中学生・高校生が取り組む鉄道模型の夏の祭典「第17回全国高等学校鉄道模型コンテスト」が8月1~3日の3日間、都内の新宿住友ビル三角広場で開催された。今年は過去最多となる183校が出展し、モジュール部門、1畳レイアウト部門、HO車輌部門の各部門で意欲的な作品が多数展示された。ここでは3部門の最優秀賞作品について紹介する。
まずはモジュール部門。直線モジュールと曲線モジュールのいずれかを選び、規定を守りつつジオラマ作品を制作する。線路もKATOユニトラック、TOMIXファイントラックのどちらか一方を選択し、線路によって規格が若干異なる。会場では、それらがブロックごとに分けられて1周つながり、部員の用意した展示車両がその上を走行していた。
モジュール部門の最優秀賞は白梅学園清修中高一貫部・鉄道模型デザイン班。同校は東武日光軌道線が存在した昭和30年代の日光をモチーフにした作品「愛され続ける日光軌道」を出展した。20色以上の色を独自に調合し、カラーバランスにこだわって紅葉を配置。光の当たり方も意識したという。ジオラマ用・クッション用の綿を組み合わせることで、華厳の滝の迫力も表現していた。
ボードの手前に日光軌道線と、神橋で執り行われる煤払いを再現。その周りや境内にいる人々にもさまざまなストーリーを散りばめ、社務所に授与品も置いている。路面電車やバスの車内にも乗客を配置するなど、自然表現、人の表現ともに見ごたえのある作品だった。
白梅学園は昨年もモジュール部門で最優秀賞を受賞。「ヨーロピアンNスケールコンベンション」(ドイツ・シュトゥットガルトで開催)に招待され、部員によれば、世界2位の成績を収めたという。「今年は世界1位を取りたい」と、部員も非常に意気込んでいた。
続いて1畳レイアウト部門。最小900mm×600mm、最大1,820mm×910mmという寸法の範囲で、車両が走行できるレイアウトを作成する。モジュールレイアウトとは異なり、自身の作品内だけで線路が1周するため、メーカーや配線などについては各校の自由となる。展示の際に走行させる車両も各校で用意する。
1畳レイアウト部門も、白梅学園清修中高一貫部・鉄道模型デザイン班が最優秀賞を受賞。驚くことに、モジュール部門と1畳レイアウト部門のダブル受賞、かつ2連覇を達成した。同校が出展した1畳レイアウトの作品は「耳をすませば聞こえてくるかな」。スタジオジブリ制作で、京王線の聖蹟桜ヶ丘駅周辺が舞台となっている映画『耳をすませば』をモチーフにした。
作中で主人公の雫が住んでいる団地の経年感を表現するため、黒色の「パンパステル」(ホルベイン画材)を使用。ペーパークラフトで組み立てた「地球屋」も、映画と同じく坂の上に配置している。川を挟んで町と自然が両立しているので、映画の世界を表現しつつ、実際にありそうな情景の表現にもなっていた。制作した部員の1人は、「後輩の力を借りたり、先輩方から教わった技術を使って作ったので、みんなの力を合わせて作ることができた」と話した。
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1畳レイアウト部門も白梅学園が最優秀賞。『耳をすませば』をモチーフにしたレイアウト
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団地(写真右奥)をはじめ、実際にもありそうな町並み
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坂道を上がった先にも住宅地が広がる。写真上の茶色い建物が「地球屋」
最後にHO車輌部門を見ていく。HOスケール(80分の1)で自作した鉄道車両を出展するこの部門で、最優秀賞は西大和学園中学校・高等学校鉄道研究部が受賞した。同校の作品は「夢紀行―満鉄 パシナ型蒸気機関車」。3Dプリンターやレーザーカッターを使用せず、プラ板と真ちゅう線を自力で加工し、車体を組み上げた。前面にポリエステルパテを盛り、それを削ってなめらかな曲面に仕上げている。
制作した部員は、「もうちょっと『こうしたかった』という部分はあるけど、おおむねめざしていたものは作れた」と話していた。
結果発表・表彰は最終日(8月3日)に実施。モジュール部門で最優秀賞を受賞した白梅学園の生徒に対し、関水金属・カトー代表取締役社長の加藤浩氏は、開会式で青柳俊彦氏(JR九州取締役会長)が語った、故・原信太郎氏と「或る列車」の話を振り返った上で、「11月にドイツに行く前に、車両に対する思いをもう一段階高めていただきたいと思います。横浜にあります原鉄道模型博物館にうかがって、その思いを含めて、素晴らしい作品をドイツの方々にお見せいただきたいと思います。おめでとうございます」と述べた。
モジュール部門で最優秀賞に選ばれた白梅学園は、ドイツ・シュトゥットガルトで開催される「ヨーロピアンNスケールコンベンション」の日本代表として招待される。昨年、世界2位の成績を収め、国内で2連覇を達成した同校の作品は、海外でどのように評価されるだろうか。




