
『Octane』UKスタッフによる愛車レポート。今回はロバート・コウチャーが1955年ジャガーXK140 FHCとの日常を綴る。
以前にも書いたが、私のジャガーXK140 FHCは5年に1度の頻度で動かなくなる。それは完全に想定内のことで、この車のせいではない。最近のバッテリーの寿命のためだろう。しかし、さすがジャガーだけあって礼儀正しく、故障するのはいつもガレージの中だった。ロードサービスを呼び、黄色いバンがやってきて、その場で新しいバッテリーに交換してくれる。過去3回とも同じパターンだ。
数年前にキングズロードを走っているときには、ルーカス製の燃料ポンプがダメになりかけていて、あと少しで動かなくなるところだった。でも、ハンマーで軽く叩いてみたら復活して、なんとか家までは帰り着くことができた。その後、より性能のいいファセット製ポンプに交換したところ、これはトロイの兵士のように力強く、文句も言わず働いてくれている。
先日、週末にジャガーで繰り出してロンドンをひとっ走りしようと思い立った。ガレージに到着して、車のドアを開け、キーを差し込み、燃料をポンプに数秒間送り込み、スターターボタンを押した。すると…ファイアウォールのどこかでカチカチという音がしたものの、DOHC直列6気筒エンジンが目覚めることはなかった。ちぇっ。
月曜の朝に、ロンドン中心部にある馴染みのクラシックカー専門ディーラーのスペシャリスト、グレーム・ハント氏に電話をして、チーフメカニックのゲーリー・パクスティに話を聞いてみた。彼にはこれまでも、ジャガー絡みのトラブルで何度か助けてもらっている。幸運なことに、ゲーリーは電気系統のエンジニアであり、黒魔術のような電気トラブルにも精通している。彼はフォーミュラカーのレースに参戦するレースエンジニアでもあるため、時間の大切さを誰よりも理解していて、こう提案してくれた。「今すぐやろう。君のガレージまで行って、エンジンをかけてみるよ」
ゲーリーはすぐに、ファイアウォールの奥深くに取り付けられているスターターソレノイドに問題があることを突き止めた。新しいソレノイドに交換してくれたのだが、新しい方にはプッシュ式のスターターボタンも内蔵されていた。しかも、ボンネットのすぐ下、手の届く位置に付け直してくれたのだ。
今ではこの大きな6気筒エンジンは、 力強く勢いよく回り、堂々と始動するようになった。最近のロンドンでは、クラシックカー専門の整備士は本当に少なくなってきている。なので、SW11地区のファルコンロードから車で5分のところにある、グレーム・ハント社には感謝している。
文:Robert Coucher