フジテレビの清水賢治社長と実業家の堀江貴文氏が22日、iU(情報経営イノベーション専門職大学、東京・墨田区)の授業にゲスト登壇した。
メディアの三次元化で可能性は高まる
江端浩人教授の「クロステックビジネスデザイン」の授業で行われた今回のテーマは「メディアの未来と社会との共創」。かつて同局に敵対的買収を仕掛けたことで知られる堀江氏だが、フジ・メディア・ホールディングス株主総会後、清水社長は「他の株主の方から堀江さんについての質問がありまして、例えばFODについて堀江さんの持ってらっしゃる視点は我々にとって様々な示唆に富むものがあるので、アドバイスを頂いたり、協業ということも含めて検討する可能性があるかもしれないと申し上げました」と話していた。
その株主総会後に江端教授が2人にオファーして実現した今回の授業。今後のメディアについて、清水社長は「活字が電波に乗って音声、映像になったが、ここでのメディアは一方通行だった。それがインターネットによって二次元になり、パーソナルになって飛躍的にメディアの自由度が高まりましたが、今度は三次元化してくるのではないか。新しい技術で感情まで送れるようになってくると、メディアはより可能性が高まってくると思います」と予測する。
コンテンツ主体の会社へ組織変革
また、清水社長は「テレビの弱みは1回の放送の広告収入だけで成立させようと思ったら、その範囲でのコンテンツしかできないんです。それは間違いだった。複数年度で回収するようなプランに変えないといけないと、コンテンツを主体とする会社になれない。これを変えることを宣言して組織も変えました」と説明。堀江氏は「アニメとかは元からそういうモデルでしたもんね」と、清水社長の出身分野を例に挙げて理解を示した。
堀江氏が、AIを駆使して効率的にコンテンツを配信し、1,170万人ものチャンネル登録者数を持つYouTuber「Nonomen ノノメン」の事例を紹介すると、清水社長は「絶対そこに勝機はありますよね。いくらでも試せるじゃないですか。テレビの番組は本当に不自由で、準備するのに何カ月もかけて放送回数も1回しかない」と反応。
続けて、「テレビの置かれている状況は、典型的なイノベーションのジレンマだと思っているんです。過去の成功モデルが邪魔をしている。でも“(新しい)この作り方がいい”と思ってる人は、実は作り手の中に多い」と語り、従来のスタイルを打破していくことへの意欲を示した。
経済、歌バトル、市井の人にスポット…地上波にない番組に期待
学生からは「堀江さんはフジテレビで番組をやることはないですか?」という質問が。これに対して、堀江氏が「俺じゃないよ、社長に聞いて!」と振ると、清水社長は「堀江さんの才能と能力は、我々にとって必要なものだと思っていますので、そういう機会があればいいなと思っています」と前向きに応えた。
これに対し、堀江氏は「なかなかテレビの電波は難しいと思います。昔、テレビ朝日で、『REAL VALUE』(※堀江氏が出演するYouTubeの経済エンタテインメント番組)みたいな番組をやったんですけど、地上波の深夜ではウケないんです」といいつつも、「ビジネス系の番組は少ないんであったらいいなと思います。歌番組のバトルもないんで、ブレイキングダウンみたいな感じでやったり、市井にいる人が出てくる『アメリカズ・ゴット・タレント』みたいなのもないから、ぜひ頑張ってやりましょう」と、清水社長に呼びかけた。