Reiが大いに語るデビュー10周年の軌跡、カラフルでブルージーな音楽人生

シンガー・ソングライター/ギタリストのReiが、デビュー10周年を記念する初のベストアルバム『FRUIT』をリリースした。Reiを長年取材してきた音楽ライター・内本順一が聞き手となり、デビュー10周年の軌跡と音楽人生を振り返る。

「日本のカレーじゃないけど、日本人の私にしか作れないブルージーなポップスをこれからも作っていきたいという気持ちが強くあって」。そう話す通り、Reiはインドカレーに対しての日本のカレーのように、アメリカのブルーズとは一味違う新しくも独自性のあるブルーズ・ロック/ポップを日本人ミュージシャンとして創造し続けてきた。では、今のReiはブルーズという音楽をどう捉え、どう消化し、どのように現代のポップシーンのなかで響かせようとしているのか。デビュー10周年を迎え、初のベストアルバム『FRUIT』をリリースしたReiに、キャリアを振り返ってもらいながらそのあたりの話を聞いてみた。

ベストアルバムを発表することの意義

―デビュー10周年ということで。僕が初めてReiさんのライブを観て、終演後に少しだけお話したのは、初作品の『BLU』(2014年)が世に出る数ヵ月前でした。

Rei:(高円寺のライブハウス)ShowBoatでしたね。覚えてますよ。あれから10年が経ったんだなぁって思いますね。

―「もう10年かぁ、あっという間だな」って感じ?

Rei:いや全然。長いですよ。長すぎます。

―あ、そういう体感なんですね?!

Rei:私は時間の流れを遅く感じるほうなんですよ。1週間が1カ月ぐらいに感じられたりする。だから、10年なんですけど、50年くらいやってきたような気がしています。

―今日はまずベストアルバムの話からお聞きしますね。初のベストアルバム『FRUIT』。10年活動してきてのひとつの区切りとして、出すなら今だろうと?

Rei:もちろん10周年というのはベストアルバムを出す理由のひとつとしてあります。と同時に、ここから次のシーズンに向かっていきたい、新しい場所へと飛び出したいといったふうに、未来をイメージしながら作ったベストアルバムでもあるんです。自分が収穫してきた音楽というフルーツをバスケットに入れて、それを持って未来に向かいたいなと。

―それでタイトルが『FRUIT』に。

Rei:はい。私の代表曲のひとつに「BLACK BANANA」がありますけど、ほかにも果物だったり飲み物だったりがタイトルになった曲がいくつかあって。10年のなかで様々な味わいのフルーツが実ったなっていう気持ちがあるので、そう名付けました。

―食べ物や飲み物がタイトルに付いた曲って、ほかに何がありましたっけ?

Rei:フルーツでは「POMELO」がありますね。ポメロはグレープフルーツに似ているフルーツで。ほかに食べ物だと「my honey pie」、飲み物だと「COCOA」とか「Oo Long Cha」があります。

―新曲の「SODA!」もそうですね。

Rei:あ、そうでした(笑)。

―ベストアルバムというものをReiさんはどんなふうに捉えていますか?

Rei:私は長らくベストアルバムは出さないって公言してきたんですよ。理由はふたつあって、ひとつは一度リリースしたものをお客さんに二度買わせたくないということ。もうひとつは、それぞれのアルバムが持つ世界観のなかで存在する楽曲たちなのに、そこから抜き出してコンパイルするというのがちょっと解せなかった。でも去年くらいから10周年のことを考え始めるなかで、私もエリック・クラプトンの『Clapton Chronicles』だったり、シェリル・クロウの『The Very Best Of』だったり、スピッツの『RECYCLE Greatest Hits of SPITZ』だったりと好きなベストアルバムがいくつかあるし、ベストアルバムをきっかけに大好きになったミュージシャンもたくさんいたので、ひとつ作ってみてもいいのかなって素直に思えるようになりまして。それとあと、Reiというアーティストの特徴のひとつに楽曲のカラフルさがあると思うんですが、10年間で作ってきた幅広い楽曲たちをコンパイルすることによって、そのカラフルさが自分の個性としてより際立つんじゃないかと。

―なるほど。これまでの楽曲たちを改めて振り返ってみたことで、ベストアルバムを出すことに前向きになれたわけですね。

Rei:はい。

―ベストアルバムはStandard Edition(1CD)とLimited Edition(2CD+2DVD)の2種類がリリースされるわけですが、まずStandard Editionの20曲(Limited EditionにおいてのSunny Side)。これはいわゆるオールタイム・ベストと言える内容になっていますね。

Rei:そうです。シングルカットされた曲を時系列に沿って並べました。

―こうして並べてみて、どんなふうに感じますか?

Rei:ひとつとして似た曲がないなと思いました。ハードな曲があれば、優しい曲もある。カントリーもあるし、ポップス色の強い曲もある。ジャズっぽい曲もヒップホップっぽい曲もある。本当にいろんな曲が入っているので、初めて聴く人にとっては、自分の好きな曲を探すのが楽しいアルバムになっているんじゃないかと思います。

―時系列に沿って並べてあるとはいえ、オープナーは一番新しい「SODA!」。この曲はどんなふうにできたんですか?

Rei:"TOKYO GIRLS COLLECTION 2025"のmicrowaveのランウェイのために書き下ろした曲で、感嘆詞の「そうだ!」と飲み物の「ソーダ」の同音異語になっています。自分が10年も音楽を続けることができた、そのモチベーションのひとつに、閃きの力というものがあると思っていて。何か思いついたときのエネルギーであるとかトキめく気持ちとかをそのまま楽曲に反映させて表現してきたからこそ、こうしていくつもの作品を重ねてこれたのかなと思うんです。音楽を生業にして続けていくことのしんどさはこれから先も伴うでしょうけど、でも自分が作る音楽に対してはいつだってトキめいていたいという気持ちを込めて、これを作りました。閃きの力をソーダの炭酸のシュワシュワに譬えて。

―サウンド的には前作『GUITARHOLIC』の延長線上にあって、頭からギターがガツンと響く。でもラップ風の歌い方にホーンの華やかさも加味されて、しかもソウルミュージック的な女性コーラスも効いている。1曲のなかにいろんな要素が詰まっていますね。

Rei:自分はブラックミュージック、ルーツミュージックにも影響を受けているけど、現代のポップスも好きだし、打ち込みの音楽も好きだし。そういうミクスチャーな存在である私を1曲に集約してみたらどうなるかなという観点で作った曲でもあるんです。

キャリア10年のターニングポイント

―それからLimited Editionのほうには、Standard Editionの20曲(Sunny Side)に加えて、Reiさん自身の選曲による20曲をコンパイルしたCD(Reiny Side)が付いています。この20曲の選曲の基準は?

Rei:毎回その時々の何らかの基準に即してリード曲を決めているわけですが、自分としては全てがリード曲みたいな意識で書いているので、実際にリードになった以外の曲にもスポットを当ててあげたい気持ちがありました。あとは、Reiというアーティストを定義する上でいろんな要素があって、例えばエレキギターもアコースティックギターもクラシックギターも弾くというのが特徴のひとつだし、英語でも日本語でも歌うというのもそうだし、前向きな曲も悲しい曲も歌うというのもそう。そんなReiというアーティストに欠かせない要素を含んだ楽曲を選ぼうと心掛けた結果、こうなりました。わりとすんなり決まりましたね。

―自分にとって特に思い入れの強い20曲だったりもするんですか?

Rei:私的な感情で選んだというよりは、それぞれに意図があって選んだ感じです。例えば「ORIGINALS」を選んだのは、ジプシージャズだったり、スウィングジャズと打ち込みをガッチャンコしたスウィングハウスというジャンルだったりのなかに、私の楽曲のひとつの居場所があるということを示したかったから。Sunny Sideのほうに入っている「Tumblin」や「Lonely Dance Club」もそうですね。

―では、10年の間に生み出したもののなかで、これは自分にとって特別だったな、今思えばこれは自分のターニングポイントだったなと思える作品はどれか、挙げることはできますか?

Rei:『HONEY』(2020年)というアルバムは私にとってターニングポイントだったと思います。そこには「What Do You Want?」と「Lonely Dance Club」が入っていて、その2曲をきっかけに私の存在を知ってくださった方が多かったんです。同時に、自分のスタイルを確立した曲でもありました。それから「Categorizing Me」も『HONEY』に収録されていた曲ですけど、この曲もまさしく自分にとってのターニングポイントで、すごく大事にしている曲です。どんな人にも職業であったり性別であったりといろんなラベルが付いているなか、カテゴリーで人を見るのではなく、本質で見たいし見られたいという思いを歌った曲。インターナショナルな環境で育った自分なりに、人権についてのメッセージを表現できたんじゃないかと思っているんです。

―僕もReiさんの傑作と思える曲をひとつだけ選ぶとしたら「Categorizing Me」を挙げます。サウンドやテンポ感の心地よさとメロディの持つ情感と歌詞のメッセージとが分かち難く合わさった曲で。初めて聴いたときから心を鷲掴みにされましたし、ライブではいつも間奏のギター・ソロにしびれています。

Rei:「Categorizing Me」はまさしくライブで育った曲で、今ではあのギター・ソロをすごく楽しみにしてくださっている方が多いんですよ。そういう意味でも自分にとって本当に大事な1曲になりました。それともう1曲だけ選ぶとしたら、私のシグネチャーモデルをフェンダーから発売するにあたって書き下ろした「GUITARHOLIC」。私自身を象徴する曲だなって思っているので。

―ところで今回もまた非常に拘りを感じさせるアートワークになっていますね。

Rei:はい。Standard EditionもLimited Editionも、大好きなフォトグラファーの服部恭平さんが撮ってくださった写真に、私がイラストとデザインを加えてコラージュしたジャケットになっています。Limited Editionは私が湖畔でガリバーみたいに横たわっているジャケットになっていて。私はインタビューとかで真面目だとかストイックだとかって形容されることが多いんですけど、結局は音楽で遊んでいるだけってところもあるので、そういう私のなかの遊び心が伝わればいいなと。

―音楽を作ることとジャケットやブックレットのデザインをすることの共通点ってあったりしますか?

Rei:根本的に色が好きっていうのはありますね。音楽を作る際にも色を意識する。あとは共感覚的なところで、絵を描いてから曲を作るということがときどきあるので。

『FRUIT』左からStandard Edition、Limited Edition

―まさしく曲のカラーがそのままアートワークに反映されていますね。

Rei:今回はアートディレクションから全てやらせてもらいました。Limited Editionには60ページの”歌詞カードという名のアートブック”が付くんですけど、曲毎に歌詞にちなんだ写真を撮り下ろして、イラストも描いてそこに加えたりしているんです。それを40曲分やったという。

―すごい! CDの盤面のデザインもご自分でやられたんですよね。

Rei:はい。恐らく500時間くらい手を動かしていたと思います。なので、モノとしてお手元に置いていただけたら嬉しいですね。もちろん、お出かけのときにはデジタルで聴いていただければって感じですけど、やっぱりこう、モノとして音楽を所有することの付加価値をこれからも皆さんに伝えていきたいんです。

ブルーズに対する今の思い「ギターがある人生でよかった」

―さて、10周年ということで、ここからは現在に至るまでを振り返りつつ、いくつか聞いていきたいと思います。まず、これは10年前にした初インタビューでも話されていましたけど、初めてギターを手にしたのは4歳のときだったんですよね。テレビを見ていたら女の人がギターを弾いていて、”私もあれをやりたい”と言って買ってもらったと。それが全ての始まりだったわけで、そこから今に至るまで迷うことなくギター道を歩き続けたというのは改めてすごいことだなと思うんですが。

Rei:ほんと、いつまでやっているんだろう?ってくらい、ずーっとやってますからね。ギターがあるのが当たり前というか、感覚としては一本余計に手が生えてるみたいな(笑)。

―もしもあのときギターを欲しがらなかったら、どんな人生になっていたと思いますか?

Rei:いやもう、本当にくだらない人間になっていたと思いますね。まあ今でもたいした人間じゃないですけど、ギターがある人生でよかったな、ラッキーだったなって思います。本当に救われていますからね、音楽に。音楽が自分の人生をいい方向に導いてくれたんだなって思います。

―初めはクラシックのギタリストになりたくて、クラシックギターのコンクールにも出場したりしていたんですよね。クラシックギタリストとして生きていく人生もあったかもしれないなって考えたりはします?

Rei:それはもう、中学生ぐらいまでそう思っていましたから。村治佳織さんが私のアイドルでしたし。

―それ、村治さんに伝えました?

Rei:伝えましたよ。佳織さんにお会いしたときには、”ああ、私もここまでこれたんだな”って思いました。なんだか信じられなかった。でも思い返すとそういうことの連続でしたね。フランスのフェスに出て1万8千人の前で弾いたときも信じられない気持ちでしたし、初めて細野晴臣さんと演奏したときもそうでしたし、長岡亮介さんと演奏したときも。あとエリック・クラプトンと握手したときもそう思いました。それから自分の名前のギターをフェンダーから発売したときも。振り返ると、本当に自分はラッキーだったなって思いますね。

―ブルーズにハマったのは10歳の頃だと以前話していましたよね。

Rei:そうです。4~5歳のときにニューヨークでブルーズに触れたときはデューク・エリントンとかマイルス・デイヴィスのジャズブルーズをカバーしていたんですけど、そのあと1回クラシックギターに専念していた時期があって、それから9歳の頃に3ピースのバンドを組んでザ・フーとかビートルズをカバーするようになって。で、エリック・クラプトンからクリーム、クリームからロバート・ジョンソンみたいな流れでブルーズを好きになりました。

―ブルーズが好きだという気持ちは、当時と今とでなんらかの変化はありますか?

Rei:より愛情が深くなっているように思います。私はブルーズが好きだということを公言してきましたけど、新しい音楽を作りたい、自分なりのポピュラー・ミュージックを作りたいという思いも持ちながらやってきたんですね。そうするなかで、「あなたのやっている音楽はブルーズじゃない」と言われることもたくさんありました。それはまあ、大いに納得のいくところではあるんですよ。耳心地的には確かにブルーズだと思えない曲も作ってきましたから。でも、もし”ブルーズじゃない”とおっしゃる方と直接お話する機会があったら、こうお伝えしたいんです。精神的にはいつもブルーズを奏でていましたよと。

それはどういうことかというと、私は幼少の頃から特別扱いされてきて、裏を返せば変人扱いなんですけど、要するに”変わってる”と言われて疎外感を感じることが多かったんですよ。まあ誰しも打ち明けられない悩みのひとつやふたつは持っていると思うんですけど、私はけっこう孤立したまま大きくなったところがあって。で、ブルーズというのはアメリカで差別を受けてきた黒人が1日の終わりに疲れたとか悲しいとかムカつくといった感情を表現した音楽であるわけですけど、そういうブルーズという音楽に私はすごく慰められたんです。自分のなかの憂鬱をポジティブに消化する。そういう力がブルーズにあると思っていて。だから踊り狂って笑い飛ばそうぜというような耳心地の曲があったり、泣いてしまおうという耳心地の曲もあったりしますけど、その根幹にあるのはブルーズという精神性で、それを持って私はここまでやってくることができた。ですから、質問に真っすぐお答えするなら、ブルーズに対する思いは年々強くなっています。

―Reiさんはそのブルーズの精神性・音楽性をもってして、たくさんの人とコミュニケーションしてきたわけですからね。

Rei:そう。だからより多くの人にちゃんと認めてもらえるブルーズ・ウーマンになれるように、いつかグラミー賞のブルーズ部門で賞を獲ってみたいと思っているんです。

―伝統を重んじるアメリカではそれこそグラミーにブルーズの部門があるし、若くてもブルーズを深く理解しながら音楽表現している人は多いですよね。でも日本では、市場という意味では明らかに小さくなっていると思うんです。70年代からしばらくは、Reiさんも所縁のある憂歌団であるとかウエスト・ロード・ブルース・バンドらの関西ブルーズが盛んだったし、歌謡曲の世界でも「なんとかブルーズ」といったタイトルの付いた曲が数多くあった。自分はそういう日本のブルーズ曲をラジオで聴いて育った世代なんですが、ある時代から急激にブルーズの市場が狭くなったという実感を持っていて。そんななかでReiさんは孤軍奮闘している印象があるんです。もちろん現行のシーンのなかでもGLIM SPANKYのようにブルーズ・ロックをやっているバンドがあるにはありますけど、Reiさんはブルーズを基調にした音楽を若い世代に聴いてもらうことの難しさを感じることはないですか?

Rei:若い人たちがブルーズを始めとするルーツミュージックを聴くきっかけに私がなれたらいいなとは思いますけど、別に無理強いしたいわけでは全然なくて。正直に言うと、どっちでもいいって感じです。マーケットがどうであろうと自分が好きなものは好きだし、それはこれからも変わらない。私の音楽は自然に私のなかから滲み出てくるものですからね。私がビートルズやエリック(・クラプトン)からロバート・ジョンソンに遡っていったみたいに、私の音楽を聴いてディグってくれる子がいたらそれはそれで嬉しいですけど、時代の潮流には逆らえないし、逆らうつもりもないし、そんな大きなことは自分にはできないので、自分なりの音楽の表現をこれからも大切にしていけたらなってくらいの感じで考えています。

―そこまで深刻には考えていない。

Rei:そうですね。例えば長岡亮介さんもそういうスタンスでカントリーとかブルーズをやっていると思うんですけど、亮介さんをカントリーのミュージシャンだと捉えている方はたぶん多くなくて、ロックやポップのギタリストと捉えている人がほとんどだと思うんですよ。でも彼はルーツをすごく大事にしているし、聴く人が聴けばカントリーベースのギターを弾いていることもわかると思う。そんなふうに自分はこれからも心の故郷としてブルーズを大切にしていきたいし、それが自分のカラーのひとつだと思っています。

「インターナショナルな存在になりたい」

―そのように10年間、ブルーズロックギタリストとしての道を歩んできて、ここからはどうなっていきたいと考えていますか?

Rei:ブルーズに限った話ではないですけど、やっぱり日本を代表するようなミュージシャンになりたい、インターナショナルな存在になりたいという思いはより強くなってきました。例えば日本には演歌という音楽があって、それは憂いのようなものを表現する日本流のブルーズみたいなものですよね。だけどアメリカのブルーズとはやっぱり違う。日本で生まれた独自のカルチャーだと思うんです。だからまあ、日本のカレーじゃないけど、日本人の私にしか作れないブルージーなポップスをこれからも作っていきたいという気持ちが強くあって。山下達郎さんがソウルミュージックの影響を受けながら日本的なポップスを作ってきたように、私も自分にしかできないブルーズの表現で世界に飛び出していきたいと思っています。

―ブルーズの側面に関して話を聞きましたけど、一方でReiさんはポップスのシンガー・ソングライターとしても年々進化してきました。英語詞も日本語詞も書かれますけど、歌詞に関して視点だったり手法だったりが変化したところはありますか?

Rei:以前の私の書く詞は階層が少なくて平面的でしたけど、徐々に階層が増えて深いものになってきたかなとは思います。同時にボーカルの表現も以前は苦手意識があったんですけど、客観的に見て幅が広がったような気がしています。もちろんまだまだ上手くなりたい気持ちが大きいんですけど、自分流の歌唱法というものをこの10年で見つけられたようには思っているんです。

―歌詞をより深いものにするためには何が必要だと思います?

Rei:場数を踏んできて思うことはふたつあって、ひとつはパーソナルなもののほうが人の心に刺さるということ。もちろん職人のように世の中の流行とも辻褄を合わせてヒットする歌詞や曲を書くのが上手な方もいて、それは素晴らしい技術だなと思うんですけど、でも私のような自作自演のアーティストに関して言うなら、やっぱり個人的な思いの強さを伝えたほうが多くの人に広まるんじゃないかと思っていて。だからそういう書き方は意識しますね。それから私も大好きな谷川俊太郎さんのように誰もがわかる言葉で書いているんだけど、100人の読者がいたら100通りの捉え方ができるもの。自分に置き換えて捉えることのできる歌詞だったり曲だったりが風化されない名曲になるんだろうなって思うんです。自分にそれができているかどうかはわからないですけど、そういうことをよく考えるようにはなりました。

ー10年を振り返ってみて、ライブにおいてのターニングポイントを挙げることはできますか?

Rei:2022年にコラボレーション・プロジェクト「QUILT」の集大成となるライブをLINE CUBE SHIBUYAでやらせてもらったんですけど、ゲストで長岡亮介さん、細野晴臣さん、藤原さくらちゃん、Ryohuさん、東京ゲゲゲイが出てくださって。私はずっと個の存在として活動してきましたし、これからもそうだとは思うんですけど、そのときは私にもこんなに素晴らしい音楽仲間がいるんだって心の底から感じたんです。これからもこの大好きなミュージシャンたちと音楽を奏でていけたらいいなって、人生で初めて仲間意識のようなものを実感したライブだった。音楽でできることはまだまだ無限にあるんだと、世界平和の縮図のような景色を見ながらそう思ったのをよく覚えています。

―音楽仲間という意味では、「Reiny Friday-Rei&Friends」というシリーズ・ライブを長く続けていることも大きいですよね。

Rei:はい。コラボって最高のコミュニケーションだと思うんですよ。私は喋るのがそんなに得意じゃないし、音楽を一緒に奏でるときが一番人と通じ合えているって思える。セッションすることで人となりを見せていただくというか。それと、コラボによってそのミュージシャンを好きな人に私を知ってもらえるいいきっかけにもなりますからね。そうやって”Rei推し”が増えたらいいなって思いますし(笑)、「Reiny Friday」はライフワークとしてこれからも続けていきたいですね。で、いつか自分の引退ライブかなんかでみんなに出てもらって『ラスト・ワルツ』みたいなものができたらいいなって夢見ています。

―早く引退されたら困るので、20周年のタイミングでぜひお願いしたいものです(笑)。

Rei:そうですね(笑)。一度でいいからやりたいです。死ぬときに思い出す幸福な一日みたいな、そんなライブができたらなって思いますね。

―最後の質問です。インターナショナルな存在になりたいという話をさっきもされていましたが、今後海外での活動をしていくにあたって具体的な目標はありますか?

Rei:1stアルバム『Rei』のInternational Editionをニューヨークの歴史あるジャズ・レーベルであるVerveからリリースすることができましたけど、また海外でアルバムをリリースして、さっきも言ったようにいつかグラミー賞をブルーズ部門で獲りたいです。それからワールド・ツアーをしたいですね。あとはマディソン・スクエア・ガーデンでワンマンライブをやってみたいし、ロイヤル・アルバート・ホールでもやってみたいし、エリック(・クラプトン)と一緒にクロスロード・ギター・フェスティバルにも出てみたいし……。

―歴史ある会場は老朽化が進んだり移転の話が出たりもしているので、ゆっくりはしていられませんね。

Rei:確かに(笑)。

Rei

10th Anniversary Best Album 『FRUIT』

発売中

再生・購入:https://umj.lnk.to/Rei_FRUIT

『FRUIT』特設サイト:https://www.universal-music.co.jp/rei/fruit/

Anniversary Best ”FRUIT” In-store Talk, Play & Meet

2025年7月24日(木)@東京・タワーレコード渋谷店

https://tower.jp/article/feature_item/2025/04/16/0702

Reiny Friday -Rei & Friends-

会場:東京キネマ倶楽部

2025年7月11日(金)Vol.16【Friends】SECRET

2025年8月22日(金)Vol.17【Friends】家入レオ

2025年9月12日(金)Vol.18【Friends】仲井戸麗市

Rei 10th Anniversary Acoustic Tour 2025 "Mahogany Girl"

2025年10月4日(土) 東京・ヒューリックホール東京

2025年10月5日(日) 愛知・TOKUZO

2025年10月9日(木) 広島・Live Juke

2025年10月10日(金) 福岡・Gate7

2025年10月13日(月・祝) 宮城・誰も知らない劇場

2025年10月25日(土) 兵庫・653cafe

Rei 10th Anniversary Band Tour 2025 "TUTTI FRUTTI"

2025年11月7日(金) 福岡・DRUM LOGOS

2025年11月8日(土) 岡山・YEBISU YA PRO

2025年11月13日(木) 愛知・DIAMOND HALL

2025年11月14日(金) 大阪・GORILLA HALL OSAKA

2025年11月18日(火) 北海道・cube garden

2025年11月20日(木) 宮城・RENSA

2025年12月5日(金) 東京・duo MUSIC EXCHANGE

Rei公式サイト:https://guitarei.com/