンプライアンスが厳しくなった今、(被害者がいる以上)その価値観に合わせてどのようなお笑いが提供できるか、どのようなコンテンツ作りができるか。私自身も日々悩みながら努力しているため、本当に大変であることは承知していますが、その枠組みでどこまで高められるかということを考えなければならないのではないでしょうか」
その背景にはインターネット上のコンテンツの普及もある。
「コンプライアンスが厳しくなった分、YouTubeなどで過激なコンテンツも増え、人気を集めています。でも、それが本当にテレビの没落につながっているのでしょうか。そもそもYouTubeを含めて、ネット上では無秩序な面もあり、犯罪を助長したり、犯罪に巻き込まれたりすることも多々あります。だからこそテレビは、“じゃあ、子どもから大人まで、みんなが安心して楽しめる優良なコンテンツ作ろう”と、過激なコンテンツに負けずに、時代に合わせた素晴らしいコンテンツ作りを進めていかなければならないと思っています。時代に合わせて変化していくことは、どのような業界でも職業でも同じですが、その流れがより加速していると感じています」
過激なYouTubeに対抗する必要はなく、単に差別化する。「そちらのほうが信用されると思っています。時代に合った面白さで優良なコンテンツ作りを続けることによって、信用あるコンテンツへ集まってくる人たちも増えてくるのではないでしょうか」
ただし、テレビを見る側のリテラシーも必要だ。
「現場でハラスメントや人権侵害が起きていたら大問題ですが、テレビ好きの視聴者の多くの方々は、それはテレビの演出、またはフィクションであると考えて見ているのではないでしょうか。そのため、一部の声に右往左往しないことも大事ではあると思っています。もちろんそのような声に真摯(しんし)に向き合うことも大事ですが、SNSにはいわゆるクレーマーもいます。そして、クレーマー1人で、多くのアカウントを利用して、まるで大人数が言っているかのように見せかけることもあります。例えば、私のもとに誹謗中傷で相談にきたタレントさんの話を聞き、調べてみたところ、たくさんいると思っていたアンチが実はたった1人で、その方が多くのアカウントを使って誹謗中傷をしていたということが判明したこともありました。もちろん、一つひとつの声を大事にしたいと思っていますが、制作者の方々やタレントの方々は、慎重にその声を見極める必要があると思っています」
